犬の「フードアグレッシブ」ってなに?
「フードアグレッシブ」という言葉をご存じでしょうか。
一般的に、ご飯をあげようとすると怒り出す、食事中に近寄られると攻撃をする、という行動を「フードアグレッシブ」と言います。普段は大人しい子でも食事を前にすると豹変してしまう場合を指します。
犬にとってご飯の時間は一日の中でもとくに楽しい時間かと思います。その楽しいはずの時間に怒り出したり攻撃的になってしまうのでは、犬自身にとっても飼い主にとってもお互いストレスを感じてしまいます。
まずはそうなってしまう原因を突き止め、場合によっては動物病院とも相談しながら早めに対策されることをおすすめします。
犬が「フードアグレッシブ」になってしまう原因
犬たちが食事をとられまいとする行動はある意味本能的な行動です。どのような犬であれ、食事中に近寄られたりすれば多少は警戒した素振りを見せることでしょう。
しかし、食への執着がほかの犬よりも強く、飼い主や人間に向かって激しく怒ったり攻撃したりするようになっては問題です。
フードアグレッシブの状態になってしまう原因には、大きく分けると以下のように三つほどあると考えられています。
- 幼齢時から食事の際の競争率が高かった場合
- 空腹時にしつけとして長時間の「マテ」をさせられている場合
- 極端に警戒心が強い場合
子犬の頃は兄弟に囲まれていて、食べ終わった子から隣の食器に顔を突っ込んで横取りしてしまう姿がよく見られます。いわゆる競争率が高い状態になっているということです。
子犬たちは「いつ自分の分がとられるか分からない」と警戒し、早食い(丸のみ)することを覚えますし、近づいてくる者を排除することを学習します。
また、空腹時は人間も「早く食べたい」と思うものです。犬たちも同様ですし、食事が入っている皿を見せびらかされてずっと「マテ」をさせられていたらどうでしょうか。
「早く食べたい」「なんでくれないんだ」と、理不尽な気持ちになることでしょう。これを長く続けると、食事そのものへの執着が非常に強くなるばかりか、与えられないことへの怒りで攻撃的になってしまいます。
愛犬が「フードアグレッシブ」になった場合の対処法
では、愛犬が「フードアグレッシブ」になってしまったら、飼い主としてどのように対処すれば良いのでしょうか。
「人間はご飯を奪い取らない」と覚えてもらう
動物にとって、食事の時間は本当に幸せなものです。犬も食事の時間は一人幸せに味わいたいものなので、食事中は無理に近づいたり触ったりしないようにしましょう。
これは、犬に「人間はご飯を奪い取らない」と覚えてもらう大切なポイントです。
自分のご飯は誰にも「奪われない」と理解できると、丸飲みなどの早食いトラブルも少し落ち着くでしょう。
「人間はご飯をくれる」と覚えてもらう
食事への執着強く、特に食器に対して強く執着をしている場合、人間の手から直接フードを与えてみる練習をしてみます。
一回分の食事量を、何回かに分けて手の上にのせて与えます。人間の手がご飯を取るものではなく、ご飯をくれるものだと覚えてもらうのです。
また、食事の際に近寄ると唸ったり威嚇したりする子の場合は、通りすがりにおやつをひとかけら落として知らんぷりをして通り過ぎてみましょう。
人間が自分の近くを通ったら、なぜかおいしいものが出てきた、ということを何回かで学習すると、人間が近寄ってくることを許容するようになります。
このように、愛犬に「人間はおいしいものをくれる相手」と学習してもらうのです。
「マテ」をやめる
犬の場合、一日の食事回数は朝晩二回である方も多いのではないでしょうか。そのため、朝の食事時も夕方の食事時でも、きっと犬は空腹で大変な気持ちになっているでしょう。
そんなときに、食事を前に「マテ」をさせられるのは、犬にとってとても悲しいことです。その結果、「マテ」がつらくてフードアグレッシブになることもあります。
このような場合は、まずは食事を利用した「マテ」のしつけをやめることをお勧めします。
その代わり、「スワレ」や「マテ」といった基本的なしつけは、おやつを用いた普通の時間に行うのです。そうすることで、犬は空腹の苛立ちでアグレッシブになることもなく、「人の指示をきいたらおいしいものがもらえた!」という記憶で、しつけの時間自体がうれしい時間になりますよね。
なお、警戒心が強かったり攻撃性が高い場合は、専門家に相談することも必要です。
まとめ
子犬を引き取った場合は社会化期でもあることから、食事時のルールをしっかり決めて行動すれば、そこまで強くフードアグレッシブの症状が出ることはないでしょう。
しかし、多頭飼育であったり、保護犬などで警戒心が強い子の場合であったりすると、食への執着が強くなる傾向があります。
せっかくご飯をあげようとしたときに愛犬から唸られたり吠えられたりすると、びっくりしてしまうものです。
しかし、飼い主は犬に対して「怖がっている」そぶりを見せてはいけません。人が怖がると、その様子を見て犬も余計に怖がってしまい、ますます警戒心を強めてしまいます。たとえ吠えられても、落ち着いて冷静な態度で犬に接するようにしましょう。
なお、上記のような対策をしても愛犬の「フードアグレッシブ」の状態がいつまでも改善しない場合は、早めに専門家に相談してくださいね。