誤解されやすい犬のボディランゲージ
犬は言葉を話せないため、犬のしぐさや行動、表情などから愛犬の気持ちを読み取ろうとして、多くの飼い主さんが犬のボディランゲージを学んでいます。そして、犬のボディランゲージに関する情報は、書籍、雑誌、ネット上などで広く手に入れることができます。
中でも良く知られているのが、「犬は喜んでいるときにしっぽを振る」というものではないでしょうか。犬と一緒に暮らしたことのない方でも、犬好きの方であれば必ず知っていると言っても過言ではないほど有名なボディランゲージのひとつでしょう。
ただし、このしぐさは多少誤解されている面があります。
というのも、しっぽを振るのは喜んでいるときだけとは限らないからです。「喜び」という限定的な感情ではなく、感情の揺れ幅が大きく興奮していることを示すサインだと考える方が、愛犬の気持ちを読み取りやすく、勘違いによる不幸な咬傷事故などを防ぐことができます。
今回は、犬がしっぽを振りながら飼い主さんに怒っているときの犬の心理や、気持ちを察知する方法を考えてみたいと思います。
犬が「しっぽを振りながら怒る」心理
犬が怒っているときのわかりやすいサインが唸り声です。もちろん、犬同士でじゃれ合っていて、あまりにも楽しくて思わず唸り声が漏れてしまうこともありますが、大抵の場合は怒っていることを示すサインです。
そこでここからは、犬がしっぽを振りながら唸って怒っているときの心理について解説します。
1.嫌なことはしないでほしい
ブラッシングや歯磨き、爪切り、シャンプーなど、犬によってそれぞれに苦手なお手入れがあると思います。飼い主さんはそれを理解してはいるものの、嫌いだからとお手入れをしないわけにはいきません。なだめすかしながらもお手入れをするわけです。
そんなとき、愛犬が上目遣いでしっぽを振っていたら、それは「もうやめて!」というサインであることが多いです。
このとき、小さい声で唸っていることもあるでしょう。この場合、爪切りは1日1本ずつにするなど、可能なものは段階的に行って、手早く確実に実施することで慣らしていきましょう。
2.縄張りや家族を守る!
玄関のチャイムが鳴ったとき、来客が玄関を開けたとき、散歩の途中で見知らぬ人や犬などとすれ違ったときなどに、激しくしっぽを振りながら吠えたり唸ったりする場合は、自分の縄張りや家族を守ろうとしている可能性が高いです。
こういう場合、犬は非常に攻撃性が高くなっています。どんなに信頼されている飼い主さんでも、下手に手を出すと噛まれてしまう場合があるので注意が必要です。
3.自分のものを盗らないで!
犬は縄張りや家族を大切にしますが、物に対する執着心もかなり強いことが知られています。
たとえば、食事中に手をボウルに近づけたり、遊んでいるおもちゃを取ろうとすると、唸り声を上げたり噛まれそうになったりすることがあるのではないでしょうか。興奮度が高ければ高いほど、しっぽを上に向けて激しく振っています。
この場合も、噛まれてしまうことがありますので注意が必要です。普段の遊びの中で、決まった指示語により、咥えているおもちゃを口から離すようにトレーニングしておくことをおすすめします。
ポジティブな感情とネガティブな感情を見分けるポイント
犬がしっぽを振るのは、基本的に興奮しているときです。喜んでいるときや楽しくて仕方がないとき、不快なとき、警戒しているとき、威嚇しているときなど、しっぽを振るのはさまざまな感情のサインなのです。では、何をポイントに感情を見分ければよいのでしょうか。
まずは、犬の全身の緊張状態を確認しましょう。
こわばって力が入っている場合はネガティブな感情が、筋肉が弛緩してリラックスしている場合はポジティブな感情が湧き上がっていると考えてよいでしょう。
そのため、ポジティブなときはしっぽが下を向き振られる速度もゆっくりとしていることが多いです。ただし、興奮の度合いが激しければ、嬉しくてもしっぽを高く上げてブンブンと激しく振ります。この場合は、たとえポジティブでも少し落ち着かせた方が良いです。
表情も大切です。歯茎をむき出したり鼻にシワを寄せたりしている険しい表情の場合は、ネガティブな感情が強く、人の笑顔のように目が細められて口角が上がっているような表情の場合はポジティブな感情が強い場合が多いです。
恐怖を感じているときは体重の重心が後ろの方に偏り、全体的に低い姿勢になります。しっぽも低い位置で振られます。
また、イタリアの大学研究チームの調査では、『犬は、ポジティブな感情が刺激されたときはしっぽを自分の身体の右側に振り、ネガティブな場合は左側に振る傾向がある』とされています。
あくまでも「傾向がある」ということなので、左側に振っているので必ずネガティブなどと断定できるわけではありませんが、参考になるでしょう。
まとめ
愛犬がしっぽを振っていると、つい機嫌が良いと考えてしまいがちです。
たしかに喜んでいるときにもしっぽを振りますが、いくら気持ちがポジティブでも、興奮しすぎているときには注意が必要です。興奮しすぎた犬は、飼い主さんの言葉を聞けなくなり、事故に繋がりやすくなるからです。
特にネガティブな気持ちが高ぶっている場合は、思わず加害者になってしまうことがあります。
愛犬の様子から気持ちを読み取り、「マテ」「オスワリ」「ハナセ」など、指示語で愛犬を落ち着かせられるように、日頃からトレーニングしておくことが大切です。