ニオイを嗅ぐのは情報収集のため
犬も人と同じように、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」という五感を使って周囲の情報を把握します。
ただし、犬と人とでは五感の感度や使い方が異なる部分があります。大きな違いは、人の主となる情報源が視覚と言葉であるのに対し、犬は嗅覚だということでしょう。
周囲の状況、対面している相手の情報を、私たちは主に見た目と会話から得ようとします。そして、それを補うために嗅覚、触覚、味覚などを使います。しかし犬たちは、主に嗅覚と聴覚を使い、それを補うために視覚や触覚、味覚などを使います。
つまり、犬が熱心にニオイを嗅いでいる場合、その理由はニオイから相手の情報を得て、どんな人物なのかを把握しようとしているということです。見知らぬ犬同士が出会うとお互いのニオイを嗅ぎあうのは、お互いを知ろうとしている挨拶行動で、人にも同じ行動をとるのです。
犬が帰宅した飼い主のニオイを嗅ぐ心理
上記で説明した通り、情報収集のために、犬は相手のニオイを嗅ぐ行動をします。
しかし、犬は帰宅した飼い主さんのニオイも熱心に嗅ぎます。よく知っているはずの飼い主さんのニオイを嗅ぐのは、一体どのような心理からなのでしょうか。
1.飼い主さんであることを確認したい
まずは、玄関を開けて入ってきた人物が何者なのかを知ろうとしてニオイを嗅いでいます。
玄関を開けるまでに聞こえている音から、犬は「飼い主さんが帰ってきた!」と思っていますが、それをニオイで確かめたいのです。
2.どこに行ってきたのかを知りたい
帰宅したのが明らかに飼い主さんだということが分かったら、いよいよ情報収集の開始です。
例えば「どこに行ってきたのか」を知ろうとします。飼い主さんの体や洋服についているさまざまなニオイから、いつものオフィスに行ってきたのか、見知らぬ場所に行ってきたのかなどを探ります。
3.何をしてきたのかを知りたい
飼い主さんのニオイから、「飼い主さんが何をしてきたのか」も知ろうとします。
機械油のニオイ、タバコのニオイ、お酒のニオイなどから、1日中オフィスで事務作業をしていたのか、工場で働いていたのか、退社後に知人と飲みに行っていたのかなどの行動をチェックしているのです。
4.誰と会ってきたのかを知りたい
誰と一緒に仕事をしたり飲み食いしたりしていたのかも、犬はニオイから分かってしまいます。
会ってきた人が付けていた香水や体臭などから、「今日は知らない人にあってきたみたいだな」などということが分かってしまうのです。
5.何を食べてきたのかを知りたい
特に口の周りのニオイを熱心に嗅いでいる場合は、何か美味しそうなニオイがしているのかもしれません。
どんなご馳走を食べてきたのかと、興味津々にニオイを嗅いでいるのでしょう。
6.いつもと違うことに気付き確認している
犬は、汗のかき方や分泌されているホルモンの違いなども嗅覚で察知することができため、ニオイから体調不良や感情も把握できると言われています。
もしかすると、飼い主さんの体調不良や精神的なダメージに気付き、気になって熱心に確認しているのかもしれません。
特に病院から帰宅したときなどは、薬や消毒薬のニオイなどがするため、いつも以上に熱心にニオイを嗅がれるかもしれません。
犬が飼い主のニオイを嗅ぐときの対応の仕方
犬がニオイを嗅ぐのは情報収集のためで、必要な行動です。そのためやめさせることは難しいと考える飼い主さんもおられるでしょう。
ただし、人が嫌がるようなお尻や股間などのニオイを嗅がせたり、ニオイを嗅いだ後に口の周りを舐めさせたりしたくないと考える飼い主さんもおられるでしょう。股間のニオイを嗅がれれば相手の方は恥ずかしいと思うでしょうし、口の周りを舐められるのは衛生的に好ましいことではないからです。
この場合、「飼い主さんに対してはやっても良いけれども、他の人に対してやってはいけない」と教えるのはとても難しいです。他人にさせたくないことは、飼い主さんにもやらせないように普段からしつけておくのが良いでしょう。
まとめ
愛犬は、人とは異なり見た目や会話からよりも、ニオイから多くの情報を得ます。
帰宅した飼い主さんのニオイを熱心に嗅ぐのは、「どこに行ってきたの?」「何をしてきたの?」「誰に会ってきたの?」「何か楽しいことはあった?」「何か美味しいものは食べた?」などと質問攻めにあっているのと同じです。
愛犬に嗅がせたくない部位以外のニオイを嗅いでいる場合は、愛犬とのコミュニケーションだと考え受け入れてあげましょう。愛
犬が飼い主さんのことを信頼し、飼い主さんのニオイを嗅ぐと落ち着けるようになることで、より深い交流が図れるようになることでしょう。