犬の学習能力
犬には、生まれながらに「自分にとって一番都合の良いことを行う」という学習能力が備わっています。これは、犬のしつけにも応用されています。
犬がAという行動をすると、高い確率でXが起きたとします。すると、犬は「AをするとXが起きる」ことを関連付けて学びます。と同時に、Xが自分にとって都合が良いことであれば積極的にAを行うようになり、都合が悪いことであれば行わないようになります。
つまり、犬が飼い主さんにとって良いことをしたときに「嬉しいこと」が起き、困ることをしたときには「嬉しくないこと」が起きるようにすれば、「してほしいこと」や「やってはいけないこと」を教えられるのです。
ポイントは、行動の後すぐに結果が出ること(タイミング)と、結果が犬にとっていかに都合が良いこと(モチベーションを引き出せる)かという点です。しつけの際には、この学習能力を上手に活用することを考えましょう。
犬のしつけで難しいことトップ4
1.アイコンタクト
アイコンタクトで意思疎通が図れるようになると、飼い主さんに意識を集中させることができるため、愛犬を危険から守ったり、困った行動を抑制させる際に役立ちます。
- 難易度が高い理由
視線を合わせて見つめ合うことは、犬にとって「臨戦態勢」を意味するため、信頼関係がしっかりと築けていないと、視線を合わせるように教えるのは難しいです。
- 教え方のコツ
①愛犬の名前を呼びます
②すぐに指先を自分の目元に持っていきます
③愛犬と視線が合ったら、すぐに褒めてご褒美を与えます
上記の手順を繰り返して、視線が合うと褒めてもらえることを覚えてもらいます。
視線を誘導するために、最初は②の段階でおやつやおもちゃを見せても良いでしょう。ただし、おやつやおもちゃを目的にさせず、あくまでも「飼い主さんと視線を合わせると褒められる」と思わせるのがポイントです。
2.マテ
愛犬が飼い主さんの「マテ」の指示で落ち着いた状態を維持できるようになると、散歩中の飛び出しといった危険行為を止めたり、無駄吠え、甘噛み、興奮状態などから気持ちを切り替えさせたりすることができます。
- 難易度が高い理由
犬は楽しいことが好きで、テンションが上がってしまうとなかなかクールダウンできないため、「マテ」の指示で落ち着いた状態を維持させるのはかなり難しいです。
- 教え方のコツ
「マテ」の指示に従えた場合、褒めるまでのタイミングを数秒から始め、少しずつ延ばしていきます。「何秒ずつ」と決めず、愛犬の様子に合わせて延ばしていくのがポイントです。
マテができるようになったら、指示を出す時の位置も少しずつ遠ざかるようにして、離れた場所にいる飼い主さんを待っていられるようにしましょう。
3.散歩の歩き方
犬が好き勝手に歩こうとリードを引っ張ってしまう場合、飼い主さんはヘトヘトになって散歩どころではないかもしれません。特に大型犬を力の弱い飼い主さんが散歩させる場合は、愛犬の安全を守れなくなることもあります。
- 難易度が高い理由
犬は好奇心旺盛で、散歩中は家の中では受けられないようなさまざまな刺激に誘われるため、注意があちらこちらに飛んでしまいます。これは本能に基づいた行動なので、なかなか簡単には矯正できません。
- 教え方のコツ
散歩コースの中で好きに歩かせる場所と飼い主さんの歩調に合わせて歩かせる場所を決めます。例えば、人通りが少なく車が通らない公園内は好きに歩かせる場所、街中は歩調を合わせて歩かせる場所といった内容です。
街中では常にリードを短く持ち、上手に歩けたらご褒美をあげます。最初は数歩に1回から始め、集中してきたら頻度を落としていきます。褒めるタイミングは、リードを張らずに歩いている、意識を飼い主さんに向けている、飼い主さんの歩調に合わせているといった時です。
散歩コースの中に、好きに歩ける場所と歩調を合わせる場所を作り、メリハリをつけさせるのがポイントです。
4.トイレ
完全室内飼育が普及した現在は、トイレは散歩に出かける前に家でさせておくのが常識となっています。そのため、成犬の保護犬を迎え入れた場合でも、室内でのトイレトレーニングは基本のしつけとなりました。
- 難易度が高い理由
本来、犬は自分の寝床を汚したがらないため、トイレで排泄をさせることは、さほど難しいことではありません。しかし一度粗相をしてしまうと、何度も同じ場所に排泄するようになってしまうなど、トイレの場所を教えるためには労力が伴います。
- 教え方のコツ
トイレの場合、「失敗させないこと」が大切です。そのためには、排泄するタイミングを見極めてトイレに誘導することがポイントになります。
多くの場合、食事の後、起きた直後、遊んだ後などが排泄しやすいタイミングです。慣れないうちは、こういったタイミングでトイレに誘導してみましょう。
また、トイレを失敗しても決して叱らないことも大切です。
最良のしつけ方法は「遊び」
犬は、飼い主さんとの間に上下関係など求めていません。大切なのは、お互いに信頼できる関係性です。そのため、しつけの際に怒鳴ったり手をあげたりといった行為は、無意味であるばかりか、失敗の原因になってしまいます。
しつけは楽しく行うことが大切です。良い行動をするように誘導し、できたら褒めることを遊び感覚で繰り返すことが、最良のしつけ方法になります。
まとめ
犬を迎え入れたら、その日から犬へのしつけが始まります。独学では自信がないという飼い主さんは、ぜひ愛犬と一緒に参加できるドッグスクールなどに参加し、現在の科学に基づいたトレーニング法を身につけてください。考え方とコツが分かれば、愛犬と一緒に楽しくしつけを進められるはずです。