犬の共感力に関する研究成果
犬は、人と一緒に暮らしてきた長い歴史の中で、人の話し声のトーンや語調、表情や仕草、撫でられ方や汗・ホルモンなどの分泌物が発するニオイ、流した涙の味などの五感をフルに使って飼い主さんの感情を察知し、共感する能力を備えています。
スウェーデンでの研究では、飼い主さんが直近の3〜4ヵ月の間受けていた中期的なストレスが犬に伝染していることを、日本の研究では、飼い主さんがその場で受けているストレスが秒単位の細かさで犬に伝染していることを、それぞれに突き止めています。
これらの研究で扱ったのはネガティブな感情についてでしたが、別の研究では、飼い犬と飼い主さんが見つめ合い、触れ合うことで、お互いの体内でオキシトシンという多幸感を感じるホルモンの分泌量が増え、お互いの間に愛情や信頼の絆が構築されるということも突き止められています。
つまり、どのような感情であっても、犬は飼い主の感情に共感する力があります。そのため、愛犬のためにも、できるだけネガティブな感情を共感させず、愛犬を不安にさせてしまわないように配慮する必要があります。
愛犬を不安にさせないためにすべきこと
前章で書いたように、飼い犬と飼い主さんとの間では、感情面でお互いに影響を与えあって過ごしているのです。
そこで今回は、飼い主さんがネガティブな感情を抱くことで、無意識に愛犬を不安にさせてしまわないためには、何をすべきなのかについて考えてみたいと思います。
愛犬と一緒に運動する
飼い主さんがストレスを感じなければ、愛犬にストレスを伝染させることもありません。
しかし、ストレスを一切受けずに生きていくことなどできないでしょう。そこで大切になるのが、ストレスを溜め込んでしまわないようにすることです。
人も犬も、ストレスを発散させる最も効果的な方法は、体や頭を適度に使うことです。そこでおすすめしたいのが、愛犬と一緒に運動することです。
毎日のお散歩はもちろんですが、休日には愛犬と一緒にゲームなどを楽しみながら、頭や体を使うことを習慣化しましょう。
お互いに癒やし癒やされるような関係の構築
愛犬に伝染するのは、不安や悲しみ、怒りといったネガティブな感情だけではありません。飼い主さんのポジティブな感情も愛犬を喜ばせます。そして愛犬のポジティブな感情も、飼い主さんを喜ばせます。お互いにポジティブな感情を出し合って、プラスのループを作り出すように意識するとよいでしょう。
お互いの意思疎通のために、日頃からこまめにアイコンタクトを取るようにトレーニングを行いましょう。毎日できるだけお互いに心地良くスキンシップを図りながら、親子間に生じるような愛情や信頼関係を構築し、深めるように意識することも大切です。
犬のボディランゲージを理解できるように学習しよう
愛犬は、飼い主さんが発する聴覚情報や視覚情報、嗅覚情報、触覚情報、味覚情報をフルに利用して、飼い主さんの感情を察知し、共感します。犬ほど敏感ではないかもしれませんが、私たち飼い主側も犬たちが発する情報を察知できるよう、犬のボディランゲージを積極的に学びましょう。
ボディランゲージから愛犬の感情を読み取れるようになれば、愛犬のために何をしてあげればよいのかにも気付けるようになり、愛犬のストレスを軽減させてあげられるようになるはずです。
まとめ
飼い主さんのストレスが愛犬に伝染するレベルは、愛犬と一緒に過ごしている時間の長さに比例するということも、研究からは分かっています。長年連れ添った夫婦のように、愛犬と飼い主さんの間にも、阿吽の呼吸のようなものが生まれるようです。
気をつけたいのは、長く一緒に暮らしていればいるほど、(きっとこうなるだろう…)という思い込みで判断しがちになってしまうということです。そうなると、つい愛犬への配慮がおざなりになってしまうかもしれません。
そしてそれが原因で、飼い主さんのストレスが、愛犬により高いストレスを与えてしまっているかもしれません。
常に初心を忘れずに、(愛犬は今、どのように感じているのだろう?)という視線で物事を考えられる飼い主さんを目指したいものです。