犬が「ゴロスリ」する心理
愛犬が、突然床や地面の上にゴロリと転がり、仰向けになって背中を床や地面にスリスリとこすりつける姿を見たことはありませんか。ゴロリとなってスリスリするので、「ゴロスリ」とも呼ばれる犬の不思議な行動のひとつです。
床であれば良いですが、何があるかわからない地面の上でされてしまうと、心配になる飼い主さんも多いことでしょう。しかもゴロスリは、私たちにとっては「なぜそんなことを?」としか思えないような行動です。
今回は、犬がなぜ突然ゴロスリを始めるのか、その心理や理由についてご紹介します。
1.降参の意思表示
子犬たちは、よく組んず解れつしながらじゃれ合います。よく見ていると、どちらかが仰向けになってお腹を見せるのが、じゃれ合いをやめるタイミングのようです。
このように、仰向けになってお腹を見せるという行動には、「降参!もうやめて!」という意味があります。
もし愛犬が飼い主さんから叱られた後に床でゴロスリするのであれば、それは飼い主さんに対して「降参!お願いだからもう叱らないで!」と言っているサインかもしれません。
2.安心してリラックスしている
体の中で、唯一骨で覆われていない部分がお腹です。降参のサインとしてお腹を見せるのは、お腹は犬にとってのウィークポイントだからです。犬が飼い主さんにゴロスリをして弱点であるお腹を見せるということは、飼い主さんを信頼しているというサインにもなります。
犬は、信頼している飼い主さんを目の前にしてとても安心し、リラックスしているときによくゴロスリを見せます。また、散歩や食事の後などの、満足度が高いときにもゴロスリをすることがあります。
3.甘えて遊びに誘っている
以前、ゴロスリを見た飼い主さんから「あら、かわいい!」などと声をかけられ、なでられた経験を持っている犬は、「かまわれたい、一緒に遊びたい」というサインとして、飼い主さんの目の前でゴロスリをするようになることがあります。
特にゴロスリをしながら体をくねらせている場合は、この気持ちが強いときだと考えられています。
4.自分のニオイを消し去りたい
散歩中やドッグランなど、外にいるときに地面でゴロスリをする場合は、自分の体に別のニオイをつけることで、自分のニオイを消し去りたいという本能的な欲求から行っていることがあります。
これは、外で生活していたときに自分の存在を獲物や敵に知られないために行っていた、犬の本能により引き出された行動です。現在の飼い犬たちは、自分の気配を悟られないようにする必要はありません。しかし、習性としてこの行動が残っているのだろうと考えられています。
また、床の上に置かれている飼い主さんが脱ぎ捨てた衣類などの上でゴロスリをする場合は、大好きな飼い主さんのニオイを自分の体につけたいという欲求から出た行動の可能性もあります。
その原因として、自分の体に付いてしまったシャンプーや香水などのニオイを取りたいからという場合もあります。愛犬には、なるべく人工的なニオイがするものを使わない方が良いでしょう。
5.体に違和感を感じている
体に感じている違和感を消したくて、犬がゴロスリをしている場合があります。
特に背中は自分の足が届かない部分です。皮膚炎の発症やノミやダニの寄生が原因で背中にかゆみが生じている場合は、それを解消するためにゴロスリをして背中を掻いているのかもしれません。
ゴロスリはやめさせたほうが良い?
ゴロスリをすること自体に何か害があるわけではないので、何がなんでもやめさせなければならないということはないでしょう。
しかし、外でのゴロスリは、地面に何が落ちているかわからないため、衛生上気になる飼い主さんもいるかもしれません。その場合は、愛犬の気を逸らせるなどの工夫を凝らすことで、地面にゴロリと転がることを防ぎましょう。
「何度も繰り返して頻繁に行う」「一旦始めるとなかなかやめない」などの場合は、皮膚炎や寄生虫などによるかゆみが原因である場合も考えられます。できるだけ早く動物病院に行き、診てもらうことをおすすめします。
まとめ
私たち人間の感覚では、一見(なぜこんなことを?)と思うような犬の行動にも、犬なりの理由があります。
犬には高度な学習能力があるため、犬本来の行動を見た飼い主さんの過去の反応を覚えています。そして「また遊んでもらいたい」など、その飼い主さんと犬の間だけで成り立つコミュニケーション手段として、その行動を繰り返すことがあります。
この犬の学習能力を理解できれば、愛犬との絆をさらに深めることができるでしょう。