犬の頭の形は睡眠の質に影響するという研究結果

犬の頭の形は睡眠の質に影響するという研究結果

犬の睡眠時の脳波を測定して、それぞれの頭の形との関連を比較した結果が発表されました。短い頭を持つ短頭種の犬の健康問題がここにも現れた結果となっています。

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犬の頭の形と睡眠マーカーに関連はあるのだろうか?

様々な頭の形の犬たち

犬は人間の手による選択育種を経て、犬種ごとにさまざまな特徴を持つようになりました。それは行動上の特徴であったり、被毛の質であったりといろいろな違いがありますが、最も目につきやすいのは犬の頭の形ではないでしょうか。

犬の頭の形は、セファリック・インデックス(頭蓋指数)という指標によって分類されます。頭蓋指数は、頭蓋骨の横幅を頭蓋骨の長さで割り100を掛けて割り出した比率で、頭蓋指数が50未満が短頭、50〜60が中頭、60以上が長頭となります。

短頭種に該当する代表的な犬種は、パグやフレンチブルドッグです。これらの犬種はマズルの極端な短さのせいで、呼吸障害など身体的な健康に問題が多いことはよく知られていますが、頭の構造が神経機能に及ぼす影響についてはまだ明らかになっていません。

ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究チームは、頭蓋指数と睡眠生理学的マーカーの関連を調査し、その結果が発表されました。

さまざまな頭の形の犬の睡眠時の脳波を測定

ソファーの上のパグ

調査に参加したのは92頭の家庭犬(1〜14歳、平均年齢8.2歳)で、全ての犬の頭部を写真撮影して頭蓋指数が算出されました。

犬は飼い主といっしょに睡眠実験室で約3時間過ごします。暗く静かな環境で犬はすぐに眠りに落ち、頭部に貼り付けられた電極を通して睡眠中の脳の活動によって発生する電位が測定されました。

犬の状態は、覚醒、眠気、レム睡眠、ノンレム睡眠に分類されます。レム睡眠は一般的に「浅い眠り」と呼ばれ、レム睡眠期には覚醒時と変わらない高頻度の脳活動が見られます。

睡眠中の脳波はアルファ(覚醒安静時)、ベータ(活発な精神活動時)、シータ(まどろみや浅い睡眠時)、デルタ(深い睡眠時)があります。レム睡眠中のベータ波とデルタ波の振幅は、犬の学習成功や人間の知能と関連していることがこれまでの研究でわかっています。

短い頭の形は犬の睡眠の質に影響を与えていた

毛布をかぶって寝ている犬

測定の結果、頭蓋指数は幾つかの睡眠生理学的マーカーと関連していたことがわかりました。具体的には頭蓋指数が高い=頭が短い犬ほど睡眠時間が長く、短頭種ではノンレム睡眠が短くレム睡眠が長くなっていました。

またレム睡眠中の脳波を中頭や長頭の犬と比べると、短頭種の犬ではベータ波が少なくデルタ波が多いこともわかりました。このベータ波とデルタ波のパターンは、学習能力の低下や脳の健康に重大な影響を及ぼす可能性があります。

全体的な睡眠時間の長さについては、短い頭の形状から来る睡眠時無呼吸症候群の傾向によって説明できる可能性があります。睡眠時無呼吸症候群のために夜間の睡眠が十分ではないので、昼間も眠くなるということです。

また研究者は短頭種の犬の睡眠パターンについて、レム睡眠に多くの時間を費やす子犬時代の睡眠パターンを保持しているように見えるとも述べています。

かなり大胆な仮定であると前置きした上で、「短頭種の犬は成長しても幼犬期の特徴を残すように選択されてきたが、それが脳機能にも影響した可能性がある」と述べています。

しかし脳機能にも幼犬期の特徴が残っているかどうかは別にして、より短いマズルの平たい顔を作り出すための繁殖は、短頭種の犬の脳機能に有害な変化をもたらす可能性が高いとのことです。

まとめ

床の上で眠っているフレンチブル

犬の頭の形と睡眠中の脳波や睡眠パターンとの関連を調査したところ、頭の短い犬はレム睡眠が長く、学習機能などに支障をきたす可能性のある脳波のパターンを示したという結果をご紹介しました。

犬の頭の形の違いによって脳波やレム睡眠の長さに違いが出ることは今回初めてわかったことですが、この結果は人為的な選択の犬の認知の神経基盤を変化させるという考え方を支持するものです。

今までにも散々言われていることですが、短頭種の犬の健康問題を改善するために早急な対策が必要であることをまた違う方向から示す研究結果だと言えます。

《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s00429-023-02706-y

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