犬の外見的特徴と寿命との関連を調査
ご存じのように、犬の姿形の多様性は他の動物に比べて群を抜いています。犬種による違いは外見や行動だけでなく、寿命にも影響が及びます。
しかし今まで犬種間の平均余命の違いを評価したり、長生きの系統的特徴を評価したりする研究は、ほとんど行われていなかったそうです。
このたび、イギリスの犬保護団体ドッグズトラストのリサーチ部門とリバプールジョンムーア大学の研究チームが、150種以上の犬種58万頭以上のデータから、犬の体のサイズ、頭の形、性別と寿命との関係について調査を行ない、その結果が発表されました。
58万頭以上の犬のデータベースを構築して平均余命を計算
研究チームはイギリス国内の18の情報源から得たデータを用いて、犬のデータベースを構築しました。情報源とは、犬種登録、動物病院、ペット保険会社、動物保護団体、学術機関などで、155犬種(交雑種含む)、584,734頭の犬(うち284,734頭はすでに死亡)のデータが集められました。
データには全ての犬について、犬種、性別、生年月日、該当する場合には死亡年月日が含まれています。
純血種の犬は、ケネルクラブの文献に基づいて、サイズ(小型、中型、大型)、頭の形(短頭種、中頭種、長頭種)に分類され、次に全犬種の平均余命の中央値を個別に計算、交雑種についても計算、最後に性別、サイズ、頭の形の組み合わせごとに計算していきました
上記のようにして、どのような犬種と性別とサイズと頭の形の犬が、どのくらいの平均余命なのかが明らかにされました。
平均余命の長いのはどんなタイプの犬だった?
分析の結果、平均余命の中央値が最も高かった(予想される寿命が長い)のは、オスメスともに小型の長頭犬種(ミニチュアダックスフンド、パピヨン、イタリアングレーハウンドなど)の13.3年でした。
反対に平均余命の中央値が最も低かったのは中型の短頭種(イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグなど)で、オス9.1年、メス9.6年でした。
全体的には次のような結果となりました。
- 1. 体のサイズが小さい犬の方が平均余命が長い
- 2. メスの平均余命(12.7年)はオス(12.4年)より長い
- 3. 短頭種は平均余命が短い
- 4. 純血種の平均余命(12.4年)は交雑種(12.0年)よりも長い
1と2については従来からの知見を裏付けるものであり、3については短頭種の健康と福祉についての問題を深く掘り下げるものとなりました。
4については注意が必要だと研究者は述べています。これまでの研究では、純血種の平均余命は交雑種に比べて短いことが報告されており、今回の知見とは一致しません。
しかし、今回の調査では純血種同士を交配させた「デザイナーズドッグ」と呼ばれる犬は、全て交雑種としてカウントしており、これらの犬といわゆる雑種犬との遺伝的多様性のレベルの違いを考慮に入れるべきだとしています。
このデータベースには犬の死亡理由が含まれていないため、平均余命の短さの直接的な危険因子を特定することはできません。しかし親犬の系統、犬種、体のサイズ、性別、頭の形などを通じて平均余命を比較することで、さらに研究が必要な犬種グループや系統を特定することができました。
まとめ
膨大な数の犬のデータを分析した結果、小型で長頭タイプの犬は平均余命が長く、中型で短頭タイプの犬は平均余命が短いなどの、外見的特徴と平均余命の関連を明らかにした報告をご紹介しました。
このような研究結果は獣医師や研究者にとって有益であるだけでなく、犬と暮らしている人や、これから犬を迎えようと考えている人にとっても、将来の責任や一緒にいられる時間を理解する上で役に立ちます。
また短頭種やデザイナーズドッグなど、健康や福祉の問題についてさらに調査研究が必要な層が明らかになったことにも大きな意味があります。
《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-023-50458-w