犬と暮らして気付く大変なこと
言われなくてもわかっているという方も多いでしょうが、実際に犬を家に迎え入れる前に一度考えていただきたいことが、犬との暮らしには「大変なこと」も多いということです。犬はロボットではなく生き物です。だからこそ大変なことをきちんとイメージした上で、迎え入れる準備を進めてください。
犬は永遠の子どもと同じ
犬の知能は人間の2〜3歳児と同じくらいだと言われています。だからというわけではありませんが、犬はその生涯を通して人間の子育てをしているのと同じくらいの手間がかかるものだということを知っておきましょう。
犬は、成長しても決して自立することはありません。飼い主さんと信頼関係を築き、いろいろなことができるようにはなりますが、それでも食事の準備、衛生管理、健康管理などは、飼い主さんにしかできないことです。
一人暮らしの飼い主さんであれば、ご自身が寝込んでしまった時や突然の長期出張などに備えて、愛犬の世話を託せる人や業者を準備しておくことも必要です。
下の世話・看病・介護
飼い主さんによっては、案外と大変さを想像できないのが、愛犬の毎日の下の世話や病気やケガをした場合の看病やシニア期の介護ではないでしょうか。特に下の世話は、水洗トイレに流して終わりというわけにはいきません。
室内に設置したトイレはもちろん、散歩時に排泄してしまった場合の処置も含めて、毎日複数回行わなければならないのが、排泄物の廃棄処理とトイレの掃除です。また愛犬が体調を崩した場合は、床や寝床などに残っている吐瀉物や下痢便の後片付けも必要です。
愛犬が罹った病気の種類によっては、自宅で飼い主さんが、決まった時間間隔で投薬したり皮下補液をしたりしなければならないケースもあり得ます。これを仕事の合間を縫って行うのは、想像以上に大変です。
賢い犬にも必須のしつけ
犬種特性などの説明として、よく「賢いためしつけがしやすい」などの記載を目にすることがあると思います。これは、その犬種であれば賢いので一度教えればすぐに覚えるという意味ではありません。
他の犬種と比較するとしつけやすいというだけで、何度も教えなければ覚えませんし、覚えた後もトレーニングを続けなければ忘れてしまうこともあります。また、間違った方法でしつけてしまうと、思いもよらない問題行動を引き出してしまうなど、どんなに賢い犬に対しても、しつけの難しさは変わりません。
犬と暮らして気付く幸せな時間
もちろん、犬との暮らしは大変なことばかりではありません。幸せな時間についてもいくつかご紹介しておきましょう。
お互いになくてはならない存在となれる幸福感
一緒に暮らす時間を積み重ねていくほど深まっていくのが、お互いの間に築かれる信頼関係です。アイコンタクトやお互いの仕草などを通して意思疎通が図れるようになると、グッと家族感が深まり、お互いに相手のことをなくてはならない存在と感じ、幸福感を覚えることでしょう。
常に一緒に行動することで得られる一体感
人間の家族の場合、同じ家に住んではいるものの、それぞれの生活を送るのが通常の姿でしょう。しかし、犬は何をするにも飼い主さんの存在が不可欠です。食事、散歩、遊び、起床や就寝といったライフサイクルも、全て飼い主さんが主導しなければなりません。このように、常に一緒に行動することで得られる一体感は、人間の家族にも感じられない独特なものがあります。
何気ない日々の暮らしに幸せを感じられる
犬との暮らしには、「旅行」や「アウトドア」「ドッグスポーツ」などのイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、たとえそのような特別なことをしなくても、毎朝起きて散歩をし、食事をさせ、仕事から帰宅して出迎えを受け、散歩に行き食事をさせて一緒に就寝するといった、つつがなく過ごす愛犬との日々の暮らしは、なぜかほっこりとした幸福感をしみじみと味わえるものです。
お互いが幸せに過ごすために覚悟しておくべきこと
犬との暮らしで味わえる「大変さ」や「幸せな時間」をご紹介してきました。あえて「大変さ」を強調したのは、愛犬との暮らしを「期待」だけを抱いた状態でスタートしてほしくなかったからです。
つつがなく過ごす愛犬との毎日は、確かにほっこりとした幸福感を味わえます。しかしその中には、下の世話や自分の体調不良をおしての愛犬のお世話、毎日繰り返し行うしつけのためのトレーニングなども含まれます。
また思わぬことで愛犬にストレスを与えてしまい、想定外の問題行動を引き出してしまうこともあるかもしれません。飼い主さんのライフステージの変化や愛犬の病気、飼い主さんの高齢化などにより、愛犬のお世話を続けることが辛くなってくることもあるかもしれません。
そうなった場合にも、愛犬と飼い主さんの双方の幸せを維持できるように努力し、工夫を重ねる覚悟が持てるかどうかで、実際に愛犬を迎え入れるかどうかを決めていただきたいと思います。
まとめ
愛犬の幸せは、いや応なしに飼い主さんに委ねられます。しかし、愛犬の幸せのために飼い主さんが不幸になる必要もありません。愛犬と飼い主さんの関係は、家族です。愛犬も飼い主さんも、共に幸せになるべきなのです。そのためには、愛犬との暮らしを始める前に、犬と暮らす大変さと幸せな時間の双方に思いを馳せ、その上でお互いが幸せに暮らすための苦労や工夫を続けていける覚悟を持てるかどうかが大切でしょう。