犬を飼うことと子どもの活動量との関連を調査
犬を飼うことによってもたらされる生活や健康上の変化については、数多くの研究が発表されています。しかし、その多くは成人や高齢者が対象となっており、犬が子どもの生活に及ぼす影響について長期にわたって行われた研究は多くありません。
子どもの生活と言えば、身体的に活発に動く姿を連想する方も多いと思いますが、現代の子どもたちの多くは推奨される身体活動量を達成していません。大人の場合には、犬を迎えたことで身体活動が増加したという報告が数多く発表されていますが、子どもの場合はどうなのでしょうか。
この点について、オーストラリアのウエスタンオーストラリア大学とクイーンズランド大学の研究者が調査を行ない、その結果が発表されました。
就学前の子どもたちを3年にわたって追跡調査
調査の対象となったのは2〜5歳の600人の就学前の子どもたちで、3年間にわたって犬の所有状況と身体活動量が追跡調査されました。
子どもの身体活動量は、加速度モニターを身につけて記録したデータと保護者からの回答によって測定されました。
犬の飼育状況については以下のような4つのグループに分けられました。
- 調査期間の3年の間に1度も犬を飼っていない 307人
- 調査期間の3年の間ずっと犬を飼っていた 204人
- 調査期間の3年の間に新しく犬を飼い始めた 58人
- 調査期間の3年の間に犬を亡くした 31人
犬と身体活動の関連は性別によっても違いがあった
調査の結果は予想通りとも言えるのですが、調査期間中に犬を迎えた家庭の子どもは、犬を迎えた後に身体活動量が増加していました。一方、犬を飼っていない家庭と期間中ずっと犬を飼っていた家庭の子どもたちは、身体活動量に大きな変化は見られませんでした。
犬を飼い始めた後は、男の子も女の子も散歩や庭遊びの時間が増えていたのですが、その影響は女の子の方が顕著だったといいます。
対照的に、調査期間中に犬を亡くした家庭の子どもは身体活動の量が少なくなっていました。こちらも活動量の減少は女の子の方が顕著でした。
過去の研究から、女の子は男の子に比べて成長につれて身体活動の量が大きく低下することがわかっています。また過去の別の研究でも、犬が女子の身体活動レベルに大きな影響を与える可能性が示されています。
大人の場合と同様に、就学前の子どもという幼い時期でも犬を飼うことで、身体活動が促進されることが示されたのですが、具体的な効果については今後さらに研究が必要であるとのことです。
まとめ
就学前の子ども600人を対象にした調査から、犬を迎えることは子どもの身体活動の増加に、反対に犬を失うことは活動量の減少につながり、どちらの場合もその影響は女児では男児よりも顕著だったという報告をご紹介しました。
犬を飼うことで身体活動の量が増え、健康増進につながるとしたら素晴らしいことです。犬と子どもの健康については、精神的および情緒的にも良い影響があることがわかっています。
しかし、犬を家族に迎えるというのは大きな責任を伴うため、「健康のために取り入れよう!」と気軽に考えたり勧めたりすることではありません。さまざまな事情によって犬を迎えられない家庭もあります。
家庭犬の研究と共に、学校での動物介在教育の取り入れなど、犬にも人間にも負担が無く両方の福祉を向上させられる方法が広まってほしいと思います。
《参考URL》
https://ijbnpa.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12966-023-01544-9