犬は飼い主の嘘を見破る
一般的に、犬の知能は人間の子供の2~3歳児程度、ボーダーコリーなどの知能が高いといわれる犬の場合は5歳児程度ともいわれています。
犬は体験したこと、経験したことはしっかり覚えており、特に褒められたこと(行動するといいことがあった)、叱られたこと(行動すると嫌なことがあった)はしっかりと学習し、その後の行動の参考にしています。
犬のしつけは、この学習能力を使って覚えてもらうわけです。しかし一方で、犬は一度覚えたことを忘れにくいため、間違った行動を「良いことがあった」と覚えてしまうと、なかなか修正することが難しい、とも言われています。
反対に、何かの行動に対して「嫌なことが起こった」と学習すると、その後からはそれを徹底的に回避するようにもなります。
そのため、犬に対して何か期待させるようなことを言いながらもその期待が裏切られると、犬は「これをしたら嫌なことが起こった」と学習します。二度、三度とそれが続くと犬は期待が裏切られることを覚え、その人の指示やいうことに対して反応をしなくなります。
つまり、「人の嘘を見抜いている」のですね。
結果として、犬はその人のいうことを何も信用しなくなり、いうことを聞かなくなってしまう恐れがあるのです。
愛犬に嘘をつく「デメリット」とは
犬に対して場当たり的にその場の勢いで嘘をつく人もいるかもしれませんが、多くの飼い主さんの場合は「良かれと思って」「かわいい仕草が見たくて」という理由で嘘をついてしまうものです。
特に「良かれと思って」という場合、本当のことをいうと犬が嫌がって言うことを聞かなくなるから仕方なくということも多いのではないでしょうか。
爪を切るとき、お風呂に入れたいとき、歯磨きや目の周りなどのお手入れをしたいときに「ほら、おやつだよ」「ほら、散歩だよ」というように、嘘の別の言葉を使って呼び寄せてはいないでしょうか。
せっかく喜んで飼い主さんのところに来たのに、おやつや散歩ではなく「嫌なこと」をされれば、犬は騙されたと感じて飼い主さんを信頼できなくなってしまいます。
飼い主さんにとっては必要な嘘なのかもしれませんが、愛犬にとっては裏切り以外の何物でもありません。
そしてこれを二回、三回と繰り返せば、がっかりして飼い主さんへの信頼は全くなくなり、いうことをどんどん聞かなくなってしまうでしょう。
信頼関係を壊さないためにできることや注意すべきポイント
前章で、愛犬に嘘をつくデメリットが理解できたら、次に愛犬との信頼関係を壊さないためにできることについて考えてみましょう。
そのためには、やはり犬に対して誠実に接するよう気を付けるしかありません。
かわいい仕草が見たいからと言ってからかう嘘をつかない、犬にとっては嫌な爪切りやお風呂などのケアをするときも嘘で呼ばない、我慢できたらしっかり褒めてあげるということを徹底してあげましょう。
動物病院が嫌いな子の場合、散歩と偽って連れていくのではなく、しっかりお散歩をしてから改めて「動物病院へ行くよ」と言って連れて行ってあげましょう。
そして無事に行くことができたら、ちゃんとたっぷり褒めてあげるのです。これを繰り返し、その場所(動物病院)が嫌な場所ではなく、行くと良いことがある(おやつを貰える)、ということを覚えてもらいましょう。
多少時間はかかりますが、嘘をついて信頼をなくすより、良いことがあると覚えてもらって楽しんでもらえる方が、ずっと犬のためにもなりますし、飼い主さんのストレスも減るはずです。
まとめ
なんの悪気もなく、その場しのぎで仕方なく…など、犬に嘘をつくシチュエーションは色々あるかもしれません。病院に連れていくときなど、嘘をつかないと思い通りに動いてもらえない、という気持ちの場合もあるかもしれません。
しかしどんな事情であれ、たとえ「良かれ」と思ってついた嘘でも、気付かれないと思って繰り返していると、確実に犬からの信頼は失ってしまいます。そして一度でも犬からの信頼を失えば、それを取り戻すのは容易ではありません。
嘘をつかず、誠実に犬に接することで、彼らの安心と安全を守れるように心がけていけるとよいですね。