独り占めしたがる犬が抱えている問題点
何かに強い執着を見せることがあるのは、人も犬も基本的には同じです。ただ人の場合、ある程度執着心や独占欲を理性でコントロールできますが、脳の構造が異なる犬には難しく、強い独占欲のままに行動してしまいます。
犬が独り占めしたがる対象には、フードやおもちゃなどの「獲物」、飼い主さんやそのご家族などの「仲間」、自宅や庭、自分専用のクレートなどの「縄張り」が挙げられます。これらに執着するのは、本能に基づく心理だと言えるでしょう。
しかし通常の場合、独占欲はそこまで強くはなりません。もしもこれらに対する独占欲が強すぎて、問題を起こしてしまう場合、犬は心の中に強い「不安」を抱えていることが多いです。
「大切なものを失うかもしれない」という強い不安のために執着心が強くなり、それが問題行動につながることがあるのです。不安を抱えたままの状態は、犬にとっても辛いことでしょう。独占欲の強い犬の不安は、早めに取り除くことが望ましいです。
犬が独り占めしたいときにみせる行動
犬が独り占めしたいときにみせる行動は、一見問題なさそうに見えることもあります。下記にご紹介する行動も、たまに目にする程度であれば心配する必要はないかもしれません。ただしあまりにも頻繁だったり度を超えている場合は、改善策を考えましょう。
1.マーキングする
マーキングは、「ニオイの強いおしっこをかける行為」だけではありません。自分の体を擦り付けてニオイをつける行為もマーキングです。自分のお気に入りのおもちゃや人、場所に頻繁にニオイをつけるようなら、その対象に強い独占欲を持っていると考えられます。
もしも過度なマーキングを見かけても、対象物を無理やり取り上げるのは逆効果です。「奪われる心配はない」ということを教えて、不安を取り除くことが大切です。
2.甘える
新しい家族が増えたり、飼い主さんが愛犬以外のものに夢中になっていたり、忙しくて一緒に過ごす時間が減ってきたりすると、急に甘えん坊になることがあります。飼い主さんから受けていた自分への愛情がなくなることを恐れ、甘えているのです。この場合も、「愛犬への愛情はなくならない」としっかりと伝えることが大切です。
3.割り込む
前述の「甘える」と同じ理由で、自分への愛情を奪おうとしているライバルと飼い主さんとの間に割り込むようになることがあります。対象は、新しく増えた家族や新しい犬などの他に、スマホやパソコン、テレビ、本などさまざまです。「アイツじゃなくて、僕・私を見て!」とアピールしているのです。
4.威嚇する
自分の大切なものを取り上げようとしている相手に対して、「取らないで」と阻止するために威嚇することもあります。いつも同じおもちゃや場所、人などに近づくと唸るといった行動が見られる場合は、その対象物を独り占めしたいという強い気持ちの表れでしょう。
犬に不慣れな人は、威嚇の唸り声を聞いただけで怯えてしまいます。また威嚇は次に説明する攻撃に切り替わる前段階の行為でもあります。愛犬の威嚇は、早めに落ち着かせることが大切です。
5.攻撃する
威嚇するだけでは効果がないと感じると、直接的に攻撃行動に切り替えることもあります。特にもともと臆病な性格の犬は、好戦的な行動に移りやすい傾向があるようです。飼い主さん自身も含めて、周囲の方に怪我をさせるなどの事故・事件に発展する可能性もあるため、そうなる前に対策を行うべき状態です。特に「飛び掛かる」「噛み付く」といった行動は、させるべきではありません。
独り占めしたがる犬への改善策
改善策で最も大切なのは、「失う・奪われるかもしれない」という不安感を払拭することです。それを意識しながら、愛犬の独占欲の対象や独占したがるタイミングを把握し、状況に合わせて改善策を見つけましょう。
改善策を検討する際のポイントは、下記の通りです。
- どんな状況でも愛犬に対する愛情は変わらないことを示し続ける
- 家族が増えた場合は、何をするにも「これまで通り」愛犬を優先する
- 状況や環境が変わっても「良いこと悪いこと」の判断基準は変えない
- 「良いこと」をしたらすぐにしっかりと褒め、愛犬に自信をつけさせる
- 留守番が苦手な犬には短時間から練習を始め、「必ず帰ってくる」と信頼させる
- 依存心を強めて「拒否される不安」を強化しないよう、甘やかさない
まとめ
新しい家族やスマホなどにやきもちを焼く愛犬の行為は、愛おしく感じるかもしれません。しかし「奪われるかも」という不安をエスカレートさせると、行動もエスカレートしてしまい、思わぬ事故などにつながる可能性もあります。
愛犬の執着がエスカレートする前に、「奪わないよ」「取らないよ」「愛情は無くならないよ」という態度を根気よく示し続けましょう。愛犬の不安が払拭されることで、愛犬も飼い主さんも、皆が安心して暮らせる環境が整うでしょう。