犬の心臓病の診断に、ある種の血液検査は不十分であるという研究結果

犬の心臓病の診断に、ある種の血液検査は不十分であるという研究結果

犬の血液中のタウリンとカルニチンの濃度と筋肉中の両物質の濃度との関連を調査した結果が発表されました。この調査からどのようなことがわかったのでしょうか。

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犬の体内のタウリンやカルニチンについての新しい研究

聴診器を当てられている黒い犬

犬の心臓に関わる物質として、タウリンやカルニチンの名前を聞いたことがある人は多いと思います。

タウリンは、肉類などに含まれるアミノ酸を利用して生体内で合成されるアミノ酸様物質で、カルニチンは、同じようにアミノ酸を利用して体内で合成されるビタミン様物質です。どちらも生体内で血液や筋肉に含まれており、心臓の健康に大きな役割を果たしています。

しかし、犬において血中タウリンと血中カルニチンの濃度が、骨格筋および心筋内の両物質の濃度とどのように相関しているのか、また食事に影響されるのかといったことはこれまで知られていませんでした。

このたびアメリカのBSMパートナーズ社の動物栄養学者と獣医学者、ミズーリ大学獣医ヘルスセンターの心臓病学者のチームがこれらについての調査を行ない、その結果が発表されました。

4つの違うタイプのフードを食べた犬のタウリンとカルニチンを測定

血液サンプルを採取されている犬

この調査は体重8〜14kgのビーグル32頭と、体重23〜36kgのミックス種の猟犬33頭の合計65頭を対象として行われました。

犬たちは4つのグループに分けられて、それぞれ違う4種類のフードを与えられました。4種類のフードとは、高動物性タンパク質で穀物使用、高動物性タンパク質で穀物不使用、低動物性タンパク質で穀物使用、低動物性タンパク質で穀物不使用というものです。

全てのフードの総合栄養組成は同じになるように調整されています。給餌期間は180日で、30日ごとに血液サンプルが採取されました。

研究開始時と180日の給餌期間終了後には、犬たちは全身麻酔下で太ももから1グラムの骨格筋サンプルを採取。さらに猟犬グループでは、全身麻酔下で心内膜の生検(心筋の一部をサンプルとして最大5mgを採取)も行なわれました。ビーグルは体が小さくリスクが高いため、心内膜生検は実施されなかったそうです。

犬たちはサンプル採取の後、獣医学スタッフによって経過観察されケアを受けたとのことです。

血中のタウリンやカルニチンは心臓病の指標として限界がある

聴診器を当てられているビーグル

採取された血液サンプルからは、全血中のタウリンと血漿中のタウリン、血漿中のカルニチンの濃度が測定されました。血漿とは、赤血球や白血球や血小板など血液の成分以外の成分を指します。

骨格筋と心内膜に含まれるタウリンとカルニチン濃度も測定され、血液中のタウリンやカルニチンとの相関が分析されたのですが、全血タウリン、血漿タウリン、血漿カルニチンと骨格筋と心内膜のタウリンおよびカルニチンとの相関は、低い相関〜中程度の相関という結果が示されました。

犬の心臓病の診断には全血タウリンや血漿タウリンが用いられるのですが、今回の調査結果について研究者は、血液中のタウリンとカルニチンの濃度を測定することは、心臓のタウリンおよびカルニチン濃度を評価する(つまり心臓で何が起きているのかを知る)ためには信頼性に限界があると結論づけています。

食事との関連では、4種類すべてのフードで血漿中のタウリンが増加。高動物性タンパク質穀物不使用のフードでは増加の割合がやや低かったが、低動物性タンパク質穀物不使用ではこの傾向は見られませんでした。全血中のタウリンは食事による違いは見られず、カルニチンについては食事による影響は見られませんでした。

この調査によって得られた知見は、栄養素の欠乏に関連した犬の心臓病の診断方法に大きな影響を与えるだろうと研究者は述べています。

まとめ

獣医師とハイタッチをするビーグル

犬の血液中のタウリンとカルニチンの濃度と、骨格筋および心筋での濃度の間には低い〜中程度の相関が観察されたこと。そのため心臓でのタウリンおよびカルニチンの濃度を評価するには、血液検査の信頼性が限界があるという調査結果をご紹介しました。

犬の食事と心臓病については数年前の騒動以来まだ明確な研究結果が出ていない状態ですが、この報告は今後心臓病の原因物質の解明に役立つことが期待されます。

《参考URL》
https://doi.org/10.1111/jpn.13946

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