犬と人間の脳腫瘍研究で画期的な発見
犬は人間とほぼ同じ環境で生活しており、人間と同じような病気に罹ることが多い動物です。そのため自然発生した犬の病気(実験動物のように意図的に病気にしたわけではない)は、人間の同じ病気の研究モデルとして注目されています。
中でも犬のガンについては数多くの研究が行われており、このたびは脳腫瘍の研究分野での画期的な発見が発表されました。
この研究はアメリカのテキサスA&M大学獣医学生物医学部、ベイラー医科大学、テキサス小児病院の研究チームによるもので、人間と犬の髄膜腫(ずいまくしゅ、人でも犬でも脳腫瘍の中で最も多いもの)が極めて似ていることが発見されました。
人間と犬の髄膜腫はとてもよく似ている
この研究では27犬種62頭の犬の髄膜腫を分析し、その腫瘍が人間に発生した場合の同種の腫瘍と、遺伝的に非常によく似ていることを発見しました。
ベイラー医科大学とテキサス小児病院の研究者は、2019年の研究でヒトの髄膜腫のRNAを分析して、生物学的に異なる3つのサブタイプに分類できることを発見しています。
この分類システムは従来の方法よりも高い精度で患者の予後の予測が可能で、腫瘍がどのように変化していくのか、特定の治療に反応するかどうかを正確に予測することができます。
今回の類似性の発見によって、人間と犬の両方で腫瘍を識別するための分類システムを使用できるようになります。これは人間と犬両方に適用できる髄膜腫の治療方法を開発することにもつながります。そして、より効果的な治療方法の開発には人間と動物の医学の協力が不可欠となります。
臨床試験の準備がスタート
研究チームの次のステップは、データから新しい治療法につながる手がかりを探すことです。現在、計画から資金調達まで何年もかかる臨床試験の準備が進められているそうです。
ちょうど同時期にカリフォルニア大学デービス校の研究チームも同様の研究を行ない、犬と人間の髄膜腫について同様の所見を得ています。2つの研究チームは、髄膜腫の治療法を開発するために将来協力し合うことを予定しているそうです。
2つのチームが協力し合うことで、臨床試験に必要な患者をより迅速に登録することができ、データセットも大きなものになります。その結果、より明確な知見が得られたり治療方法が早く開発できるかもしれません。
まとめ
アメリカでの研究から、人間と犬の髄膜腫は遺伝的に極めてよく似ていることが発見され、双方に共通する治療方法の開発が期待されているという話題をご紹介しました。
この研究は人間の医療と獣医療の共同研究の重要性を示すもので、脳腫瘍の分野だけでなく2つの医学のさらなる協力に道を開くことも期待されます。
人間の治療方法が犬に活かされたり、犬を治療することが人間の治療の研究になるというのは、犬と人間両方にとって嬉しいことですね。
《参考URL》
https://today.tamu.edu/2024/02/21/texas-am-researchers-find-links-between-human-canine-brain-tumors/
https://link.springer.com/article/10.1007/s00401-024-02692-3