犬のカーミングシグナルを見逃すな!
犬と人間には、異なる部分がたくさんあります。共通の言葉はなく、五感の精度や習性、思考方法なども異なります。そのため、コミュニケーションを図るには努力が必要です。特にストレスを見逃さないためには、「カーミングシグナル」を知ることが大切です。
カーミングシグナルとはボディランゲージの一種で、不安やストレスを感じているときに、犬自身の気持ちや、ストレスの原因となっている相手の気持ちを落ち着かせるために行う行動です。
20数種類ほどのカーミングシグナルが知られていますが、よく見られるものとしては下記の行動が挙げられます。
- 目をそらす
- 背中を見せる
- あくびをする
- 体を掻く
- 体を震わせる
- 体が固まる
- いつまでも地面のニオイを嗅ぐ
- しきりに自分の鼻や口の周囲を舐める
愛犬が嫌がる飼い主の行動
飼い主さんが無意識に行なってしまいがちな、犬が嫌がる行動の例をご紹介します。
1.抱きしめる
人は、抱きしめることで相手に愛情を表現することがあります。子どもがぬいぐるみを抱きしめるのも、その一例です。同じように、愛犬を抱きしめることで愛情を表現する飼い主さんも多いのではないでしょうか。
おおらかな性格の犬は平気かもしれませんが、臆病でパーソナルスペースの広い犬にとっては、たとえそれが飼い主さんでもストレスを感じている可能性が高いです。実際、飼い主さんに抱きしめられてカーミングシグナルを示している犬は、意外と少なくありません。
頻繁に抱き上げる、顔を近づけてキスをするなどの行為も同じことが言えます。また、飼い主さんの抱き方が不安定な場合も、抱かれることにストレスを感じる可能性が高いので注意が必要です。
2.あちこち連れ回す
愛犬と一緒に出かけるのが好きな飼い主さんの中には、毎回初めての場所を選ぶ方もいるでしょう。色々な場所で、たくさんの経験を楽しませたいと考えてのことだと思います。好奇心旺盛な犬は飼い主さんと一緒に楽しめるでしょうが、そうではない犬もいます。
縄張り意識や警戒心の強い犬の場合、初めての場所がストレスになっている可能性があります。初めての場所だと緊張してしまう犬の場合は、同じ場所に何回も通うことで、少しずつ馴染みの場所を増やしていくようにする方が、喜んでもらえるかもしれません。
3.力みすぎ
帰宅後の足の裏や体についた汚物などを取ろうと、濡れタオルやウェットティッシュなどで拭いてあげることがあるでしょう。また、短毛種の犬種でも、こまめなブラッシングは欠かせないお手入れの一つです。
その際に、つい力が入りすぎてゴシゴシと何度も拭いたり、ブラシで皮膚を強く擦ったりすることはないでしょうか。悪気はなくても、力加減がわからずに力みすぎてしまうことで、愛犬がお手入れのたびにストレスを感じているかもしれません。
4.嫌なニオイをさせている
犬の嗅覚は、人の数千倍もあると言われています。警察犬や麻薬犬などのように特殊な訓練を受けていない家庭犬も、人には認識できない程のわずかなニオイに敏感です。
私たちの生活環境にあふれている香水やアロマ、芳香剤、タバコ、薬品などのニオイを嫌う犬は多いです。室内や飼い主さんの体にこれらのニオイが染み付いている場合、愛犬にストレスを与えている可能性が高いです。
5.叱り方が下手
愛犬にマナーやルールを教える際に、その方法が適切ではないために愛犬のストレスになっている場合があります。特に「ダメだ」ということを教えるケースが難しいようです。
愛犬の留守番中の行為を叱ったり、必要以上にくどくど叱ったりしても、犬には飼い主さんの意図が伝わりません。それどころか、強いストレスを与えている可能性が高いです。ただ嫌な思いをさせているだけなので、信頼関係を崩すことにもなりかねません。
なお、褒め方が下手でも、犬には意図が伝わりません。ストレスは与えないでしょうが、意味もわからずご褒美がもらえて「よくわからないけど、ラッキー!」程度にしか思われていない可能性があります。この場合も、犬に「正しい行動」を教えられてはいません。
犬と接する際に心がけたいポイント
愛犬が嫌がる行動を避けると共に、日頃から心がけておきたいポイントもご紹介します。
愛犬の性格を見極める
飼い主さんの愛情表現や行動が愛犬への「ありがた迷惑」にならないように、カーミングシグナルを覚えましょう。愛犬の性格を把握し、愛犬が発しているカーミングシグナルにすぐに気付き、適切な対応が取れるように心がけることが大切です。
人工的なニオイは避ける
愛犬の住環境では、できるだけ人工的なニオイを排除しましょう。特にタバコは、有害物質が床や愛犬の被毛に付着し、犬がそれを舐めてしまうため、副流煙による健康被害以上に重度な健康被害をもたらす可能性があります。ぜひ、禁煙することをおすすめします。
正しい犬のトレーニング方法を学ぶ
人と犬では物の感じ方や考え方に違いがあるため、自己流でのトレーニングではうまくいかないことも多いです。初めて犬と暮らす、トレーニングに自信がないという飼い主さんは、ぜひ一度プロのドッグトレーナーからのレクチャーを受けることをおすすめします。
まとめ
良かれと思った行為が、愛犬のストレスになっていることがあります。言葉を使えない愛犬の気持ちは、行動やしぐさから察するしかありません。
愛犬からの信頼を失わないために、ぜひ「カーミングシグナル」を覚えましょう。そして愛犬のカーミングシグナルに気付いたら、何がストレスになっているのかを考えましょう。愛犬のサインに気付いて寄り添うことは、今日からでも始められますよ。