犬はどんなときに怒るの?
同じ出来事に直面しても、穏やかな表情でやり過ごせる人、火がついたように怒りだしたりイライラした気持ちを抑えられずに八つ当たりをする人など、怒りの沸点は人によりかなり異なります。
これは犬も同じです。同じ出来事に直面しても、穏やかなままやり過ごせる犬もいれば、すぐに怒る犬もいます。しかしどのような性格の犬も、基本的に怒る理由やシーンは似ています。一般的に、犬がよく怒るシーンを考えると、次のようなものがあります。
- 恐怖や危険から身を守るため
- 嫌なことや我慢できないことをされたため
- 大事なものを守るため
- 縄張りへの侵入者を追い払うため
- 母犬が子犬を守るため
- 自分の体調不安や痛みをかばうため
犬が激怒したときにする仕草や行動
愛犬の怒りにできるだけ早く気付くために、犬が見せる怒りの仕草や行動を知っておきましょう。実際には、複数の要素を同時に示すことが多いです。
1.表情
- 鼻づらにシワを寄せる
- 上唇を強く引き上げるようにして上下の歯を剥き出しにする
- 吠える時は横から見ると口がCの形に見える
- 目と耳を相手に向け、2秒以上じっと睨み続ける
2.姿勢
- 前に突進していこうとするように前のめりになる
- 毛を逆立てていることもある
- 顔および全身の筋肉が緊張し、硬くなっている
3.声
- 低くて長い声を出している(唸っている)
- 吠えて怒りを示すこともある
4.しっぽの様子
- 顔や体を緊張させ、しっぽを硬く小刻みに振る
- 特にしっぽが下がっている場合、不安や恐怖の気持ちが大きい
5.行動
- 前のめりに突進して相手に飛びついたり噛み付いたりすることがある
- いきなり行動に出ることは少ない
飼い主がとるべき対処法
激怒している犬への対処法
飼い主さんは、周囲への迷惑を考えて愛犬の怒りを鎮めようと、興奮している犬に大声で叱ったりリードを強く引いたりと、さらに強い刺激を与えることが多いですが、これらは犬の感情を増長させてしまう可能性が高いです。
激しく怒っている犬を目の前にして落ち着けと言われても難しいでしょうが、とにかく飼い主さんまで興奮しては、事態を収集できなくなってしまいます。まずは深呼吸をして自分を落ち着かせ、愛犬を対象から遠ざかることを最優先にしましょう。
おやつやおもちゃなどを与えて犬の気を紛らわせたり、聞き入れるべきではない要求を聞き入れてしまうのも、よくありません。なぜなら、怒れば良いことがある、望みが叶うなどの誤った学習をし、ますますキレやすい犬にしてしまう可能性が高いためです。
どうしても飼い主さんの努力だけでは愛犬の感情をコントロールできない場合は、行動診療科の獣医師や家庭犬のしつけを専門に行っているドッグトレーナーなどの専門家に相談することも選択肢に入れてみてください。
恐怖や危険から身を守る犬への予防・対処法
- 愛犬が怖がる事や動作をできるだけなくす
- 愛犬が安心し、かつ快適に暮らせるような環境を整える
- 飼い主さんの行動が愛犬の恐怖心を増長している可能性を考え、接し方を見直す
嫌なことや我慢できないことをされて怒る犬への予防・対処法
- 嫌がる事や動作をできるだけなくす
- 必要なケアを嫌がる場合、ケアを工夫したりご褒美を使って好きなことに変える
- どうしても受け入れない場合は、専門家に助けを求める
大事なものを守る犬への予防・対処法
- 愛犬に取られたら困るものは犬のいる環境に置かない
- 愛犬が守ると分かっているものは与えない
- 日頃から「ハナセ」等の指示で咥えたものを離させる練習をする
縄張りへの侵入者を追い払う犬への予防・対処法
- 玄関や窓など、外との境界に近づかせないことで縄張りを守る意識を弱める
- 訪問者に会わせないよう工夫する
- 日頃から、他人に対して穏やかに挨拶できるようしつける
子犬を守る母犬への予防・対処法
- 緊急事態でない限り、母犬の目の前で子犬に手を出さない
- 偽妊娠の場合は獣医師と相談し、できれば避妊手術を行う
自分の体調不安や痛みをかばっている犬への予防・対処法
- 少しでも愛犬の様子に異変を感じたら動物病院に相談する
- 定期的な健康診断と日々のチェックで愛犬の体調を把握する
愛犬を怒りっぽい犬に育てないためにできること
犬は平和主義で、無用な争いを好みません。キレやすい犬は、次の展開を予想できない、刺激に対する耐性が低い、対処する自信がないといったような理由で、恐怖や不安などの感情が強くなり、すぐに火がついてしまうのだと考えられます。
ちょっとしたことで緊張感が高まる犬に育てないためには、下記に気を付けて愛犬と接するように心がけてみてください。
- さまざまな良い経験をたくさんさせて、社会性を身につけさせる
- 社会化期を過ぎても、継続して社会性を身につける機会を設ける
- 苦手なこと、嫌なことを作らないよう工夫する
- お互いにストレスの少ない生活をし、信頼関係を築き上げる
また可能であれば、愛犬を迎え入れる時点で、飼い主さんのライフスタイルに適した犬種や犬を選ぶということも大切です。
まとめ
理性で自分の行動を律することが苦手な犬には、怒らせるような状況を作り出さないことが大切です。
また、犬の怒りは、その背景に恐怖心や不安が潜んでいることもあるため、普段からさまざまな良い体験をたくさんさせて、社会性を育てておくことが大切です。
社会化期を過ぎた犬でも、飼い主さんの努力と愛情があれば、きっと穏やかな性格の犬に育てることができるでしょう。