パーキンソン病を探知する犬の育成団体による研究
犬がその優れた嗅覚を使ってガンやCOVID-19など、さまざまな病気を探知できると言う研究は数多く発表されており、いくつかの病気では実際の現場で役立てられています。
アメリカのPADs for Parkinson’sという非営利団体では、パーキンソン病に特化した探知犬の育成を行なっています。
パーキンソン病は、脳の中の黒質と呼ばれる場所にあるドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の変性疾患です。安静時の筋肉のふるえが最も顕著な症状で、筋肉の緊張度の高まりやバランス維持の困難などが見られます。日本では指定難病のひとつでもあります。
このたびPADs for Parkinson'sの研究者によって、家庭でペットとして飼われている犬がパーキンソン病を探知検出できるかどうかが検証され、その結果が報告されました。
普通の家庭犬たちが臭気検出の訓練
この研究に参加したのはさまざまな犬種と年齢の16犬種23頭で、全頭が一人のトレーナーによって臭気検出のための訓練を受け、研究の対象として適していると見なされた犬たちです。
犬たちは、訓練性やトレーニングへの意欲、年齢を重視して選ばれ、犬種や性別はほとんど考慮されませんでした。
そのため臭気検出の作業によく採用されるラブラドールやヴィズラの他に、この種の作業にはあまり採用されないポメラニアンやイングリッシュマスティフといった犬種も含まれていました。
最近の研究からパーキンソン病の患者の皮脂には、特有の揮発性有機化合物が含まれることがわかっています。犬たちはこの揮発性有機化合物の匂いを嗅ぎ分けるように訓練を受けたそうです。
最終的なテストにはパーキンソン病と診断された人と、健康なボランティアの人々がサンプルを提供しました。参加者には同じ条件の洗い立ての新しいTシャツが配布され、それを一晩着用したものがサンプルとされました。
研究に参加した犬たちが示した高い精度
パーキンソン病にはまだ決定的な検査診断がないため診断が難しく、その誤診率は10〜20%と報告されているそうです。研究に参加した犬たちは、これよりも高い精度の結果を出すことができたのでしょうか。
研究期間は、2021年と2022年にわたる合計200日間でした。この期間中の23頭の犬のテストの平均結果は、パーキンソン病陽性と陰性を嗅覚で区別する感度89%、特異度87%という高いもので、23頭のうち10頭は感度と特異度の両方で、平均90%というさらに高い精度を示しました。
病気の検査において「感度」とは病気の人を検出する力(このテストではサンプルを嗅いでパーキンソン病の人のものであると示す力)を指し、「特異度」とは病気でない人を検出する力(この場合はサンプルを嗅いで健康な人のものであると示す力)を指します。
今回の研究結果は、犬の嗅覚はパーキンソン病を検出することができるという証拠となりました。
また幅広い種類の家庭犬が高い精度の結果を出したことも、特筆すべき事項です。パーキンソン病の探知には特別な犬種や特別な生育環境の犬が求められないとしたら、高いコストパフォーマンスが得られる可能性があります。
まとめ
一般の家庭のペットの犬に臭気検出の訓練を行なったところ、パーキンソン病を90%に近い精度で検出したという研究結果をご紹介しました。
今後さらに研究が必要であるとのことですが、将来において犬の嗅覚はパーキンソン病の診断に有効なツールとなるかもしれません。
《参考URL》
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.01.29.577858v1.full
https://www.padsforparkinsons.org
https://www.nanbyou.or.jp/entry/314