犬の言葉としてのサイン
犬は賢く感情も豊かで、群れの仲間同士でコミュニケーションを図りながら共同作業をして獲物を狩ることのできる動物です。その際、行動やしぐさ、表情、声といったサインが、犬同士の間で交わされる言葉として使われます。
そして犬は飼い主に対しても、このサインを使って自分の気持ちや意思を伝えようとします。
犬の言葉は私たちの言葉とは異なるため、わかりやすいものもあればわかりづらいものもあり、場合によってはなかなか気付かないものまであります。
そのため、愛犬とのコミュニケーションをスムーズにするためには、人間が意識的に犬からのサインに気付いてあげる必要があります。人間同士の「空気を読む」まではいかなくとも、愛犬の気持ちを良いタイミングで察してあげるために、さまざまなサインに気付けるような意識を持っていたいものです。
犬が「遊ぼうよ」と誘っているサイン
犬は人間の言葉の代わりに自分の気持ちをあらわすサインを見せていると書きましたが、とくに「遊ぼうよ」と誘ってくれているサインには気づいてあげたいですよね。
犬が遊びたくないタイミングにこちらの都合で遊ばせようとするよりは、犬の誘いに気持ちよく乗ってあげた方がより深い信頼関係も築けそうです。
そこで今回は、犬が「遊ぼうよ!」と誘っているサインについて解説します。あなたは愛犬からのお誘いに気付けているでしょうか?
1.お辞儀をする(プレイバウ)
犬が犬同士や飼い主さんを遊びに誘うサインとして有名なボーズが「プレイバウ」と呼ばれているお辞儀のような姿勢です。
この姿勢は、上半身を低くして、前足は広げた状態で肘に当たる部分を地面につけ、同時にお尻を高く上げます。さらにしっぽを振り、顔は相手の方に向けて楽しそうでワクワクしたような表情を見せます。
この際に気を付けたいのが、強い腹痛を我慢しているときの姿勢とプレイバウがよく似ていることです。
同じように上半身を低くして前足の肘の部分を地面につけ、お尻を高く上げた姿勢をしますが、顔や視線は下を向いており、しっぽは股の間に挟んだままで、元気なくじっとした状態でいる場合は、腹痛の可能性が高いです。
2.おもちゃを持ってくる
遊びの誘いとして最もわかりやすいのが、おもちゃを持ってくる行動です。
持ってきたおもちゃは飼い主さんの目の前に置いたり、咥えたまま飼い主さんの顔をじっと見つめたりと、犬によってさまざまです。個々の犬の経験を元に、飼い主さんが最も遊んでくれそうな行動を取ります。
場合によっては、おもちゃではなくスリッパやテレビのリモコンなどを持ってくることもあります。その場合は、以前それを咥えていたら飼い主さんが怒って取り上げようと追いかけたことを、遊びだと勘違いしている可能性があります。
3.前足で飼い主さんの体をつつく
小さなお子さんが親御さんの袖口などをつんつんとつついて気を引こうとすることがありますが、同じように、犬も飼い主さんの体の一部をちょんちょんと前足で軽くつつくことがあります。これも、「一緒に遊びたい」と誘っているサインのひとつです。
他にも、子犬が母犬に甘えるように飼い主さんの手や顔をペロペロと舐めたり、自分の鼻や足先を飼い主さんの体の一部に押し付けたりという直接接触するような行動も、犬が遊んでほしいときのサインです。
4.飼い主さんの視界に割り込んで見つめる
飼い主さんが何かに気を取られているときに、その何かと飼い主さんの間に割り込んできて、飼い主さんの顔をじっと見つめることがあります。
これも、飼い主さんが夢中になっているものから自分の方に注意を引き戻し、一緒に遊ぼうと呼びかけるサインのひとつです。
5.仰向けに寝転がりお腹をクネクネさせる
犬の身体の中で、唯一骨に守られていない部位がお腹です。お腹を襲われると、犬はひとたまりもありません。仰向けに寝転がり、お腹を相手に見せるということは、相手を信頼していることの証であり、敵意を持っていないという意思表示になります。
この姿勢で楽しそうにお腹をクネクネさせていたら、愛犬からの遊びの誘いだと考えて良いでしょう。
犬のサインを読み取る際のポイント
本来犬が見せるサインは、犬同士で通じるコミュニケーション手段です。犬はそれを、飼い主さんにも応用して使います。
しかし、愛犬のごく一部のしぐさや行動だけに着目してしまうと、実際は腹痛を我慢しているのに「遊びに誘っている♪」と勘違いしてしまうというような間違いが生じてしまいます。
愛犬のサインを読み取るためには、次のことに気をつけるようにすると理解しやすいと言われています。
- 体の一部の動きだけに反応せず、愛犬の全身の状態を見る
- 犬がその行動を見せている前後の状況も含めて判断する
- 犬の個性や飼い主さんとの過去の経験を意識して判断する
私たち人間にとっては、その時の犬の気持ちが遊びなのか喧嘩なのかを区別することが難しく、読み間違えることもあります。
例えば、愛犬が楽しく遊んでいるときに、目を見開いて白目を見せることがあります。これはストレスを受けて緊張しているときの目とよく似ています。また、楽しく遊んでいるときに口を大きく開けますが、これも攻撃行動のときの口と間違えることがあります。
遊びのときには口を大きく開けていても、歯をむき出しにはしていません。また全身に緊張した様子がなく、力が抜けて緩やかな動きをします。
また、愛犬のしっぽが、普段の穏やかなときにどういう状態なのかを覚えておくのも大切です。犬種によってしっぽの状態が異なるため、愛犬の通常時のしっぽの状態、興奮気味のときや不安を感じている時の状態を把握しておくことは、スムーズなコミュニケーションの基本になるでしょう。
まとめ
言葉というのはコミュニケーションの道具です。そのため、スムーズなコミュニケーションが図れるよう、常に工夫や改善がされていきます。犬が本能的に身につけているサインも、飼い主さんに通じなければ、犬はどんどん改善していきます。
また、飼い主さんが愛犬のある行動をやめさせようとして怒ったのに、愛犬にとってそれが楽しい遊びだと感じてしまうと、また遊びたくてその行動を繰り返してしまうという、間違ったコミュニケーションが成立していまいます。
まずは愛犬が「遊ぼうよ」と誘ってくれていることに気付けるように意識していくと同時に、愛犬のサインを正しく読み取ることで、愛犬とのスムーズなコミュニケーションを図れるように配慮していきましょう。