犬から人間に感染する病気
犬と暮らしていると、何気ない日常の中で病気が人にうつることがあります。実際に、愛犬とのスキンシップをきっかけに感染症を発症し、命を落とすケースも報告されています。
このように、動物から人へ感染する病気のことを「人獣共通感染症」「ズーノーシス」「動物由来感染症」などと呼びます。
たとえば次のような場面で感染することがあります。
- 犬に噛まれた引っかかれた
- 傷口を舐められた
- 犬の体についた糞尿に触れた
- 糞尿がついた手で飲食した
「犬を触ったら手を洗いなさい」と言われるのは、まさにこうした感染症を予防するためです。特に、手を口に入れがちな小さな子どもは要注意です。
今回は、犬から人に感染する代表的な病気を4つご紹介します。
1.狂犬病
狂犬病は、致死率がほぼ100%という非常に危険なウイルス性の感染症です。日本では長年発生していませんが、海外では今なお年間5万人以上が亡くなっている恐ろしい病気です。
感染した動物に咬まれることでウイルスが体内に侵入して感染し、発熱、頭痛、恐水(喉のけいれんで水が飲めない)などの症状を引き起こし死に至ります。発症後は有効な治療法がありません。
予防策は、狂犬病ワクチンの接種です。日本では法律で義務化されていますが、国外では義務化されていない国もあるため、海外で野良犬や野生動物に近づかないようにしましょう。
また、咬まれた場合はすぐに医療機関を受診してください。
2.パスツレラ症
パスツレラ症は、犬の口の中に存在している“パスツレラ菌”が人間に感染することで引き起こされる病気です。
犬に咬まれたとき、犬に傷口を舐められたとき、犬とキスをしたときなどに感染することがあります。
発症したときに起こる症状のほとんどが、呼吸器官に関わる症状であるとされています。
持病に喘息がある場合、咳がひどくなったり、呼吸が困難になったり、胸に圧迫感があるなどすることがあります。
健康で元気な人であれば、少し咳が出る程度の症状が出るなどし、“風邪をひいたのかな…”と、あまり気にすることなく過ごしてしまうかもしれません。
犬に咬まれたり傷口を舐められたりした後で風邪のような症状が出たときは、感染症の可能性も考え、なるべく早く病院を受診しましょう。
感染症を防ぐため、愛犬の甘噛みは「ダメ」と教えてあげましょう。また、すり傷程度のケガであっても、流水で手を洗い絆創膏を貼るなどし、犬に舐めさせないようにしましょう。
3.レプトスピラ症
レプトスピラ症は、レプトスピラ菌が原因で、犬の尿から人間に感染することのある病気です。
犬がレプトスピラ菌に感染する原因は、ネズミなどの野生動物であるとされています。お散歩中、地面のニオイを嗅いだときに野生動物の糞尿に触れるなどし、感染することがあります。
犬がレプトスピラ菌に感染すると、食欲不振や嘔吐血尿、黄疸などを起こし、死亡率が高い病気です。症状が軽度である場合、飼い主が気づかずに放置し、自然治癒することもあります。
そして、レプトスピラ菌に感染した犬の尿に触れたことによって、飼い主が感染することがあります。頭痛や発熱など、風邪、黄疸などの症状が見られることがあります。
お散歩するときは、野生動物の糞尿に注意し、普段から愛犬の尿の取り扱いにも注意しましょう。排泄物の後始末をしたとき、トイレをお掃除したときは、手をしっかり洗いましょう。
4.回虫症
回虫症は、犬回虫という病原体によって引き起こされる病気です。人間に感染した場合、幼虫が成虫へと成長することはなく、何カ月も体の中で生存します。
生存している間は、組織を移って渡り、組織に炎症や損傷を引き起こします。感染しやすい組織には、肺と肝臓があります。
犬が感染するルートは、主に口から虫卵が侵入することです。口から侵入し、小腸へと寄生し、成虫となった後、うんちと一緒に虫卵が排出されます。
お散歩中、犬回虫に感染した犬のうんちが落ちていて、ニオイを嗅いだときに鼻が触れ、その鼻を舐めたことで虫卵が取り込まれた、ということがよくあります。
当たり前のことですが、愛犬がお散歩中にうんちをしてしまったときは、必ず持ち帰りましょう。他の犬や飼い主に感染させないためでもありますし、愛犬や自分自身が病気にならないためでもあります。また、定期的に駆虫することも必要です。
まとめ
犬から人間に感染する病気を4つ解説しました。
- 狂犬病
- パスツレラ症
- レプトスピラ症
- 回虫症
犬から人間に感染する病気の存在は、犬と暮らす全ての飼い主が知るべきことです。何気ない出来事がきっかけで感染し、発症することがあります。死に至るケースもあります。
感染ルートを知り、予防対策をしましょう。排泄をさせた後は、被毛に付着した糞尿をキレイに取り除いてあげましょう。そして、しっかり手洗いをしましょう。