犬が自ら「伏せ」をする理由
愛犬が突然、なんの指示もなく「伏せ」の姿勢をすることを目にしたことはないでしょうか。
実はこの姿勢には、さまざまな心理が隠されているようです。
そこで今回は、犬が自ら「伏せ」をする理由について解説いたします。
1.食べ物が欲しい
犬は食べ物が欲しいとき、指示がなくても伏せをすることがあります。人間の食事中に食卓近くに来てこの姿勢をしてくる犬もいるようです。
ごはんやおやつの前に「お座り」や「伏せ」をする習慣がある犬は多いので、これはよく見られる行動のひとつです。犬の心理としては(良い子にしてるんだからちょうだい!)というところなのでしょう。
とはいえ、人間の食べ物には犬にとっては毒になるものがあったりするので原則与えない方が賢明ですし、おやつの催促であっても肥満を避けるためにも一日の総カロリーを考慮して与えるなど、配慮が必要です。
2.敵意がないことを示したい
犬は「あなたと争うつもりはない」という気持ちを示すときに「伏せ」をすることがあります。
たとえば、散歩中に興奮した犬に出くわしたとき、礼儀正しい犬はこのような行動をとります。つまり「争うつもりはないから落ち着いて」という意味です。これは犬の「カーミングシグナル」と呼ばれるサインのひとつです。
また、飼い主に叱られたときにも同様に伏せをすることがあります。犬にとって伏せとは服従のサインでもあるため「もう怒らないで」という心理であることがわかります。
3.自分を落ち着かせたい
犬が「伏せ」をしているとき、相手を落ちつかせるだけでなく、自分を落ち着かせたいときにもその姿勢は見られます。
たとえば、美味しそうな食べ物が出てきたとき、大好きな人が来たとき、犬は尻尾をブンブン振って喜びます。
大興奮した結果、ここで対象に飛びつく犬も多いですが、自ら伏せをする犬もいます。その場合、自分で冷静になろうとしているということなので、とても賢い犬といえるでしょう。
4.遊びに誘っている
犬は相手を遊びに誘うとき、「プレイバウ」と呼ばれる「伏せ」に似たポーズをとります。上半身は地面に伏せた状態でおしりの方は上がっているのが特徴です。
伏せに似た状態から飛び跳ね、前足を左右に動かすこともあります。犬にも人にも見せることがあり、トラブルが起きなさそうであればそのまま遊ばせてあげましょう。
5.疲れたている、体調不良
散歩やお出かけの途中で、犬は疲れると地面に伏せて休むことがあります。近年は夏の暑さが異常で、あまり歩いていなくてもハアハアと荒い呼吸をしながら休む犬はよく見られます。
また疲れ以外にも、お腹が痛いときに犬は伏せをして起き上がらないことがあります。これは「祈りのポーズ」と呼ばれ、暑さ寒さ関係なしに見られます。
犬の呼吸が荒い、体を触ると嫌がる、というような異変が見られたら、まずはかかりつけの動物病院へ連れていってください。
6.そっちへ行きたくない
散歩中、疲れや体調不良がなくても、犬は突然「伏せ」をすることがあります。
散歩コースで嫌な経験をしたことがあると「そっちへ行きたくない」と抵抗するときにしている姿は想像がつきますよね。
犬にとっての嫌な経験とは、怖い犬や人に会った、飼い主に叱られた、地震や雷が起きた、工事車両に遭遇したなど様々です。
犬は一度でも嫌な経験をすると、その対象物に似たものを嫌いになる場合もありますが、その経験をした場所そのものを嫌いになる場合もあります。
犬にとって「伏せ」は無防備な状態
犬の寝姿を見ると、「伏せ」が楽な姿勢だとわかります。
たとえば犬が寝ている姿を見ると、ドーナツのように丸くなっている姿のほかに、伏せから横向きになってお腹が少し見えた状態で寝ていることが多いですよね。
しかしこれは、無防備な状態でもあります。体が低い位置にあると、外敵に襲われたら逃げようがありません。そのため、犬は不安なときや警戒している相手の前では伏せをしません。
また、「お手」や「お座り」は覚えても、なぜか「伏せ」をあまりしたがらないという犬はいるでしょう。また、伏せをしても、お腹を浮かしてきちんとやらない犬もいます。
この場合、犬が反抗している、相手に気を許していない、知らない場所だから無防備な状態になりたくない、などの理由が考えられます。
つまり、そのような犬が他の場所や他の人の前できちんと「伏せ」をしたら、やっと心を許せる相手の前で安心できる場所にきた、という解釈ができるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、犬が自ら「伏せ」をする理由について解説しました。
人間からすると、「伏せ」は基本的なコマンドのひとつでしかありませんが、犬にとっては様々な意味を持つサインです。そのため、指示もだされていないのに自ら「伏せ」をする場合には、犬なりの大事な理由が存在しているのです。
愛犬との信頼関係をさらに確固たるものにするためにも、愛犬が「伏せ」をしているときの理由を常に正しくキャッチして、すみやかに適切な対応をしてあげたいですね。