犬が「居心地が悪いです」と飼い主に伝えているサイン
人間と犬が一緒に暮らす場合、安心して安全に過ごせる居心地の良い「住処」を用意するのは飼い主さんの役目です。しかし、居心地を良くするのは容易なことではありません。動物としての、人と犬との感覚の違いを考慮しなければならないからです。
人も犬も、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などで外界の情報を感じ取り、体温調節やより快適な場所を探すなどの対処を行います。しかし人と犬の感覚感度が異なるため、「居心地良い」と感じる環境が異なるのです。
例えば、人にはごく普通の音量が犬にとっては騒音だったり、人には良い香りでも犬には不快なニオイだったりします。心地よいと感じる温度も、犬は人よりも低温です。
つまり、人にとって快適な場所でも、それが犬にも快適な場所だとは限らないのです。それに気付くためには、飼い主さんが愛犬のストレスサインを見逃さずに居心地悪さの原因を見つけ、適切に対処することが求められます。
そこで今回は、犬が「居心地が悪い」と飼い主さんに伝えるときに見せるサインや、居心地悪さを改善するためにするべきことなどをご紹介します。
1.あくびや口をくちゃくちゃさせる
特に眠くもないのに目をしょぼしょぼと細める、何度もあくびを繰り返すというのは、ストレスを感じているときによく見せるサインのひとつで、自分自身を落ち着かせようとしています。
口をくちゃくちゃさせる、舌なめずりをする、鼻を舐めるという場合も同じです。
2.その場にいることを嫌がる
その場にいることを嫌がる素振りを見せるのが、最もわかりやすいサインでしょう。
その場所を離れようとする、離れはしないもののソワソワと落ち着きがなくなるなどの他、飼い主さんが行こうとしている方向に行きたがらない、というのも該当します。
3.自分の身体を執拗に掻く、舐める
一見居心地とは関係なさそうですが、自分の身体を掻く、舐めるのもストレスからきている可能性があります。
明らかに異常だと感じるくらいしつこく、同じ部位を掻いたり舐めたりすることが特徴で、自分の尻尾を噛もうとして回り続けることもあります。
4.地面のニオイを嗅ぐ
その場の雰囲気や居心地の悪さに耐えかねて、突然地面のニオイを嗅ぎ始めることがあります。
居心地の悪さから不安や恐怖に移る場合もあるため、よく注意してあげる必要があるでしょう。
5.全身をブルっと震わせる
なにか嫌なことをされている間じっと我慢し、終わった途端に「ようやく解放された!」と見せるのが、水から上がったときのように全身をブルブルっと震わせる動作です。
苦手なブラッシングが終わった直後などに見せたりします。
6.低い姿勢になる
低い姿勢になる、耳を後ろに倒す、腰が引けたようになるのも、ストレスのサインです。
居心地の悪さから不安が生じ、そのまま放っておくと不安感が増して攻撃的になる場合もあるため、注意が必要です。
7.視線を逸らす、白目が見える
相手を正視できず視線を逸らせる、顔や体を背けるというのも、居心地が悪いときのサインです。
また、一見関係なさそうですが、目の端に白目を見せている場合も要注意です。ストレスで顔の筋肉が硬直しているときの表情で、かまってほしくない人に抱きつかれたときなどによくこういう表情をすることがあります。
愛犬の居心地を改善するためにすべきこと
居心地の悪さの主な原因には、環境(温湿度・音・ニオイ・床材)、嫌なことをされた、その場の雰囲気、ルール等の混乱などが挙げられます。
それぞれの原因別に、改善するためにすべきことをご紹介します。
<温湿度>
犬が快適だと感じる温度は20〜23℃程度です。湿度40〜60%と併せて適切な範囲に管理しましょう。犬が普段生活している床面近くの温湿度を計測し、愛犬の年齢や健康状態でも適温が変わることを意識して調整することが大切です。
<音・ニオイ>
人にとっては普通の音量でも、犬には騒音に感じることが多いです。寝床やトイレなどは、室内だけでなく外の音も聞こえづらい、静かで人の出入りも少ない場所に設置しましょう。また芳香剤や香水、タバコなどのニオイも犬には不快なことが多いです。
<床材>
フローリングのような床材は滑りやすく、足腰に負荷をかけやすいという問題があります。カーペットや弾力性のあるマットを敷くなどの対策を行い、改善しましょう。
<嫌なことをされる>
実は抱きしめられるのを嫌がる犬は多いものです。自由が奪われるため、不安から緊張して目の端に白目をむき出した表情を見せる犬は意外と多いのです。過度なスキンシップは控えましょう。
<その場の雰囲気>
犬は空気を読む能力に長けており、家庭内の不和などを敏感に察知します。夫婦喧嘩や親子喧嘩は極力避けましょう。万が一悪い雰囲気になった場合も、できるだけ早く元に戻すよう努力しましょう。
<混乱>
犬の同じ行動に対してご家族の反応が異なると、犬は自分の行動の判断基準がわからなくなります。またご家族によって指示語が異なるのも、犬が混乱する原因の一つです。ご家庭内でのルールや指示語を統一し、終始一貫した態度で愛犬と接するようにしましょう。
まとめ
今回は、犬が「居心地が悪いです」と飼い主に伝えているときのサインを解説しました。
愛犬にとって居心地の良い環境を作るには、愛犬が暮らす環境を居心地良く整え、嫌がるお手入れは効率よく行い、過度なスキンシップを控えましょう。また、家庭内の雰囲気をポジティブにし、ルールや指示語を統一するなどを意識しましょう。
愛犬と飼い主さんご家族の双方が心地良く過ごせるよう、いろいろと工夫してみてください。