犬は家族を順位付けしているのか?
犬は元々、オオカミなど群れ社会で生きていた動物を祖先に持っていたと考えられています。そうした動物は、野生を生き抜くために群れの中でリーダーを立てて、主従関係を作ることを選択していました。
そのような遺伝子を引き継いでいる犬にも、同じような習性を持つとされ、家族(群れ)の中でも主従関係を作ったり順位付けをしたりしていると考えられていました。そのため、しつけにおいても「飼い主が犬のリーダーになるべき」「リーダーにならなければ犬が言うことを聞かない」という考えが定着していました。
しかし徐々に、欧米を中心にリーダー論に疑問が投げかけられるようになり、近年では日本でも以前のようなリーダー論に基づいたしつけが疑問視されることも増えてきました。
その中で、「犬は人間の家族に対して順位付けをしているわけではないのではないか?」とも考えられるようになったのです。確かに犬は家族の中で人によって態度を変えることがありますが、それは「順位」ではなく「自分自身の損得」を考えての行動だとされています。
犬は自分にとって「いいこと」「嫌なこと」といった損得を重視して行動すると考えられています。優しいお父さんなどへの態度を見て、「下に見ている」「バカにしている」といわれることもありましたが、決してそうではなく、「わがままを言っても許してくれる存在」として甘えているだけなのです。
適切ではない上下関係の作り方
犬のリーダー論がトレーニングの基本理論に大きな影響を与えていたとき、様々な方法で「犬に飼い主がリーダーだと教え込む必要がある」とされていました。
そのために、犬同士の行動を真似して、仰向けにして押さえつけたり、マズルを掴んだり、肩に手をかけたりといった接し方をすることが推奨されていたこともあります。また、「飼い主さんが必ず先にご飯を食べる」「ドアは飼い主さんが先に出る」「犬に前を歩かせてはいけない」「ベッドやソファに乗せてはいけない」などのルールを徹底することも求められていました。
しかし、最近ではこのような行動を取っても実際にはあまり意味がないと考えられています。
ドアから先に出さないことや道で前を歩かせないことは、犬の安全を守るために役立つ行動です。また、ベッドで一緒に寝ないことは衛生面を考慮すると必要な場合もあるでしょう。
ただし、これらをすることでしつけがうまく行くかは疑問が残るところなので、必要以上に意識しすぎる必要はないでしょう。
愛犬にとって「信頼できる飼い主」を目指そう
犬の家族に対する順位付けやリーダー論については、少しずつ見直されてきています。とはいえ、犬にとって「リーダー的存在」が必要ないというわけではありません。
以前は飼い主さんが、犬にとって「絶対的な強い立場」になることが必要だと考えられていました。しかし、そのような強権的なリーダーではなく、信頼できるリーダーが犬にとって必要だとされているのです。
家族でありパートナーでもある飼い主さんは、対等な関係でありながら、犬が不安を感じたり困ったりしたときは頼りになる存在であることが理想です。
そのためには、コミュニケーションをこまめに取って、犬の気持ちや意志をしっかりと理解することが大切です。それを尊重したり、飼い主さんの意向とすり合わせたりしながら良好な関係を築いていくことを意識してください。
まとめ
愛犬の家族に対する態度を見て、「子どもを下に見ている」「自分が一番偉いと思っている」などを思っている飼い主さんは少なくありません。
確かに、犬は群れの中で主従関係を築いていた動物の遺伝子を引き継いでいますが、現代の家庭において必ずしも同じように順位付けをしているわけではありません。
人によって犬の態度が変わるのは、わがままを聞いてくれる人や甘えさせてくれる人、頼りになる人など自分にとってどういった存在であるかが違うからです。
犬に必要なのは、普段は優しく楽しいパートナーでありながら、いざというときは頼りになる存在だと思います。
愛犬からの信頼を得られるように、ぜひしつけや接し方を見直してみてくださいね。