人間から犬や猫への病気の感染は想像以上に多いという調査結果

人間から犬や猫への病気の感染は想像以上に多いという調査結果

人畜共通感染症の中でも注目されにくい人間からペットへの感染、実は思っているよりも多く起こっているという調査結果が報告されました。犬や猫と暮らす人が心に留めておきたいことです。

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人間からペットへの人畜共通感染症の例を検証

眠る女性に寄り添う猫と犬

ズーノーシス、日本語では人畜共通感染症という言葉があります。人畜共通感染症とは、同一の病原体によって人間と人間以外の脊椎動物の双方が罹る、さまざまな感染症のことを指します。

人畜共通感染症の話題のほとんどは動物由来感染症、つまり動物から人間に感染する病気に焦点が当てられていますが、人間から動物に感染する例は今まで考えられていたよりも多く、そのことは動物だけでなく、人間の健康にも重大な影響を及ぼすという研究結果が発表されました。

この研究を行なったのは、アメリカのフロリダ大学、ノースフロリダ大学、中国のデューク崑山大学の公衆衛生学の研究チームです。

人間から動物への人畜共通感染症は「リバース・ズーノーシス」または「逆人畜共通感染症」と呼ばれます。逆人畜共通感染症は、鳥類や魚類よりも遺伝的に人間に近く人間と生活をともにしている犬や猫に最も多いと考えられます。

犬や猫と暮らしている人が知っておきたい、逆人畜共通感染症についてご紹介していきます。

逆人畜共通感染症は思っている以上に多かった

注射を受けているボーダーコリー

研究チームは、ウイルス、細菌、寄生虫の病原体が関与する、逆人畜共通感染症の事例を記録した研究文献を再検証して総説を発表しました。

文献の検証の結果、逆人畜共通感染症の例は多く見られ、今まで考えられていたよりも、ペットは人間を介して病気に感染しやすいことが浮き彫りになったといいます。

人間から動物に感染した症例は、インフルエンザ、ノロウイルス、デング熱、COVID-19、結核などで、感染した動物の大半は犬と猫でした。

愛犬や愛猫といっしょに寝る、キスをする、食事の場を共有することは、飼い主からの感染のリスクが高くなると警告されています。

しかし研究者は、これらのことを完全に止めるようにとは述べていません。人間と動物の強いつながりは感情的な幸せ、ひいては精神的な健康にもつながるからです。

ただし飼い主が感染性の病気の間は、ペットとの触れ合いを制限することが重要です。どうしてもペットと接する必要がある時にはマスクを着用し、手洗いを徹底しましょう。

日常的には、ペットに衛生的な食事や飲み水を与え、生活エリアを清潔に保ち、人もペットも推奨されているワクチン接種を受けることが勧められています。そしてもちろん、普段からていねいな手洗いが大切です。

全ての感染症が人間と動物の間で感染するわけではありません。ウイルスを例に取ると、ウイルスは宿主の特定の細胞受容体に結合しなければ生きていくことができません。

人間と犬や猫が持つ受容体は違うので、通常はウイルスが適合せず感染症が種を超えて広がることは難しいのです。

しかしウイルスが突然変異を起こし、偶然に新しい受容体(違う種の生き物)に適合して種の壁を越える可能性があります。この「突然変異によって種の壁を越えるリスク」は、ウイルスが人間と動物の両方が存在する環境で感染し、複製されるたびに高くなります。

最も影響が大きいのは、インフルエンザウイルスとコロナウイルスです。これらのウイルスは、遺伝物質がRNAに保存されており突然変異を起こしやすいため、変異型が多く存在するからです。

なぜ人間からペットへの感染を防ぐことが重要なのか

二人の獣医師と犬と猫

逆人畜共通感染症は、大切な愛犬や愛猫の健康を脅かすだけでなく、病気の蔓延を助長することで人間にも影響が巡ってくる可能性があります。

感染症の病原体は、動物の体内で突然発生するわけではありません。他の動物から感染したり、環境から感染することもありますが、動物が人間と接触することも感染において大きな役割を果たしています。病原体が新しい宿主に感染するたびに突然変異が起こる確率が高くなります。

研究者はまた、感染症を理解するために人間の健康データだけに注目するのではなく、動物のモニタリングを取り入れることが、人畜共通感染症の影響を軽減することにつながると述べています。

動物をモニタリングすることで、科学者が病原体の移動情報を把握できるようになり、パンデミックへの備えをサポートすることになるからです。

このような、人間、動物、環境の健全性を「ひとつの健康」として捉え、分野にまたがって守っていこうという考え方は「One Health ワンヘルス」という言葉で表され、世界の多くの研究者が取り組んでいます。

まとめ

具合の悪い女性と見上げるシュナウザー

人間を介して動物に病気が感染する逆人畜共通感染症について症例の文献を検証したところ、逆人畜共通感染症はかつて考えられていたよりも多く起こっており、その大半はペットの犬と猫であったという調査結果をご紹介しました。

私たち一般の飼い主ができることは、感染性の病気に罹ってしまった時には、周囲の人間にうつらないように配慮するのと同様のことを犬や猫にも行なうことです。当たり前のようでいて忘れがちなことなので、健康な時から心に留めておきたいですね。

《参考URL》
https://link.springer.com/referenceworkentry/10.1007/978-3-030-85877-3_59-1

https://epi.ufl.edu/2024/01/11/yes-humans-can-get-their-pets-sick-reverse-zoonoses-more-common-than-once-thought/

https://www.niid.go.jp/niid/ja/route/vertebrata.html

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