犬の身体と認知の老化を遅らせる療法とは何だろう?
私たちが年齢を重ねるに伴って、身体的および認知的な衰えが出てくるのは自然なことです。一方でその衰えに対抗して、遅らせるための方法も数多く研究され発表されています。
人間の場合、身体的な活動と認知療法の両方を組み合わせた方法が、最も効果的であることがわかっているそうです。犬は人間と似ている点が多いため加齢の研究モデルとなることが多いのですが、シニア犬の身体と認知にも人間と同じ方法が有効なのでしょうか?
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームは、どのような種類の療法(セラピー)がシニア犬の心身のパフォーマンスを向上させるのかを調査し、その結果が発表されました。
3ヶ月間の理学療法、認知療法、両方の併用で効果を調査
研究に参加したのは72頭の家庭犬たち(7.68~14.54歳)でした。犬たちは事前にスクリーニングされ、神経学的な問題、深刻な運動能力の問題、視覚および聴覚障害がないことが確認されています。
犬たちは理学療法、認知療法、2つ両方の併用、療法を受けない、の4つのグループに分けられました。
全てのグループの犬が最初に行動テストと認知機能テストを受け、後の評価のためのベースラインとしました。(療法を受けないグループの犬はテストだけを2回受けました。)
理学療法では犬のバランス感覚、関節の柔軟性、持久力を改善することに焦点を当てた年齢に応じたフィットネスプログラムが組まれました。フィットネス器具を用いて筋力の強化や四肢のバランス調整が行われます。
認知療法では、集中力の向上、作業速度、嗅覚などに焦点を当て、クリッカートレーニング、フェッチ(持ってこい)トレーニング、知育玩具などが用いられ、併用療法に割り当てられた犬たちは、理学療法と認知療法のセッションを1週ずつ交互に受けました。
それぞれの療法は週1回のセッションを3ヶ月(12回)で、全てのプログラムを終えた時点で、犬たちは行動テストと認知テストを再度受け、療法前の結果との比較分析が行われたそうです。
犬と人間では療法の効果に少し違いがあった
研究チームが最も注目していたのは、人間の場合と同じように理学療法と認知療法を併用した方法が、犬にとってもより効果的であるかどうかということでした。結論から言えば、答えはNOで人間の場合とは少し違っていたといいます。
具体的には、理学療法と認知療法を併用した場合にのみ高い効果があったということはなく、どのタイプのセッションを受けた犬もポジティブな効果を示していました。
理学療法を受けた犬は、より友好的になり行動の柔軟性を示し、認知療法を受けた犬は新しいものへの探索心が増加していました。併用療法の犬では両方の傾向が観察されたそうです。
全ての療法は、犬が周囲の環境とより関わりを持つ傾向を強くしていました。8歳前後の比較的若い犬では改善の度合いが顕著で、最初のテストの成績が低い犬はセラピー後の改善がより明らかでした。
この調査結果は遊びを取り入れた週1回の療法を行なうだけでも、シニア犬の認知能力を向上させることを示しています。またこのような療法を早く始めるほど、その効果は強くなります。
まとめ
理学療法、認知療法、それらの併用のうち、シニア犬の認知機能により良い効果をあげるのはどれかを調査したところ、どのタイプであっても犬の行動や認知機能にポジティブな影響を与えることがわかったという結果をご紹介しました。
家庭ではフィットネス器具を用いた理学療法は難しい場合もありますが、クリッカートレーニングや知育玩具を用いた認知療法は取り入れやすいものですね。
正式な理学療法ではなくても、犬の体力に合った適切な運動は毎日行なうことができます。愛犬の認知機能を若々しく保つためにも、適切な運動や脳への刺激を意識していたいですね。
《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-024-01122-2