愛犬のトイレ問題

犬の専門サイトや専門誌が、犬の飼い主さん向けに行うアンケートでよくあるテーマの一つに、「これまでに一番悩んだり苦労したことは何ですか」というものがあります。このテーマでよく上位にランキングされるのが、「トイレ問題」です。
子犬や迎えたばかりの犬がなかなかトイレを覚えてくれないというものから、一度は覚えたのにまたできなくなったといったものまで、内容はさまざまです。では、多くの飼い主さんが共感できる、犬のトイレに関する悩みの例を見ていきましょう。
犬の飼い主が経験するトイレに関する悩み

1.なかなかトイレを覚えてくれない
家に迎え入れて日の浅い犬や子犬によくある悩みが、「トイレをなかなか覚えてくれない」というものです。もともと犬には、特定の場所(トイレ)に排泄するという習性はありません。そのため、トイレを教えるのは簡単なことではないのです。
愛犬の性格によってもトイレの覚えやすさには差が出てきます。1ヵ月程度で覚えられる犬が多いようですが、中には4ヵ月経っても覚えられない犬もいて、飼い主さんを悩ませるのです。
2.トイレ以外の場所に排泄する
多くの犬は、排泄物が足につくのを嫌がります。そのため、尿をよく吸い込むカーペットや布団で粗相をしてしまう犬が多いのです。また、トイレに入っても結局トイレの外にしてしまうというケースや、トイレそのものを使いたがらない、いつまでも場所を覚えないというケースもあります。
3.トイレシートをビリビリにする
中には、トイレシートを引っ掻いたり噛みちぎったりして、ビリビリにしてしまう犬がいます。トイレの役割を果たせないだけでなく、室内が汚れたり、シートの破片を飲み込んだりといった別の問題に発展する可能性もあるため、看過できない問題の一つです。
4.外でしか排泄しない
犬の散歩の目的が「トイレ」だった時期もありましたが、さまざまな人が大勢住んでいる都市部などでは特に、散歩中の犬のトイレが問題になる時代となりました。今や、外では排泄をさせないのが常識なのです。
しかし、これまで外でトイレを済ませていた犬の中には、なかなか室内ではトイレをしたがらない犬も多く、頭を悩ませる飼い主さんが少なくありません。
5.急にトイレの失敗が増えた
今までできていたことが急にできなくなると、「困らせようとわざとしているのではないか」と考える方がいます。しかし犬の思考の仕組みを考えると、「嫌がらせ」のような心理で行動を起こすことはあまりないと考えられています。
トイレができなくなった理由が必ず潜んでいますので、原因を追求し、適した解決策を施すことで改善していきましょう。
トイレの悩みを解決するためのヒント

トイレトレーニングの方法
現在最も推奨されているトレーニング方法が、「好ましい行動をしたら即座に褒めることでその行動の発現を強化する」という陽性強化法です。失敗した場合は決して叱らず黙々と片付ける、成功したらすぐに褒めるというのがポイントです。
トイレの環境を整えた上で、トイレの成功体験を積み重ねさせ、トイレでの排泄行動を強化するように根気よくトレーニングを続けましょう。
トイレに誘導するタイミングの見極め方
トイレの成功体験を引き出すために重要なのが、トイレに誘導するタイミングです。犬が排泄しやすい時間帯に排泄したそうな仕草を見せたら、トイレに誘導しましょう。
<排泄しやすい時間帯>
- 朝起きてすぐ
- 食事後
- 遊んでいる途中または遊び終わった後
<排泄したいときのサイン>
- 床のニオイをクンクン嗅ぐ
- その場でクルクル回る
- そわそわする
ノートなどに、トイレの成功・失敗と時間、前後の行動と仕草などを記録しておくと、愛犬の排泄タイミングをつかみやすくなります。
好ましいトイレ環境
<設置場所とサイズ>
人目を避けられて静かで落ち着ける場所に設置し、一度設置したら無闇に移動せず場所を固定しましょう。また、中で犬が余裕を持って方向転換できるくらいの広さが必要です。
<衛生管理>
足に排泄物がつかないよう、常に清潔にしておきましょう。留守にする場合はトイレを多めに設置して、いつでも清潔なトイレを使えるようにしておきましょう。
<安全対策>
トイレシートを噛みちぎってしまう場合は、シートの上にプラスチックの網を被せるタイプのトイレを選ぶと良いでしょう。
外での排泄をやめさせるための工夫
散歩中の排泄をやめさせたいのであれば、「室内で排泄をさせてから出かける」という習慣をつけさせましょう。万が一外で催した場合は、外でもトイレシートを敷き、そこに排泄させるようにしましょう。
急にトイレを失敗するようになる主な原因
突然トイレを失敗するようになった場合、トレーニング不足、環境や生活リズムの変化によるストレス、マーキング、老化による身体及び認知能力の低下、泌尿器系疾患など健康上の問題など、さまざまな原因が考えられます。
これらの原因はどの犬にも当てはまりますが、特に子犬はトレーニング不足、成犬はストレスやマーキング、老犬は老化や疾患などが原因となっていることが多いです。愛犬の様子から原因を見極め、適切な対処でトイレの失敗を減らしていくことができます。
まとめ

毎日数回発生するトイレは、愛犬の健康のためにも必要なことですし、散歩マナーとしても非常に神経を使う部分です。そのため、思うようにトイレを使ってくれないと悩まれる飼い主さんは少なくありません。
わざと失敗する犬はいません。犬は常に最善だと思う行動をしているため、失敗した理由があるのです。今回ご紹介した悩みの事例と解決するためのヒントを参考に、焦らず気長に根気よくトイレトレーニングや環境の改善を続けてください。難しい場合は、家庭犬のトレーナーや行動診療科に詳しい獣医師などの専門家に相談してみましょう。



