子犬や子猫の輸入を取り締まる法案
イギリスでは、近隣諸国から国内に持ち込まれる子犬や子猫が長年にわたって問題視されています。これらの犬や猫の多くが国外の違法な繁殖業者から輸出されており、多くの動物が健康上や行動上の問題を抱えているからです。
イギリス下院議会では、この問題の解決策として生後6ヵ月未満の犬、猫、フェレットを国内に輸入することを禁止する法案が提出され審議されています。イギリス政府はこの法案を「支持する」と表明しており、法案は下院議会での最初のハードルをクリアしたと報じられています。
犬猫の輸入規制新法案の具体的な内容とは
イギリスの現行法では、子犬や子猫は生後15週齢から輸入することができます。この法案の支持者は、輸入される動物の最低年齢を6ヵ月齢に引き上げることで、まだまだひ弱な子犬や子猫がストレスの多い輸送によって、心身ともに傷つくことを防ぐと考えています。
飼育数があまり多くないフェレットが含まれているのは、狂犬病のリスクという点で犬や猫と同じカテゴリーだからとのことです。
この法案では輸入禁止の対象は6ヵ月齢未満の犬、猫、フェレットだけでなく、断耳や断尾の処置を施された犬、抜爪手術を施された猫も対象となっています。
イギリスの現行法では、見た目上の理由のための断耳、断尾、抜爪手術は禁止されていますが、国外でこれらの処置を受けた動物の輸入は認められています。この「外国での処置はOK」という抜け穴のために、国内で断尾などをしても「輸入した犬だから」とごまかしている例もあるようです。
また現在は、ペットと旅行をする際の規則では動物の数に制限はありませんが、違法な業者が「自分のペットだ」と偽って子犬を密輸入する隠れみのとなっているため、新法案では旅行に同伴できる動物の数を自動車では5頭まで、徒歩では3頭までと制限する予定です。
イギリスの大規模動物保護団体である王立動物虐待防止協会、ドッグズトラスト、バタシー・ドッグズ&キャッツは、以前から輸入する動物の月齢引き上げ規制のキャンペーンを実施しており、この法案を「動物からの搾取によって金儲けをする人々を阻止するもの」として支持しています。
新法案の内容に不安を訴える人々も
大規模保護団体の指示とは裏腹に、一部の動物保護団体は新しい法案に対して懸念を示しています。これらの保護団体は東欧や南欧のパピーミルや保護施設から犬をレスキューし、イギリス国内で新しい飼い主に譲渡する活動を行なっています。
動物の商業的な輸出入だけでなく、このような保護活動も「国内への輸入」とみなされるため、もし法案が成立すると大きな影響を受けることとなるからです。
一例を挙げると、ルーマニアから犬を保護しているある団体は、ルーマニアの冬の厳しさや公営の動物保護施設の粗末さ、パルボウィルスの蔓延などのために、子犬が6ヵ月齢に達するまで待っている間に、犬が病気になったり死亡する可能性が高くなることを指摘しています。
また行動上の問題がある場合には、6ヵ月齢以降ではトレーニングがより難しくなるとも述べています。
まとめ
イギリスで審議中の、6ヵ月齢未満の犬や猫の輸入を禁止する法案についてご紹介しました。この法案が新しい法律として成立するためには今後さらに上院議会を通過する必要があり、成立するかどうかはまだ不透明だということです。
外国の法律の話ですから日本の飼い主さんには直接関係のないことですが、国外では動物の扱いについてどのような動きがあるのかを知ることは、日頃の犬との接し方や日本の法律について考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。
《参考URL》
https://www.bbc.com/news/uk-politics-68563873
https://bills.parliament.uk/bills/3546/publications