大型犬と短頭種は寿命が短い傾向
一般社団法人日本ペットフード協会が2023年に行った全国犬猫飼育実態調査によると、犬全体の平均寿命は14.62歳でした。2010年と比べると、0.75歳長生きになっています。
そしてサイズ別では、小型犬の平均寿命は14.29歳、中型・大型犬が13.86歳という結果になっています。
一般的に、大型犬は小型犬よりも寿命が短い傾向にあると言われています。その理由については「大型犬の成長スピードが小型犬よりも早いから」「体のサイズが大きいと臓器への負担が大きくなるから」「遺伝子の違い」など、様々な説があります。
そして最近のイギリスの研究では、大型犬だけでなく短頭種も平均寿命が短いことが分かりました。ただ、なぜ短頭種の平均寿命が短いのかについては、まだ解明に至っていません。
また、イギリスの約60万匹、150種の犬を対象にした研究結果であるため、イギリス以外の国の犬には当てはまらない可能性があるとのことです。しかし実際のところ、日本においても短頭種は寿命が短い傾向にあります。
長生きできない犬種は?
平均寿命が短い傾向にあるとされている大型犬と短頭種の中でも、特に平均寿命が短い6犬種をご紹介します。
1.ブルドッグ
強面の顔つきとは裏腹に、おおらかで優しい性格のブルドッグ。正式名称は「イングリッシュブルドッグ」です。
ブルドッグは元々「ブルベイティング」という雄牛(ブル)と、犬を戦わせる残忍な見世物に使われていた闘犬で、攻撃性に溢れ凶暴でした。
しかしブルベイティングが法律で禁止されたのを契機に、熱心なブリーダーたちの手によって改良が進められ、現在の体型と性格になりました。
見た目が強そうであるため体も丈夫な印象を受けますが、実は呼吸器疾患をはじめとする遺伝的疾患が多く、寿命は8〜10歳と短めです。
遺伝的疾患が多い理由は、ブルドッグの特徴であるつぶれた顔やたるんだ皮膚、ずんぐりした体型などを固定するために近親交配が行われ、遺伝子の多様性が低いからです。
2.フレンチブルドッグ
「バッドイヤー(コウモリ耳)」と呼ばれる大きな立ち耳が印象的なフレンチブルドッグは、社交的で遊び好きな甘えん坊ですが、興奮しやすい一面も持っています。
フレンチブルドッグの起源は諸説ありますが、19世紀のフランスでイングリッシュブルドッグを基礎に、パグやテリアを交配して作出されたという説が一般的です。
フレンチブルドッグの平均寿命は、10〜11歳でやや短めです。ブルドッグやフレンチブルドッグのように、頭蓋骨の長さに比べて鼻の長さが短い犬種、つまり「鼻ぺちゃ」の犬種を短頭種と言います。
短頭種は特徴的な上気道の構造上、呼吸器疾患や熱中症のリスクが高く、平均寿命が短い傾向にあります。
3.バーニーズマウンテンドッグ
スイス原産のバーニーズマウンテンドッグは、古代ローマ軍がスイス侵攻時に持ち込んだマスティフ系の犬と、スイス土着の犬との交配で誕生したと言われています。体高が58〜70cm、体重が40〜44kgの大型犬ですが、とても温厚で穏やかな性格をしています。
バーニーズマウンテンドッグの平均寿命は、6〜8歳と大型犬の中でも短いです。原産国のスイスでは「生後3年で若犬、そこから3年で良犬、そこから3年で老犬。それから先は神様からの贈り物」という諺があるほどです。
バーニーズマウンテンドッグが短命である要因として、遺伝的にがんの発症率が高いことと、胃拡張胃捻転症候群を起こしやすいことが挙げられます。
4.グレートデン
筋骨たくましいグレートデンは、非常に大きな犬で体高がオスで80cm以上、メスでも72cm以上あります。見た目は怖そうですが「優しい巨人」と言われるほど、穏やかで優しい性格をしています。
祖先犬はオールドイングリッシュマスティフと考えられており、かつてはドイツでイノシシ狩りに使われていました。
グレートデンの平均寿命は7〜10歳。短命である理由ははっきりとは分かっていませんが、胃拡張胃捻転症候群で命を落とすことが多いようです。
胃拡張胃捻転症候群とは、胃が空気やガスなどで拡張してねじれてしまい、臓器が壊疽したり、血流障害が起きたりする病気です。発症から数時間で死に至る可能性があるため、早急の処置が必要になります。
グレートデンは、拡張型心筋症の好発犬種であることも寿命に影響していると考えられます。
5.ロットワイラー
ロットワイラーは、古くから存在する犬種のひとつです。祖先犬は、古代ローマ軍が中央ヨーロッパに侵攻した際、家畜の追い立てや兵士の護衛として使われていました。
その後、ドイツで土着の犬と交配されて荷車引きなどにも使われました。現在は、警察犬や山岳救助犬などとして活躍しています。
「ロッティ」の愛称で親しまれているロットワイラーは、飼い主への忠誠心が厚く、優しい性格です。
ロットワイラーの平均寿命は8〜10歳と、一般的な大型犬の平均寿命よりも短めです。遺伝的に骨肉腫(骨のがん)を発症しやすいことが、寿命が短い要因になっているようです。また、胃拡張胃捻転症候群にも注意が必要な犬種です。
6.キャバリア
愛らしく、友好的で穏やかなキャバリアの祖先犬は、17世紀のイギリス国王チャールズ2世に愛されたキングチャールズスパニエルです。
キングチャールズスパニエルは、パグを手本に交配した結果、鼻が短くなり、昔の面影が失われつつありました。そんな中、かつての姿に戻そうという声が上がり、改良が重ねられて誕生したのがキャバリアで、正式名称は「キャバリアキングチャールズスパニエル」です。
キャバリアの平均寿命は9〜14歳で、小型犬の中ではやや短めです。平均寿命が短めな理由として、キャバリアが遺伝的に僧帽弁閉鎖不全症の発症率が高いことが挙げられます。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の僧帽弁が変性して閉じなくなり、心臓内で血液が逆流してしまう病気です。
まとめ
犬の寿命は、遺伝的な要因だけでなく、飼育環境や生活習慣の影響も大きく受けます。今回ご紹介した6つの犬種は、比較的寿命が短い傾向がありますが、適切な飼育環境やケア、健康管理によって、平均寿命よりも長生きさせることも可能です。
犬を長生きさせるためには、その犬種がかかりやすい病気について知り、定期的な検査を受けて、早期発見と治療に繋げることも大事です。