犬が激怒する理由

犬がいくら感情豊かな動物だとしても、病気などではない限り、いきなり激怒することはありません。必ず、瞬きやあくび、鼻を舐めるなどのカーミングシグナルと呼ばれるストレスサインを出しています。
このサインに気付かずにいつまでも嫌がることや怖がることを続けることで、犬を激怒させてしまうのです。多くの場合、犬は不安や恐怖、不快なことから自分や家族を守るために激怒します。
激怒させる原因が第三者にある場合は、咬傷事故などの大きな問題に発展することもあるため、飼い主さんは犬が発する激怒のサインや対応の仕方を知っておくことが大切です。
犬が激怒しているときに見せるサイン

この章では、犬が本気で怒ったときに見せる典型的なサインをご紹介します。
1.全身に力が入り毛を逆立てて突進しようとする
犬は激怒すると、全身に力が入り、背中の毛を逆立てて相手に突進しようとします。全身に緊張感がみなぎっています。
ただしすぐに突進するわけではなく、始めは表情や声による怒りのサインを表しながら、ゆっくりとした動作で威嚇します。その後、爆発したように突進していくことが多いです。
2.鼻にシワを寄せる
表情に現れる激怒のサインでまず目立つのが、鼻のシワです。鼻先の黒い部分から目の辺りまでの鼻筋に、左右から強い力でシワを寄せます。鼻だけではなく、顔全体の筋肉が緊張しています。
3.歯をむき出して唸る
激怒のサインは、口元にも現れます。唇が上方や後方に引っ張られて歯がむき出しになり、低くて長い唸り声を発します。「それ以上続けると噛みつくぞ」という気持ちを、視覚と聴覚の双方で伝えています。
4.吠える
犬にとって、吠えるという行為は必ずしも「怒り」のサインではありません。しかし、前述のような怒りのサインと同時に吠えている場合は、吠えることで相手に怒りの気持ちを伝えていると考えられます。
5.飛びついたり噛みついたりすることも
犬にとっても、攻撃が最大の防御です。自分や家族を守ろうと激怒している犬は、リードがなければ怒りの対象に向かって突進し、飛びついたり噛みついたりすることでしょう。
相手の犬が激怒している場合は、愛犬やご自身がその犬に近づかないようにしましょう。愛犬が激怒している場合は、リードを離さず相手に突進させないようにしましょう。
ブチギレている犬に飼い主がしてはいけない行動

力づくで叱りつける
愛犬が激怒しても、大きな声で叱りつけたり、力づくでおとなしくさせようとしてはいけません。自分や家族を守ろうとしている犬を叱りつけても、反発心を引き出したり怒りを煽るだけです。
言うことを聞いてしまう
犬が爪切り、歯磨きなどの犬が嫌がるケアや投薬中に激怒のサインを見せると、飼い主さんは噛みつかれる怖さから、ケアや投薬を中止してしまうかもしれません。しかし、これも激怒している犬にはやってはいけない行為です。
なぜなら、「怒れば嫌なことをやめてもらえる」と覚えた犬は、ちょっとしたことで激怒するようになってしまうことが多いからです。
なだめるために優しくしたりおやつをあげたりする
激怒している犬をなだめるために、優しくしたりおやつをあげたりしてもいけません。なぜなら、飼い主さんとのコミュニケーション不足でストレスが溜まり怒りやすくなっていた犬に、「怒ればかまってもらえる」と誤った学習をさせてしまうからです。
犬を激怒させないためにできること

普段からしつけをしておく
大切なのは、愛犬を激怒させないことです。しかし、万が一激怒させてしまった場合に備えて、普段から「スワレ」「フセ」「マテ」「ハナセ」などの指示語を教え、激昂したときにもクールダウンさせられるようにしておきましょう。
特に、咥えているおもちゃなどを守ろうと怒る犬には、「ハナセ」という指示語で咥えているものを手放させるしつけをしておくと、安全に対処できます。
苦手を克服させるやり方を工夫する
愛犬が嫌がるケアや投薬などをする場合、やり方を変える、手際よく短時間で済ませる、何段階かに分けて少しずつ進めるなど、受け入れてもらえる方法を見つけながら、愛犬の苦手を克服させてあげましょう。
ストレスのない環境と生活をさせる
小さなストレスも積み重なれば大きなストレスとなり、激怒しやすい犬にしてしまいます。下記のような対策でストレスのない環境や生活をさせることは、愛犬を怒りにくくするために役立ちます。
- 年齢や健康状態に合った居心地の良い居住環境を整える
- 毎日の散歩や運動でエネルギーを発散させる
- トリック(芸)やゲーム、多彩な散歩コース等で多様な刺激を与え脳を活性化させる
からかったりわざと怒らせたりしない
中には、愛犬が困ったり怒ったりする様子がかわいくて、わざとからかったり怒らせたりする飼い主さんもいるようです。しかし想像以上に強いストレスを与え、また愛犬からの信頼を失う行動でもあります。常に向けられている愛犬の視線を意識してください。
健康面を把握しておく
犬は、自分の体調が悪いことを隠そうとします。しかし、体に痛みや不調があることで、触ろうとした飼い主さんに激怒することもあります。定期的な健康診断や日々のケアの際の健康チェックで、常に愛犬の体調や体の痛みを把握しておきましょう。
まとめ

犬が激怒する理由の多くは、自分や家族を守るためです。激怒した犬は必死に攻撃することも多く、たとえ小型犬でも危険です。万が一怒らせてしまった場合は、気持ちを逆撫ですることなく、安全に対処することを優先しましょう。
ただし、愛犬が頻繁に激怒する、怒った犬が怖くて手がつけられないといった場合は、一人で抱え込まずに動物病院や家庭犬のトレーナーといったプロに相談し、愛犬と飼い主さんの双方の安全を最優先にして解決に取り組みましょう。



