犬の年齢や体格によって病気の履歴はどのように違う?
アメリカで実施されている『ドッグエイジングプロジェクト』は、犬の加齢についての大規模研究プロジェクトです。犬の加齢による病気や障害、長生きについてなど、今までにもいくつもの貴重が研究結果が報告されています。
そのドッグエイジングプロジェクトから、この度また新しい研究結果が届きました。
研究はワシントン大学生物統計学の研究チームによって行われたもので、さまざまな疾患の生涯有病率(一生のうちに一度はその病気にかかった者の割合)が、犬の体格や年齢とどのように関連しているかが調査されました。
研究結果は、一般的に小型犬の方が大型犬よりも寿命が長い理由を理解する上で、重要な一歩となったとのことです。
犬の加齢研究に参加している27,000頭以上のデータを分析
ドッグエイジングプロジェクトは、プロジェクトに参加する犬と飼い主を登録しており、今回の研究でも登録されている犬の飼い主へのアンケート調査結果をデータとして分析しました。
データは2020年12月31日以前に収集されたもので、238犬種、27,541頭の犬のデータが含まれています。
参加者が回答した犬の年齢(確定または推定)によって、子犬(1歳未満)、若齢犬(1~3歳未満)、若年成犬(3~7歳未満)、高齢成犬(7~11歳未満)、老齢犬(11歳以上)に分類。
同様に犬の体重によって、10kg未満、10~20kg未満、20~30kg未満、30~40kg未満、40kg以上の5グループに分類。
犬の病歴については、さまざまな病気と診断されたことがあるかどうかが、飼い主からの回答によって確認されました。その中で「診断されたことがある」という回答が、それぞれ500頭分以上あった13の疾患カテゴリーを調査対象としました。
13のカテゴリーとは、皮膚疾患、感染症/寄生虫症、整形外科疾患、消化器疾患、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、腎臓/泌尿器疾患、ガン、心臓疾患、神経疾患、肝臓/膵臓疾患、呼吸器疾患、内分泌疾患です。
さらに、犬の性別、純血種かミックスか、居住地域などのデータも加えて犬の体のサイズが生涯にわたって、健康リスクにどのような影響が与えるのかが包括的に分析されました。
犬のサイズとかかりやすい病気は直結していた
分析の結果、犬のサイズとさまざまな健康状態との間には、有意な関係があることが示されました。
眼疾患、心臓疾患、肝臓/膵臓疾患、呼吸器疾患は大型犬での報告は少なく、小型犬に多く見られたといいます。
皮膚疾患、整形外科疾患、消化器疾患、耳鼻咽喉疾患、ガン、神経疾患、内分泌疾患は、体重が増えるほど多く報告され、腎臓/泌尿器疾患の有病率は、サイズによる大きな違いは見られませんでした。
感染症のカテゴリーでは、10kg未満の小型犬の生涯有病率が、他の疾患カテゴリーよりはるかに低いという明確なパターンが見られ、年齢による増加パターンは見られませんでした。
感染症カテゴリー以外では、各疾患カテゴリーで「診断された」と報告された犬の割合は、年齢が高くなるにつれ増加していました。これは予想されていた通りです。
特筆すべきは、多くの疾患において年齢と生涯有病率との関連は、犬のサイズによって異なることが明らかになった点です。性別、純血種かミックスか、地域性などを考慮した後でも、サイズと病気のリスクとの間に明確な関連性があることは明白でした。
この結果は、ほとんどの疾患カテゴリーにおいて、大型犬では寿命が短くなることと一致しています。
まとめ
27,000頭以上の犬を対象とした調査から、犬のサイズとさまざまな疾患の障害有病率との間に、有意な関連があることがわかったという結果をご紹介しました。
この研究は飼い主へのアンケート調査をベースにしているため、因果関係を証明するものではないのですが、今後さらに深い研究を進める可能性についても言及されています。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0295840