犬が「警戒していない時」にみせる行動
かつて一般家庭で飼われていた犬は、その殆どが番犬としての役割を担わされており、庭先や玄関などに寝床を与えられ、敷地内や家の中に侵入してきた不審者にいち早く気付いて家人に知らせたり、撃退したりする能力を請われていました。
元々犬は警戒心が強いのですが、番犬としての役割を果たすために、その頃の犬たちは警戒心を緩めることが許されない状況だったと言えるでしょう。また当時推奨されていた犬との接し方や飼い方も、犬の警戒心を緩めないためには適した方法だったと言えるかもしれません。
しかしその頃から半世紀程しか経過していない現代の犬たちは、家族の一員として家の中で一緒に暮らしているケースがほとんどです。番犬としてではなく、パートナーとして迎え入れられることが普通になった犬は、必要以上に警戒する必要もなくなりました。
そしてその結果、愛犬が心を開いて安心しながら暮らしているかどうかに気を配る飼い主さんが増えています。
そこで今回は、犬が「警戒していない時」にみせる行動について解説します。愛犬が警戒していないと分かったら、思う存分リラックスさせてあげてくださいね。
1.全身に緊張感を感じさせない
愛犬が警戒していないときは、全身に緊張感がなくリラックスしていることが一目瞭然です。全身のどこを見ても固さがなく、動きもゆったりとしてぎこちなさがありません。立っている場合は4本の足に均等に体重を乗せています。何かを気に掛ける様子もありません。
例えばお腹を見せている犬は警戒していないと思われがちですが、たとえお腹を見せていても、体を固くしている場合はそうではありません。不安でどうして良いか分からず、相手に敵対心がないことを示しながら警戒してじっとしているのです。
ただしお腹を見せ、体に緊張感がなく腰をくねくねとさせている場合は、警戒心がなく遊びたがっている状態です。まずは愛犬の体の緊張状態に敏感になりましょう。
2.お尻を飼い主の体につけたり背中を見せている
愛犬が飼い主さんの体にお尻をくっつけた状態でまったりしている姿や背中を見せた状態で寛いでいる姿は、とても可愛いものです。実はこれも、飼い主さんを信頼し、警戒していないというサインだと言われています。
そもそも犬が警戒している場合、その対象となる方向に顔や耳を向けて注視し、小さな音も聞き漏らすまいと集中します。それが、自分にとっては死角となる背中側に飼い主さんがいる状態でリラックスしているわけですから、警戒心のかけらもないことが分かります。
3.飼い主さんに寄りかかったまま寝ている
前章と似ていますが、こちらは明らかに寝ている状態です。
飼い主さんに寄りかかったまま寝ているということは、飼い主さんが体を動かさずにいてくれると信じている証です。飼い主さんのすぐそばで爆睡しているということは、飼い主さんが寝ている自分にはちょっかいを出さないと信じている証です。
これらの行動は、飼い主さんや家の中が愛犬にとって安全であり、全く警戒する必要がないと考えていることが分かります。これは、愛犬からの最高の愛情表現だと言えるでしょう。
4.体中を触らせてくれる
穏やかな性格の犬でも、体を触られることを嫌がる犬は多いものです。特にハグのように拘束され、思い通りに動けないいような状況になることを警戒します。
実は、ハグされるとストレス反応を示す犬は多いのです。
それでも、日頃のケアで体をくまなく触らせてくれる犬は、飼い主さんに対して信頼を寄せていて、自分にとって悪いことはしないと信じ、警戒していないサインだと考えられます。
5.ひとりで落ち着いて過ごしている
意外に思われるかもしれませんが、愛犬がひとりっきりで落ち着いて過ごせるという状況も、愛犬が警戒していないサインです。
家は安全な場所であり、待っていれば飼い主さんも必ず返ってくると信じているからこそ、犬はひとりでも落ち着いて静かに待てるのです。
愛犬がひとりでも落ち着いて過ごせるということは、飼い主さんと愛犬との間に、しっかりと愛情の絆が結ばれている証だと言えるのかもしれません。
飼い犬を警戒させないための接し方
犬を警戒させないためには、飼い主さんを信頼し、一緒に暮らしている家の中が安全だと感じてもらうことが大切です。なぜなら、飼い主さんと生活環境を信頼していれば、警戒する必要がなくなるからです。
犬は賢い動物なので、過去の経験から「やって良いこと」と「悪いこと」を学習します。だからこそ、人間社会の中でも平穏に暮らしていくことができるのです。しかし、同じことをしても叱られたり褒められたりすると、どうして良いのかわからなくなり混乱してしまいます。
また飼い主さんが日頃から感情的に振る舞う方だと、信頼感を抱く前に恐怖感を抱いてしまいかねません。愛犬を混乱させたり怖がらせたりしてしまっては、信頼してもらえずに、愛犬を常に警戒し続けなければならない不幸な犬にしてしまうかもしれません。
そうしないためにも、して良いことと悪いことの基準をコロコロ変えず、感情的に怒ったり暴力を振るったりするのはやめましょう。さらに、犬の習性や特性を学び、愛犬の性格を把握して適切な対応を常に考えることも大切です。
どんなに忙しくても、毎日必ず愛犬とコミュニケーションを図る時間を作り、日々信頼関係を築いていけるよう心がけましょう。
まとめ
愛犬の感情を読み取るためには、普段の行動をよく観察することが大切です。そして、何事もなくリラックスしている時の姿勢や耳、しっぽの位置、体の緊張状態などを把握しておくことが大切です。
犬はとても警戒心の強い動物ですが、飼い主さんのことを母犬のように信頼しています。そして、普段生活している家の中が安全な場所だと理解すれば、飼い主さんの前でも留守中でも、警戒せずに落ち着いて過ごすことができるのです。
そのためには、愛犬に「警戒していない時」の行動を常に見せてもらえるような環境作りを心掛けたいですね。