犬もひとりになりたい時がある
犬の祖先は人と一緒に暮らし始める前、獲物を狩るだけではなく、天敵から自分や群れの仲間の身を守る必要がありました。そのため、洞穴などの狭い場所や、自分たちで掘った狭い穴の中などに身を隠して、体を休めていたと考えられています。
現代の犬たちは、狩りをする必要も天敵から身を守る必要もなくなりました。親のように世話をし、守ってくれる飼い主さんという存在を得たからです。それでも感情豊かな犬には、ひとりになって落ち着ける時間が必要なのは、人と同じです。
身近に天敵がいるわけではない現代の犬であっても、狭い空間が落ち着ける場所であることは、その行動からも明らかです。そこで今回は、犬が狭い場所を好む理由やそこに隠れる心理、また隠れている時に注意すべきポイントなどを解説します。
犬が狭い場所を好む理由と隠れたがる心理
1.本能
人も広い空間の中にぽつんと一人でいるよりも、壁などに身を寄せている方が落ち着けるという経験があるのではないでしょうか。動物には、体のどこかが何かに触れていることで安心するという本能が備わっているのかもしれません。
犬が狭い場所を好む最大の理由も、本能です。常に危険と隣り合わせという環境ではなくなった現代の犬たちにも、かつて体を休める時に確保した安全で狭い場所の記憶が、本能として受け継がれているのだと考えられています。
2.居心地が良い
犬は、三方や四方が囲まれた、体がピッタリと収まる程度の狭い空間にいると、特に安心できるようです。そのため、少し落ち着いてゆっくり休みたくなると、居心地の良いお気に入りの場所にスポッとはまり、気持ちよくお昼寝を楽しむ子も多いようです。
3.安心できる
体の調子があまりよくない時や、ケガなどの痛みを我慢している時、また出産を控えているメス犬などは、特に狭くて薄暗い場所に隠れて出てこなくなることがあります。自分ではどうにもならない体調不良や、その不安に耐えるためでしょう。
また、たとえ飼い主さんだとしても、自分が弱っていることを悟られないようにするためという意図もあるようです。
4.脅威の源から遠ざかりたい
突然の雷や花火大会の音、近所で行われている工事による大きな衝撃音などは、犬が最も警戒する音の代表です。これらの低くて大地を轟かすような音は、とてつもなく体の大きな外敵を想起させるようです。
これらの音が突然鳴り響くと、犬たちは瞬時に家具の隙間やソファの下など、狭くて囲まれた場所に逃げ込みます。周囲の視界が遮られていることで、脅威の源から遠ざかり、身を隠せているという安心感が得られるのかもしれません。
5.薄暗くて落ち着く
どんなに狭くても、煌々と明かりがともる眩しい場所では落ち着けないことが多いようです。愛犬が、ジャストサイズのケージに入っても落ち着かない場合は、ケージ全体をタオルやカバーで覆うことで、落ち着けることが多いです。
人と違い、犬は薄暗がりの少ない光量でも夜目が効きます。本来犬は薄明薄暮性といって、夜明け前の薄暗い時間帯に活動するため、明るい場所よりも薄暗い場所の方が落ち着くのでしょう。
愛犬が隠れているときに注意すべきポイント
どんなに愛犬を家の中で自由にさせている場合でも、愛犬が落ち着ける愛犬専用の薄暗くて狭い場所を、1つ以上用意してあげましょう。愛犬が、苦手な来客時や不意の雷などにも、自主的に対処して落ち着けるようになります。
ただし、安心できる場所が必ずしも安全な場所とは限りません。愛犬が自ら見つけた居心地の良い場所ではなく、飼い主さんが意図的に安全で落ち着ける場所を作ってあげることが大切です。
クレートやケージなどを上手に利用することで、お出かけやいざという時の避難にもスムーズに対応できるようになります。
注意したいのは、愛犬が狭い場所に隠れている理由を見極めることです。隠れていても、食事やトイレに自ら出てくる場合は、特に問題ありません。こもったままいつまで経っても出てこない場合は、病気やケガによる不快感や痛みを我慢している可能性があります。
中でぐったりしていないか、他の症状が現れていないかなどにも注意をし、動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
いくら犬が群れで暮らす動物だからといっても、常に仲間と一緒にいるのではなく、ひとりで落ち着いてゆっくりと過ごしたい時もあります。
特に体を休めたい時や脅威が迫っている時には、愛犬が落ち着ける環境が必要です。そんな時のために、物理的にも安全で、かつ愛犬が安心できる薄暗くて狭い場所を用意してあげましょう。