犬のため息

人も犬も、通常の呼吸の際に鼻を使うこともあれば口を使うこともあります。そういう点では、人と犬の呼吸は似ていると言えるでしょう。しかし人と犬では、ため息のつき方が異なります。
人のため息は溜めた息を口から吐き出しますが、犬のため息は鼻から吐き出されます。不規則で深く、または強く吐き出される鼻息が、犬のため息に相当します。そのため、ため息は「ふんっ」に近いような音に聞こえることが多いです。
犬が飼い主の前でため息をつく心理

1.満足してリラックスしている
愛犬が、全身の力を抜いて目を細めたり口元を緩めたりしたような表情でため息をついたら、満足した状態だと考えられます。人に例えると、浴槽に浸かって思わず声を漏らしてしまったような感覚でしょうか。
犬の場合は食後、遊んだ後、うとうととしている時などによく出ます。満足感を噛み締めながらリラックスしている状態なので、あまりちょっかいを出さずにやさしくそっと見守ってあげると良いでしょう。
2.不安
初めての場所にいる、リフォームなどで室内環境がいつもと違うなどの状況では、犬はその環境に馴染めず不安になって緊張してしまいます。そんな時にも犬はため息をつくことがあります。
不安でため息をついている時の犬は、全身に余計な力が入っていることが多いです。また、自分の鼻先をしきりに舐めたり、何回もあくびをしたり、いつまでも地面のニオイを嗅いだりなど、ため息以外にもストレスサインを見せていることが多いでしょう。
3.不機嫌
犬は、何か気に入らないことがあったりイライラしたりといった、不機嫌な気持ちを落ち着かせようとして鼻から強く息を吐き出し、ため息をつくことがあります。
人に当てはめると、大勢の人前で大切なプレゼンテーションを行う前に、ため息をついて呼吸を整え、緊張で高ぶった気持ちを鎮めようとする行為に似ていると言えるでしょう。
犬自身が自分の気持ちを落ち着かせるための、コントロール行動の一つであると考えられます。
4.気持ちの切り替え
犬自身が何か失敗をした後に、気持ちを切り替えようとしてため息をつくこともあります。このようなケースでは、あまり声をかけたりせずに、失敗に気づかなかったふりをしてやり過ごしてあげると良いかもしれません。
5.体調不良
流行性感冒や鼻炎などで鼻が詰まると、私たちは鼻をかんで息を通しやすくしようとします。しかし、犬は鼻をかむことはできません。
そこで、鼻の通りをよくしようとして、鼻から強く息を「ふんっ」と吐き出します。これが、私たちにはため息のように見えることがあります。
あまりにも頻繁にため息をつくと感じた場合は、体調不良による呼吸困難の状態から脱するために、鼻から強く息を吐き出している可能性があります。
元気がない、食欲がない、下痢や嘔吐などの消化器症状が見られるなど、体調不良が疑われる症状が出ていないか確認し、できるだけ早めに診察を受けるようにしましょう。
特に注意したい対応

今回ご紹介してきたように、たかが「ため息」だと思っても、その裏には愛犬の強いストレスや病気が潜んでいる可能性があります。常に愛犬のそばにいることの多い飼い主さんは、愛犬の様子や行動をよく観察し、強いストレスや病気が疑われるような場合は、注意深く対応することが大切です。
ネガティブな感情に伴うため息が多い場合は、日頃から一緒に散歩をしたり遊んだりすることでストレスを発散させたり、留守番中も退屈しない工夫をしたりして、ストレスの蓄積を予防しましょう。また、ポジティブな感情に伴うため息をしている場合は、優しくそっと見守るだけにとどめるといった配慮も必要でしょう。
なお、ため息のように見える呼吸が現れる病気には、下記のようなものがあります。気になる場合は、できるだけ早く動物病院で診てもらうようにしましょう。
- 鼻腔狭窄:呼吸困難による頻繁なため息と、鼻水の症状が現れる
- 気管狭窄:炎症や異物誤飲などで発症しやすく、夕方から夜にかけてため息が多くなる
- 僧帽弁閉鎖不全症:全体的に不規則な呼吸をするようになる心臓の病気
まとめ

犬の行動を単純に人に当てはめて考えてしまうと、大きな間違いを起こすことが多いため注意が必要です。しかし今回、犬のため息と人のため息には、かなり似ている部分も多いことが分かりました。
犬のため息に気付いたら、その場の状況や愛犬の様子から、満足しているのか、不安や不機嫌などのネガティブな感情を抱いているのかを見極め、改善できるストレスには適切な対処を行いましょう。また、ため息のように見えて、病気による呼吸困難の症状である可能性も考慮しましょう。



