子犬の頃は遊び好きだったのに…
既に成犬になった保護犬を家に迎え入れた場合、他の犬に対して怯えたり唸ったりしてしまい、一緒に遊ぶなど考えられないといった反応を示す犬が多いです。これは、新しい刺激を柔軟に受け入れ、経験からさまざまなことを学習しやすい社会化期(生後約3〜12週齢の頃)の経験不足が原因である場合が多く、飼い主さんが積極的に社会性を身につけさせる努力が必要です。
では、子犬の頃から一緒に暮らしている飼い主さんで、子犬の頃は他の犬ともすぐに仲良く組んずほぐれつしながら遊んでいたのに、成長したらあまり他の犬と遊ばなくなったのを見て心配されている飼い主さんの場合も、何か対処が必要なのでしょうか。
答えは、NOです。これは通常の成長で見られるごく普通の現象なので、特に心配する必要のないケースがほとんどです。では、なぜ成長すると他の犬と遊ぼうとしなくなるのか、その理由や犬の心理について考えてみましょう。
犬が成長すると他のワンコと遊ばなくなる理由
1.エネルギー量の変化
子犬の頃は体がどんどん成長していく過程なので、エネルギーがありあまっています。そのエネルギーを発散させ、たくさん体を動かすことで、筋肉を作ったり体の各機能の発達を促すのです。しかし成犬になると体の成長が止まるため、子犬の頃ほどのエネルギー量は自然となくなっていきます。そのため、他の犬に出会っても無闇に遊ぼうという意欲にはつながらなくなるのです。
2.精神的な成熟による変化
エネルギー量の変化は体の成熟の結果ですが、成犬になると当然精神的にも成熟します。子犬の頃は旺盛だった好奇心も和らぎ、特定の仲の良い犬や飼い主さんとのコミュニケーションの中で、穏やかに暮らすことを望むようになります。
3.性格の変化
人と同じように、犬も成長するにつれて性格が変わることがあります。子犬の頃はとても社交的だった犬が、成長したことで性格が落ち着き、比較的限られたコミュニティの中での落ち着いた生活を好むようになることもあります。
4.経験から得た学びによる変化
性格の変化にも影響を与えている可能性がありますが、成長と共に重ねてきた経験が原因で、他の犬への警戒心が芽生えたという可能性も考えられます。見知らぬ犬に積極的に近づくことで、怖い思いをすることもあると知った犬は、無闇に知らない犬と仲良くしようとはしなくなることもあるのです。
飼い主ができること
他の犬に対して積極的にアプローチするタイプだった愛犬が、成長してあまり他の犬とのコミュニケーションを求めなくなったとしても、それは愛犬が心身ともに成熟した結果だと受け止め、特別心配する必要はありません。
しかし、愛犬の精神的な成長がそこで終わったという意味ではありません。体力の維持や老化による認知症予防のためにも、積極的に新しい刺激を与えることをやめてしまうのは問題です。
他の犬と無理に遊ばせようとする必要はありませんが、出会いの場を無くしてしまう必要はありません。また相性の良い犬との付き合いはできるだけ続けてあげる、散歩コースや時間帯などに変化をつけて新しい刺激を与え続けるといった配慮や、飼い主さんとの時間をさらに充実させることも大切です。
なお、愛犬の他の犬に対する警戒心が増強されていると感じた場合には、何かきっかけとなる経験があるのかもしれません。愛犬に変化が見られた時期や様子などから原因を突き止め、愛犬のストレッサーとなっているものを排除したり刺激を抑えるといった工夫をすることで、少しでも愛犬の警戒心が和らぐようにしてあげましょう。
まとめ
子犬の頃は他の犬に積極的にアプローチして遊びたがっていた愛犬が、成長したことで他の犬と遊ばなくなっても、それは単に心身ともに成熟した結果と受け止め、飼い主さんが心配して何か対処しなくてはいけないということはありません。
ただし、他の犬と遊ばなくなった原因として何かトラウマとなるような出来事があるなどの心当たりがある場合は、愛犬の警戒心や恐怖心の原因となっている過去を克服してあげる必要があるでしょう。
また、成長したことで飼い主さん以外の人や犬とのコミュニケーションが必要なくなるというわけでもありません。他の犬と出会う機会や新しい刺激を受ける機会は、継続して与えてあげましょう。愛犬の生活が豊かになり、また愛犬の老化予防にもつながります。