犬の口腔内トラブルを招くNG行為4選
犬の口腔内ケアを行うのは飼い主の役目ですが、NG行為をしてしまうと、口腔内トラブルを引き起こすおそれがあります。口腔内トラブルによる悪影響は、口の中だけにとどまらず、全身にまで及ぶこともあるため軽視できません。ここでは、犬の口腔内トラブルを招くNG行為を4つご紹介します。
1.歯磨きを怠る
犬の唾液は弱アルカリ性であるため、酸性の環境を好む虫歯菌は増えにくく、犬は虫歯になりにくいと言われています。しかし、アルカリ性の環境を好む歯周病菌は、犬の口腔内で増殖しやすく、歯磨きを怠ると歯周病になってしまいます。
歯周病は口臭の原因になりますが、それだけではありません。進行すると、歯茎の腫れや出血、歯の脱落、顎の骨折などを引き起こすことがあります。さらに、歯周病菌が血管内に入り込んだ場合には、心臓や腎臓などの臓器に悪影響を及ぼすおそれがあります。
このように、歯周病は全身の健康に影響を及ぼす怖い病気なのです。歯周病の予防には、歯磨きが欠かせません。歯垢は細菌の塊であり、その中に歯周病菌も潜んでいます。そのため、歯磨きで歯垢をしっかりと取り除く必要があるのです。
犬の歯磨きは毎日行うのが理想ですが、もし難しければ、3日に1回は行うようにしましょう。
2.歯石を放置する
歯垢を放置すると石灰化し、歯石になります。犬は石灰化のスピードが速く、3〜5日で歯垢が歯石になってしまいます。最低でも3日に1回は歯磨きが必要なのは、そのためです。
歯石は黄色や茶色っぽい色をしており、表面がザラザラしています。このザラザラした凹凸に歯垢が溜まりやすく、細菌の温床となるため、歯周病のリスクが高まります。
一度できてしまった歯石は、残念ながら自然に取れることはなく、歯磨きで取り除くこともできません。そのため、動物病院で歯石除去(スケーリング)をしてもらう必要があります。歯石を放置すれば、歯周病のリスクが高まる一方です。
一般的に歯石の除去は、全身麻酔下で行われます。全身麻酔にはリスクが伴うため、日頃から歯磨きをしっかり行い、歯石を作らないようにするのが一番です。もし愛犬に歯石ができてしまった場合は、放置せずに早めに獣医師に相談しましょう。
3.乳歯遺残を放置する
乳歯が抜けずに永久歯が生えてきてしまう状態を乳歯遺残と言い、特に小型犬に多く見られます。乳歯遺残を放置しておくと、乳歯と永久歯の間に歯垢が溜まりやすく、歯周病のリスクが高まります。また、噛み合わせが悪くなることもあります。
犬の歯の生え変わり時期は生後4〜7ヶ月頃であるため、生後6ヶ月前後を目安に一度、動物病院で歯の状態をチェックしてもらうとよいでしょう。乳歯が残っている場合、全身麻酔下で抜歯することになるため、避妊手術や去勢手術と併せて抜歯を行うケースが多いです。獣医師とよく相談しましょう。
4.硬すぎるおもちゃを与える
硬いおもちゃを噛むのが好きな犬は多いですが、硬すぎるおもちゃを与えると、歯が破折(折れたり欠けたりすること)する可能性があります。
犬の歯は、人間と同じように外側からエナメル質、象牙質、歯髄という構造になっています。犬のエナメル質は人間よりも薄いため、意外と折れたり欠けたりしやすいです。
破折によって、歯髄(歯の神経)が露出してしまうと、痛みや細菌感染の原因となるおそれがあります。歯髄が露出した場合は、抜歯が必要になることが多いです。
愛犬に与えるおもちゃを選ぶ際は、硬すぎないものを選びましょう。目安として、爪で押してもへこまないものや、ハサミで切ることができないものは、硬すぎると判断してよいでしょう。
犬の口臭が悪化する飼い主がやりがちな行動は?
愛犬の口臭が気になったときに、飼い主がやってしまいがちな行動があります。それは、動物病院へ行かずに口臭ケアグッズに頼ってしまうことです。この行動がかえって口臭を悪化させてしまうことがあるため、注意が必要です。
近年、ジェルやスプレー、リキッド、ガム、サプリメントなど、さまざまな犬用の口臭ケアグッズが市販されています。これらのグッズは、歯磨きと併用することで、口臭の主な原因である歯周病をより効果的に予防することができます。
しかし、歯磨きをせずに口臭ケアグッズだけに頼っても、歯周病の原因となる歯垢を取り除くことはできません。そのため、ケアグッズで一時的に口臭が和らいだとしても、根本的な問題は解決されず、口臭が悪化する可能性が高いです。
また、口臭の原因は歯周病だけではありません。口腔内腫瘍や内臓疾患、口腔内の乾燥などが口臭を引き起こすこともあります。
愛犬の口臭に気づいたら、動物病院で口臭の原因を特定してもらい、適切な治療や処置を受けることが大切です。原因が特定されないまま口臭ケアグッズで対応していると、口臭だけでなく、原因となっている病気も悪化していくおそれがあります。
口臭は愛犬の口腔や体からのSOSサインと捉え、まずは動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
歯周病や歯の破折といった犬の口腔内トラブルは、飼い主のNG行為によって引き起こされることがあります。歯磨きを怠ったり、歯石や乳歯遺残を放置したり、硬すぎるおもちゃを与えたりするのは避けましょう。
愛犬の口臭に対して口臭ケアグッズに頼ってしまいがちですが、それだけでは根本的な解決にならず、かえって口臭を悪化させることもあります。愛犬の口臭に気づいたら、まずは動物病院を受診し、適切な治療や処置を受けるようにしましょう。