保護施設に連れて来られる犬を減らすためのアンケート調査
犬は世界の多くの国で家族の一員として愛されています。しかしその一方で、その同じ国の中で保護を必要としている犬も多くいます。
保護を必要とする犬を救うために、動物保護団体やレスキューグループの方々もたくさん活動していらっしゃいます。
イギリスもそのような矛盾を抱えている国のひとつです。同国最大の犬保護団体ドッグズトラストは、行き場のなくなった犬を保護して譲渡するだけでなく、犬に関する科学的研究や一般の人々への啓蒙教育にも力を入れています。
ドッグズトラストによると、イギリスでは毎年約13万頭の犬がレスキュー団体によって保護されているとのことで、この数字を減少させるには飼い主の現実を理解することが重要です。
例えば、犬を飼うことについての予備知識の不足や予測の甘さは、飼育放棄の潜在的なリスク要因となります。
また、犬を飼い始めて人々が何に驚いたのかを知ることも、事前の対策を立てるために役立ちます。
ドッグズトラストのリサーチチームは、イギリス国内の犬の飼い主を対象にしたオンラインアンケートを行ない、その結果が報告されました。
犬を飼い始めて予想と違っていたこと、驚いたことを調査
この調査のためのオンラインアンケートでは、「犬を飼い始めてから、次の項目について予想以下だったか、予想通りだったか、予想以上だったかを選んでください」という選択式の質問と、「犬を飼い始めて最も驚いたことは何でしたか?」という自由記述式の質問が設けられていました。
犬を飼うことについて予想通りだったかどうかの選択式の質問は以下の13項目でした。
- 動物病院にかかる費用
- 犬を購入または保護施設から引き取る際の費用
- 犬の行動に対処するために必要な忍耐力
- 自分自身の社会生活への影響
- トレーニングにかかる時間
- 家の中の汚れや散らかり
- 犬の食事にかかる費用
- 動物病院に行かなくてはならない回数
- 庭へのダメージ
- 騒音の程度
- 犬の運動にかかる時間
- 家具や家の中の小物へのダメージ
犬にかかる費用と、犬を満足させることが大きなポイント
この調査には合計354,046人から回答が寄せられました。かなり大きいデータセットですね。
選択質問では、ほとんどの項目で大多数(54〜86%)の人が「予想通りだった」と回答しまし、多くの人が「予想以上だった」と回答したのは動物病院にかかる費用(52%)でした。
また、過半数ではないものの「予想以上だった」という回答が多かった他の項目は、購入や引き取りの際の費用(33%)、必要な忍耐力(25%)でした。
反対に予想以下だったと答えた人が最も多かったのは、家具などへのダメージ(50%)で、次いで庭へのダメージ(33%)であったといいます。
犬を飼い始めて最も驚いたことへの記述式の回答では、犬を飼うことについてのポジティブな面と、ネガティブな面についての驚きの両方が伺えました。
ポジティブな驚きは「犬が自分や家族に寄せてくれる愛情」「自分から犬への深い愛情」「犬を飼い始めて幸福度が上がった」「犬を飼い始めて健康になった」などがありました。
ネガティブな面での驚きは「思っていた上に時間が取られる」「思っていた以上に費用がかかる」「犬を飼うことについての責任の重さ」「社会はいつも犬に対して優しいわけではない」「犬を飼うことは想像していたよりも汚い」などがありました。
ポジティブとネガティブ両方の驚きがあったのは「犬の性格や気質(犬にはっきりした性格があることに驚いた人が多数。)」「犬の活動レベル(犬が思っていたより活発。逆に犬が思っていたよりおとなしかった。)」などがありました。
選択式と記述式の回答、両方を通じて医療費を含めた費用について驚いた人が多いことが伺えます。
また、犬を飼うことで時間が取られたり責任の重さに驚いたことは、その人が愛犬を満足させるためにどれだけの負担があるかについて驚いたとも言えます。保護施設に犬を連れてくる理由の上位に、「犬のために時間を取れない」が挙げられていることとも一致します。
これらの結果は犬を迎えようとしている人に、どのような情報提供と支援が必要なのかを明らかにするのに役立ちます。
まとめ
イギリスの犬保護団体が飼い主を対象に実施したアンケート調査から、多くの人が犬を飼い始めてポジティブな驚きを感じた半面、費用や時間のコストについては今後さらに啓蒙が必要であることがわかったという結果をご紹介しました。
犬との暮らしは素晴らしいものですが、それだけを強調し過ぎると期待を裏切られたと感じる人や、自分の力不足に落ち込む人が出てしまいます。このような事態は犬と人間両方の福祉や幸福度に悪影響となってしまいます。
これから犬を迎えようと考えている人に、犬の素晴らしさと共に、責任の重さや負担についても明確に伝えていくことが、犬と飼い主の幸せにつながると言えます。
《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2024.1331793