犬の喧嘩と遊びの違い
喧嘩と遊びの違いなんて、何を当たり前のことをと感じる飼い主さんも多いでしょう。しかし、まだ犬と暮らし始めたばかりの飼い主さんだと、遊びの範疇なのか本気の喧嘩になりかけているのかの判断が難しいと感じても不思議ではありません。
子犬たちはまるで喧嘩をしているように遊びながら、犬同士のコミュニケーションを覚えていきます。そして、遊びながら興奮していきますし、喧嘩のときも当然興奮が高まります。そのため、一見しただけではどこで一線を越えたのかの判断が難しいのです。
愛犬に社会性を身につけさせるために、他の犬とも積極的に遊ばせたいものの、安全性の確保が難しいと感じておられる飼い主さんのために、喧嘩と遊びを見分けるポイントや、やめさせるべきと判断するポイントなどをご紹介します。
喧嘩と遊びを見分けるためのポイント
攻守の方向性
犬たちがじゃれあって遊んでいる姿は、片方が攻め、もう片方が守りに入っている格闘技の試合のように見えます。そのため、遊びと喧嘩の境界線がわかりづらいです。
この時の見分けポイントは、攻守の方向性です。交互に攻めと守りを交代している場合は遊んでいます。しかし、一方がずっと攻め続けて相手側が追い詰められている状況が続いている場合は、喧嘩に変わっている可能性が高いです。
噛み方
遊んでいるときにも、口を大きく開いて相手の頭などにガブリと噛み付いていることが多いです。側で見ているとハラハラするシーンですが、ほとんど力が入っていないような噛み方をしている場合は、遊びの延長です。
しかし、攻めている側が首元に噛みついたまま離そうとせずに頭をブンブンと振っているような場合は、トドメを刺そうとしている行動なので、喧嘩の可能性が高いです。
全身の緊張状態
取っ組み合っていても、遊びの場合は全身に余計な緊張が見られず、どこかリラックスしている様子が見てとれます。
しかし、全身に余計な力が入っていたり、しっぽが力強く上に持ち上げられたり、硬直して動きが強張っているような場合は、喧嘩の状態に変わっている可能性が高いです。
表情や鳴き声
鼻にシワを寄せたり、唇をめくるようにして牙を剥き出していたり、耳が後ろに倒れていたりといった表情をしていたり、全身の毛を逆立てながら低い唸り声を出している場合は、喧嘩の可能性が高いです。
ただし、攻められている側の犬が甲高い声で「キャン!」という鳴き声を出したときに、攻めている側の犬の行動が止まった場合は、遊びの範疇だと考えられます。
プレイバウの有無
犬が頭を下げて前足を地面につけてお尻を高く上げているポーズは、プレイバウと呼ばれる相手を遊びに誘うサインです。このプレイバウを見せながらじゃれ合っている場合は、多少激しくても遊びの範疇だと判断して良いでしょう。
また、片方が休憩したら相手も休憩をする場合は遊んでいます。しかし片方がやめてももう片方がやめない、さらには飼い主さんが止めても興奮し続けてやめないといった場合は、喧嘩モードに入っていると考えられます。
こんな場合はやめさせましょう
遊んでいる犬たちに下記のような様子が見られた場合は、かなり危険な状態に入りつつありますので、すぐに仲裁に入ってお互いを引き離してください。
- 降参のサインを出したり逃げようとしているのに、もう一方が攻撃をやめない
- どちらか一方でも、怪我をしたり毛が抜けたりしている
- 噛まれている犬が「キャン!」と悲鳴をあげているのに攻撃をやめない
- 周囲にいる無関係の犬や人を巻き込みそうな状況になっている
喧嘩をやめさせるときに注意したいのは、これ以上刺激を与えて犬たちの興奮レベルを上げないことです。そのためには、飼い主さんが落ち着いて、ヒステリックな反応をしないことが大切です。
また、犬の攻撃対象が止めに入った飼い主さんに向かうことがありますので、無理やり首輪を掴んで引っ張ろうとしたり、噛み付いている口を力づくでこじ開けようとしたりするのはやめましょう。
興奮している犬を落ち着かせるためには、犬の注意をそらせるような大きな音を立てたり、顔に水をかけたり、飼い主さんの上着やタオルなどを攻撃している側の犬の頭に被せて視界を遮るといった方法が、役に立つでしょう。
まとめ
ドッグランなどで犬を遊ばせている間、他の飼い主さんとの会話に夢中になり、愛犬から目を離してしまう飼い主さんを見かけることがあります。しかし、遊んでいる愛犬から目を離すのはおすすめできません。
会話をしながらでも、意識は常に愛犬に向けておきましょう。そして、喧嘩モードに入りそうになったら一旦遊びを中断させて、クールダウンさせましょう。
また興奮した愛犬を落ち着かせることができるように、日頃から「フセ」「オイデ」などの基本的なコマンドに従えるように、トレーニングをしておくことも大切です。
備えあれば憂いなしの状態で愛犬を他の犬たちと遊ばせることで、心身ともに健全な犬に育つようにサポートしてあげましょう。