犬種とガンのリスクの関連を調査
犬は犬種によって、「◯◯という病気の好発犬種」とされることがあります。犬種図鑑などを見ていると、罹りやすい病気の一覧が掲載されていることもありますね。
ガンについても同様で、特定の犬種には特定の種類のガンが多く見られるということがあります。犬種によってガンの発生に違いがあるということは、特定のガンに罹りやすくなる遺伝的変化を理解するのに、犬が良いモデルになり得ることを示します。
このような点について、アメリカのカリフォルニア大学リバーサイド校の進化生物学者の研究チームが、犬種、体のサイズ、寿命などの要素から、どのような犬がガンに罹るリスクが最も高いかを詳しく調査し、その結果が発表されました。
3つのデータ源を分析して明らかになったこと
研究チームは、犬種、体重、ガンリスクの関係について、ガンを含むさまざまな原因による犬種の死亡について記録した、3つの独立したデータ源を分析しました。
1つ目はアメリカの獣医学データベースで、81犬種の死亡データが含まれ、犬種ごとのサンプル数は最小がボルゾイ104頭、最多がラブラドールレトリーバー4,398頭でした。
2つ目はフィンランドのケネルクラブのデータベースで、119犬種のデータが含まれ、犬種ごとのサンプル数は最小がチベタンマスティフ72頭、最多がフィンランドハウンド2,333頭でした。
3つ目はイギリスでの純血種の犬の飼い主へのアンケートデータで、72犬種のデータが含まれ、犬種ごとのサンプル数は最小がブリタニー28頭、最多がゴールデンレトリーバー927頭でした。
一般的に大きな生き物は小さい生き物よりも、ガンに罹るリスクが高いことが指摘されています。しかし上記のデータの分析の結果は、必ずしもそうとは言えないことを示していました。
小型犬は確かにガンの罹患率が低かったのですが、超大型犬のガンの罹患率は高くはありませんでした。これはグレートデーンやセントバーナードなど、超大型犬の平均寿命が短いためです。
ガンは主に老齢期の病気なのですが、超大型犬は10歳未満で亡くなってしまう率が高いため、ガンが発生する前に寿命が尽きてしまうからです。
ガンのリスクが低い犬種、高い犬種
犬種別に見ると最もガンのリスクが低いのは、チワワ、ポメラニアン、ペキニーズでいずれも10%以下でした。
体のサイズが小さいにも関わらず、ガンのリスク(特に膀胱ガンのリスクが高い)が高いのはスコティッシュテリアでした。また、ヨークシャーテリアとウエストハイランドホワイトテリアは、腺ガンのリスクが高いこともわかったといいます。
また乳腺腫瘍については、大型犬種よりも小型犬種の方が多く罹患していました。
他の犬種に比べて有意にガンのリスクが高かったのは、フラットコーテッドレトリーバーとバーニーズマウンテンドッグでした。一方、体のサイズの割にはガンのリスクが一貫して低いのは、ダルメシアンとブルドッグでした。
ガンのリスクが犬種によって違う理由の一部には、近親交配の影響の可能性があると研究者は述べています。
今回の調査では、近親交配がガンのリスクを高くするという証拠は得られませんでしたが、雑種犬は同程度の大きさの純血種の犬よりも1〜2年長生きすることが示されたので、近親交配の影響の可能性は捨てきれないとのことです。
近親交配ではなくても、繁殖に使う個体の選択がガンの罹患率と関連している可能性があります。この点について、研究者は大型犬の多くが骨肉腫に罹患していることを指摘しています。
まとめ
3カ国のデータ源を分析した結果、特定の犬種はガンに罹るリスクが高いことが示されたという研究結果をご紹介しました。
ここで示された犬種名を見てショックを受けた方もいらっしゃるかもしれませんが、定期的な健康診断や、何か異常を発見した時に迅速に診察を受けることなどを心に留めて、愛犬との大切な時間をあらためて慈しんでいただきたいと感じます。
《参考URL》
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.231356#d1e219