犬は人よりも切り替えが早い!?
愛犬と一緒に散歩をしたり遊んだりしていると、突然今までやっていたことを中断し、電池の切れたロボットのようにピタッと固まってしまう光景を目にすることがあります。
実は、この不思議な犬の行動にも理由があります。
犬種特性や個々の違いはあるものの、総じて犬には高い学習能力が備わっています。基本的に、犬は過去に経験した良かったことや悪かったことを記憶しています。そして良かったことは積極的に再現しようとし、悪かったことは極力避けるようになるのです。
犬は、察知したさまざまな情報と学習した経験とを手がかりに、自分が次にどう行動すべきかを判断しています。「高い学習能力を持つ犬ほど気難しい」という研究報告がありますが、身につけた経験値が多い犬ほど、さまざまな情報に敏感に反応するためなのでしょう。
犬は皆周囲の状況を把握しながら行動するため、何をしていても気になる物を見つけると意識がそこに集中してしまいます。その切替速度は、私たち人間以上かもしれません。それが、突然行動が「ピタッと止まって固まったようになる」という現象を引き起こすのでしょう。
今回は、そんな愛犬が突然ピタッと固まるときに考えられる、主な心理状態についてご紹介します。
愛犬が突然「ピタッと固まるとき」の心理
ではここからは、愛犬が突然「ピタッと固まるとき」の心理について解説します。ピタッと固まった愛犬の気持ちを正しく判断することができれば、愛犬との距離もより近づくかもしれません。
1.警戒している
犬に限らず、動物は自分が生きていくために必要なことを積極的に学びます。その中でも大切なのが、「危険を回避」することです。
これまでの経験上、自分の身に危険が及ぶような状況を察知すると、犬は楽しく遊んでいても警戒モードに素早く切り替わります。
ピタッと固まって一点を注視したり耳を傾けて集中しているときには、自分の身に危険を及ぼしそうな物を、視覚・聴覚・嗅覚などで察知したために、しっかり確認して備えようとしているのだと考えられます。
2.悩んでいる
決断を迫られたとき、すぐに判断できる場合もありますが、どうしようかと迷い、悩んでしまうこともあります。それは犬でも同じです。
何か気になる物を見つけたものの、近寄って行ってさらに探りを入れるべきか、それともすぐ逃げるべきかなどと悩み、考えている間もずっと動作がピタッと止まったまま固まっていることがあります。
3.怯えている
何かに怯えたとき、反射的に逃げ出すこともありますが、躊躇して固まってしまうこともあります。特に、過去に非常に恐ろしい体験をしたことがあると、似たような状況に直面したときにその時の光景や恐怖心が蘇ってしまい、動けなくなることがあります。いわゆる「フラッシュバック」です。
保護犬などの場合、思いもよらないようなシーンでフラッシュバックを起こし、固まってしまうことがあります。愛犬がどのようなシーンで怯えて固まったのかを覚えておき、フラッシュバックを起こさせないように注意する必要があるでしょう。
4.期待している
固まるのは、嫌なときや怖いときばかりではありません。これから起こるであろう事態を予測し、ワクワクと期待に胸を踊らせながら、固まって待ち望んでいることもあります。
最もよく見られるのが、飼い主さんが帰宅する気配を察知した愛犬です。ワクワクしながらじっとして、飼い主さんがドアを開けるのを待ち望んでいる姿です。
他にも、飼い主さんが食事の支度をしているとき、散歩に出かける準備をしているときなども、同じように期待に胸を膨らませながら、固まっているかもしれません。
5.拒絶している
飼い主さんに対する「嫌だ!」「やめてくれ!」という、拒絶の意思表示として固まってしまうこともあります。この場合は、これまでご紹介してきたような「思わず固まってしまう」というよりも、愛犬が「意図的に固まってテコでも動かない」というのに近いでしょう。
散歩の途中で固まった場合は、飼い主さんが行きたい方向には「行きたくない」、遊んでいる途中であれば「もう疲れた」というようなケースが考えられます。
まとめ
犬は、私たちが考えている以上に賢く、また情緒も豊かです。そのため、状況を判断し、次にどのような行動を取るべきなのかを考え、場合によっては自分の気持ちを飼い主さんになんとか伝えようとします。
そのような思考の過程や意思疎通の手段として、愛犬は「突然ピタッと固まる」という行動を見せることがあります。
同じように見えるかもしれませんが、愛犬の表情や様子、周囲の状況から総合的に判断することで、その時々に応じた対処をとってあげられるようになりたいものです。