「お尻を触らないでほしい」と伝えている時のサイン
私たち人間とは異なり、犬は非言語コミュニケーションで自分の気持ちを伝えようとします。非言語コミュニケーションとは、言葉以外を使ったコミュニケーション方法で、具体的には顔の表情、耳、ヒゲ、姿勢、しっぽなどのボディランゲージや、声の出し方の変化などによる意思表示です。
ただし、一緒に暮らしているだけで理解できるようになるかと言えば。それはかなり難しいでしょう。飼い主さんは、それぞれのサインにどういう意味があるのかについてを、積極的に知る必要があるのです。
飼い主さんが犬の基本的なボディランゲージを知ることは、愛犬とのコミュニケーションをスムーズにし、愛犬と信頼関係を構築することにもつながるはずです。中でも特に重要なのが、愛犬の「嫌がっている」サインに気付けることです。
飼い主さんは、日々のケアとして愛犬の体のあらゆる場所を触らなければなりません。その時に愛犬が嫌がっていることに気付ければ、ケアの仕方を適切な方法に変え、愛犬へのストレスを軽減できるため、愛犬からの信頼を損なうこともないでしょう。
もし愛犬からの「触らないで」のサインに気付けずにケアを続けてしまうと、愛犬を追い詰め、攻撃行動を引き出してしまうかもしれません。それを避けるためにも、愛犬からのネガティブなサインにはより敏感になる必要があるのです。
今回は、飼い主さんが愛犬のお尻を触ろうとしたときに見せる「触らないで」のサインや、嫌がる理由、対処法などについてご紹介します。
1.耳を後ろに倒す
犬が耳を後ろに倒しているときには、不安を感じています。
飼い主さんが愛犬のお尻を触ろうとした時に耳を後ろに倒して嫌がる素振りを見せた場合は、お尻を触られることに対して不安を感じている可能性があります。
特に、しっぽを両股の間に巻き込んでいる場合は、不安を通り越して恐怖を感じています。
お尻を触ろうとするといつも耳を後ろに倒して嫌がるようなら、過去にお尻を触られて痛いこと、怖いことをされた経験があるのかもしれません。
2.唸る、甲高い声でキャンと鳴く
愛犬のお尻を触ろうとすると唸って触らせてくれない場合も、「触らないで」と訴えています。
ただし、唸っている場合には「触ったらただじゃおかないぞ」という威嚇の意味がありますので、しつこくしないでください。
また、軽く触れただけなのに甲高い声で「キャン」と鳴き声を上げた場合は、ただ嫌がっているというよりも、触られることで痛みを感じている可能性がありますので注意が必要です。
3.噛もうとする
愛犬が警告して唸っているのに気付かずにいると、その内に触ろうとしている手を噛もうとすることがあります。
はじめのうちは甘噛みに近いかもしれませんが、それも通り越すと、本気噛みになる可能性もありますので、注意が必要です。
4.逃げる
お尻を触られたくない犬のすべてが、警告したり攻撃行動に出たりするわけではありません。中には、逃げ出してしまう犬もいます。
もし愛犬が逃げても、追いかけてはいけません。部屋の隅などに追い詰めて恐怖心を増幅させてしまい、お尻を触られることに対して益々負のイメージを植え付けてしまうことになるかもしれません。
5.隠れて出てこない
逃げた挙げ句に何処かに隠れてしまい、出てこなくなることもあります。
逃げても追いかけないのと同じように、隠れている場所がわかっても無理やり引きずり出すようなことはせず、自ら出てくるまで待つようにしましょう。
ただしそこまでして嫌がる場合、体の不調が原因の場合もあります。体調不良を示す症状が出ていないかどうかを、注意深く観察してください。
犬がお尻を触られたくないのはなぜ?
マズル、足先、肛門の周囲、しっぽなどの体の先端に当たる部分には、感覚器と神経がたくさん集まっています。どんなに飼い主さんを信頼し、触られることに慣れている犬でも、こういった敏感な部位を触られるのは嫌がるという子もいます。
また以前、排泄後に少し乱暴にお尻を拭かれた、肛門絞りやお尻周りの皮膚炎などの処置を受けたなどで痛い思いをしたことがあると、「もうお尻には触られたくない!」と心に刻み込まれてしまっている場合もあります。
また迎え入れられてからあまり月日が経っておらず、飼い主さんとの間に十分な信頼関係が築けていないために触られたくないということもあるでしょう。その場合は、焦らずに愛犬との間にしっかりとした信頼関係を築くことが最優先です。
最も気を付けていただきたいのは、いつもは平気で触らせてくれるのに、ある日突然嫌がるようになった場合です。
病気やケガなどが原因で、お尻に違和感や痛みを感じている可能性が考えられます。部屋の隅でうずくまっていることが多いなど、体調不良を示す症状が見られないか、よく注意して観察してください。
まとめ
犬と暮らしていくなかで、どうしても愛犬のお尻を触らなければならない場合もあるでしょう。
そんな時に愛犬が嫌がっているサインを見せた時は、無理に触ろうとして追い回したり追い詰めたりせず、落ち着いた口調で「お尻を触る理由」と「痛くしないこと」を冷静に話しかけてみてください。
もちろん、犬は飼い主さんの言葉を理解きません。しかし、飼い主さんに悪意がないことや真剣なことは、表情や口調から伝わるでしょう。そのための基盤作りとして、普段は愛犬が喜ぶ部位を積極的に撫で、信頼の絆を深めておくことも大切です。
それでもお尻周りのケアをさせてもらえない場合は、サロンや動物病院などでお手入れをお願いするという方法も考えてみる必要もあるかもしれません。
いずれにせよ、愛犬の様子を日ごろから観察し、いつもと違った様子が見つかればすみやかに対応できるように備えておきたいですね。