犬のプライドを傷つけてしまう「NG行動」
「犬にプライドなんてあるのかな?」と思われるかもしれませんが、実は犬にもプライドがあると考えられています。プライドとは「自分の才能や個性、業績などに自信を持ち、他者からその優越性や能力が正当に評価されるよう求める気持ち」のことです。
ここで、犬のトレーニング方法を思い出してみましょう。
「飼い主さんが愛犬にして欲しい行動を促し、上手にできたらすぐに褒める」という手順を繰り返します。これは、犬の「行動を評価」し、それを「犬が喜ぶ」から成り立つ方法です。そして何度も成功し褒められることで、犬はどんどん自分に自信をつけていきます。
このトレーニングにおける犬の思考を考えると、まさに犬にはプライドがあり、それを上手に活かすことでしつけているのだということが分かるのではないでしょうか。
そこで気をつけたいのが、普段無意識に犬のプライドを傷つけるような行動をしていないかということです。何度もプライドを傷つけられると、次第に犬は自信を失い、やがて攻撃的、破壊的、病的な行動を見せるようになるかもしれません。
今回は、飼い主さんが知らず知らずの内に愛犬のプライドを傷つけてしまうようなNG行動をご紹介します。
1.成功しても褒めず、失敗ばかりを取り上げて叱る
「成功しても褒めず、失敗ばかりを取り上げて叱る」のは、犬のしつけやトレーニングで、なぜ「褒める」のが大切なのかを理解していないと陥りやすいNG行動です。
犬は褒められると喜び、これが良い行動を繰り返そうとする原動力になります。何度も成功体験を重ねて褒められることで、自信を持てるようになり、精神的にも落ちついた性格を形成します。つまり、褒めなければその行動を強化することはできません。
それなのに失敗だけを取り上げて叱り続けていれば、愛犬は自信を失い、プライドが傷ついて精神的に不安定な性格になってしまうでしょう。
2.愛犬の悪口を他人に言う
第三者に向かって「うちの犬は頭が悪くて…」とか「不器用で…」などと話すことはありませんか。これは日本人特有の「他者には身内を謙遜する」という習慣を、愛犬に対しても当てはめて実践しているだけなのかもしれません。
犬は基本的には言葉を理解できません。しかし、声のトーンや身振り、視線などから、会話のニュアンスを読み取る能力に長けています。愛犬の悪口に関しても、そのニュアンスを読み取り、プライドを傷つけている可能性がとても高いということを意識するべきでしょう。
3.すぐにバカにした態度を取る
悪口のように言葉にしなくても、愛犬を馬鹿にしたような態度をとるだけでも愛犬のプライドを傷つけることがあります。
私たち人間は主に言葉から多くの情報を得るため、つい非言語コミュニケーションを疎かにしがちです。しかし犬は、その非言語コミュニケーションから多くの情報を読み取ります。無意識の思いも察知されてしまうことを意識する必要があるのです。
4.普段の何気ない行動をからかう
愛犬がちょっとした失敗をすると、その様子がかわいらしくてつい頬が緩んでしまうことがあります。しかし度を越して笑ったり、からかったりしてはいけません。犬はバカにされていると感じ、プライドが傷つきます。
5.愛犬以外のものばかり大切に扱う
愛犬は、飼い主さんの関心が他に移ってしまったことも敏感に察知します。赤ちゃんが生まれたり、新しく子犬を迎え入れたりすると、つい関心を赤ちゃんや子犬の方に向けてしまいがちです。
それを察知した犬は、自分に関心が向かなくなったことで自信を失い、場合によっては赤ちゃんや子犬に嫉妬心を抱くこともありますので、注意が必要です。場合によっては、新しく購入した趣味の楽器に嫉妬心を抱いて傷つけるといったケースすらあり得ます。
愛犬のプライドを傷つけないために注意したいこと
犬のプライドを傷つけてしまう「NG行動」が分かったところで、ここからはそのプライドを傷つけないために注意したいことについて解説します。
犬のしつけは子どもの教育と同じ
まず、犬のしつけは子どもの教育と同じだと考えましょう。犬の知能レベルは人間の3歳児程度だといわれていますが、知能だけではなく、感情もまだ悪知恵が付いていない純粋な幼児とよく似ています。
上手にできるように誘導することで成功体験を積み重ねさせ、褒めて自信をつけさせることが、成長につながります。犬と子どもはよく似ているのです。
愛犬のことを謙遜しない
日本には、身内を謙遜するという習慣があります。最近は、それが行き過ぎて子どもの自己肯定感を奪ってしまうという議論が起きていますが、それは愛犬に対してもあてはまると考えてください。
決めつけない
「犬は人よりも劣っている」などとは思ってもいない飼い主さんでも、無意識の内に「これは理解できないだろう」とか「こう思っているはず」などと決めつけてしまってはいないでしょうか。
たとえ意識下であっても、そういう思いがあると愛犬に対してバカにしていると感じさせるような態度を取ってしまうことがあります。愛犬が努力している姿勢や成長している姿を、積極的に気付いてあげようとする気持ちが大切です。
自覚がなくてもいじめになることを認識する
愛犬かわいさにちょっとからかっただけのつもりでも、それが何度も繰り返されると愛犬の自信を奪うことにつながります。
悪意のないからかいが、いつしか自信を奪う結果になってしまうのは、学校でのいじめに似ているかもしれません。
新しい家族が増えても先住犬への配慮を忘れない
家族が増えたときは、意識して先住犬を優先的に扱い、愛情が減っていないということを示しましょう。
愛犬への愛情は変わらない、新しい家族よりも優先されていると感じられる状況を作ることが、自信を保たせることにつながります。
まとめ
今回は、犬のプライドを傷つけてしまう「NG行動」について解説しました。
飼い主さんには全く悪気がなくても、ちょっとした行動が愛犬のプライドを傷つけてしまうことがあります。
愛犬の自信を奪わないこと、積極的に自信をつけさせることを意識しながら対応することで、知らずに愛犬のプライドを傷つけてしまうこともなくなるでしょう。