生息数減少が心配されるテキサスゴファーガメ
地球上ではさまざまな生物が絶滅に危機に瀕しており、生物多様性の存続が危ぶまれています。アメリカのテキサス州に多く生息していたテキサスゴファーガメもそのような種のひとつです。
かつては1ヘクタールあたり16頭だった生息数が、現在は1ヘクタールあたり0.25頭と推定され、個体数は約98%減少しているといいます。
生き物の生息数の回復のためには、その生き物を探すことがまず第一歩なのですが、テキサスゴファーガメはその数の少なさと分かりにくい行動のために見つけることがとても難しいそうです。
この問題を解決するため、テキサスA&M大学キングスビル校の野生生物研究所とオースティン州立大学の研究チームは、探知犬の利用について調査を行ない、その結果が発表されました。
探知犬、人間、発信機でカメの探知能力を比較
調査はまず対象となるエリアを整備することから始められました。テキサス州キングスビルの南約10kmの南テキサス平原生態系内に5ヘクタールの囲いを建設しました。
このエリアをテキサスゴファーガメの生息地として適したものにするため伐採や草刈りを行ない、ハニーメスキートの木が点在する草地が造成されました。
倒木や木の根元周辺の背の高い草地、古い動物の巣穴などはカメの避難場所として整備されました。フェンスはカメが金網に絡まったりしないように設計されており、後に移されるカメのソフトリリースエリアとしても利用されます。
この囲いの中には、周辺地域で捕獲されたテキサスゴファーガメ9頭が放されました。カメたちは捕獲後に甲長、甲幅、甲高、甲周、体重を測定、雌雄を判別して、発信機を装着されています。
カメたちには最低30日間の馴化期間が設けられ、その後に探知犬、人間、発信機による遠隔探索を行なう実験が開始されました。
総合的に推奨されるのは探知犬
実験は4週間にわたって毎週行われ、探知犬、人間、発信機による検出可能性が比較調査されました。
カメの居場所を特定するために必要な最短時間を基準とするため、発信機を使う人間と、発信機は使わずにあらかじめカメの位置を知らされた人間が、9頭すべてのカメを移動させるのに要した時間が記録されたといいます。
探知犬は12歳のラブラドールで、野生動物の居場所を探知特定する10年以上の経験があります。テキサスゴファーガメについても4ヶ月前から訓練を受けていました。
実験の結果、探知犬は発信機を利用した人間には及ばないものの、カメの居場所を知らされていない人間の探索者よりもはるかに良い成績を収めました。
実験では発信機を使った探索が効果的であるように見えましたが、実際の現場では発信機による探索は生き物の生死がわからないという欠点があります。
また発信機が生き物から外れてしまう場合もあり、総合的に評価するとテキサスゴファーガメを探知するために探知犬を推奨すると研究者は結論づけています。
まとめ
アメリカのテキサス州で生息数減少が心配されているテキサスゴファーガメの探知に、訓練を受けた探知犬を推奨するという研究結果をご紹介しました。
世界各地で絶滅危惧種の動植物を探知する探知犬の活躍が報告されており、今回また新しい報告が加わったことになります。
犬の福祉を確保しつつ、野生動植物の保護に犬の手を借りることができるならありがたいことですね。
《参考URL》
https://doi.org/10.3389/famrs.2024.1382591