米国で報告されている犬の呼吸器感染症候群、解明に向けて前進の兆し

米国で報告されている犬の呼吸器感染症候群、解明に向けて前進の兆し

アメリカで「謎の病気」と呼ばれている犬の感染症があります。その原因の手がかりが見つかったという発表がありました。

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アメリカの犬を襲う「謎の病気」

咳をする犬のイラスト

2023年の夏、アメリカ各地の動物病院から犬が罹患した「謎の病気」の症例が報告され始めました。この病気は呼吸器系の感染症で、2023年11月下旬の時点で14の州でこの感染症と思われる病気が報告されています。

「謎の病気」と呼ばれるのは、この病気の原因が不明であるからです。病気の症状は以下のようなものです。

  • 咳、鼻水、くしゃみが数週間続く
  • 気管の炎症も6〜8週間以上続き、一般的な抗生物質による治療が効かない
  • 肺炎に移行する場合があるが、これも一般的な治療に反応しない
  • 重篤な肺炎や合併症で死に至る場合もある

この病気に対する決定的な検査がまだないことと、症状がケネルコフなど他の多くの病気とよく似ていることから、報告されているよりも患者の数は多い可能性があります。

原因かもしれない細菌のゲノムを特定

DNAサンプルを試験する科学者

上記のように、症状が長期にわたって続いているのに原因がわからず、治療も効果がないということで獣医師と飼い主を悩ませている状態が続いています。

しかし2023年11月、ニューハンプシャー大学の獣医療診断研究所とゲノム研究センターの研究チームから、原因解明の手がかりが見つかったという発表がありました。

研究チームは、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、マサチューセッツ州で、この感染症に罹患した犬70頭から採取したサンプルの遺伝子配列を解析し、この病気の原因であるかもしれない、これまで同定されていなかった細菌のゲノムの一部を特定しました。

研究者はこの細菌は宿主に適応し、最近になって病気を引き起こす能力を得たと考えています。またこの細菌は、もともと犬の体内または体表に棲んでいるマイクロバイオーム(細菌叢、さまざまな細菌の集まり)の一部である可能性もあるとのことです。

最初の30サンプルのうち21サンプルに、ある非定型細菌種の遺伝子の小さな断片が共通して含まれていることに一人の研究者が気づき、決定的な発見につながったそうです。

さらに研究が必要だが、治療法の発見に期待

インヘイラーを使っている犬

この細菌が「謎の病気」の病原体であると断言するには、まだ多くの検証作業と経過観察が必要だと研究者は述べています。

細菌を特定できれば、最終的には感染した犬に対する適切な治療方針を決定することができると期待されています。同研究チームは現在、この病気に悩まされている多くの州から検査サンプルを受け付けているそうです。

アメリカ獣医師会は、この病気について詳しいことがわかるまでは、愛犬をむやみに他の犬と接触させることはできるだけ避けるようにと述べています。

犬の呼吸器疾患はこの病気の他にも、ウイルスや真菌などさまざまな感染症によって引き起こされる可能性があります。病後やシニアなど免疫機能が低下している犬では特に注意が必要ですので、かかりつけの獣医師と相談して対策を考えることが大切です。

まとめ

毛布をかぶっているビーグル

アメリカで報告されている犬の呼吸器感染症候群、日本のメディアでも報道されることが増えてきたため、現時点での最新の研究経過をご紹介しました。

人間と同じように犬もインフルエンザや風邪に罹ります。ウイルスや細菌は人間と共通する場合もあれば違う場合もありますが、愛犬の体質やコンディションに合わせて防寒や予防接種など獣医さんと相談してみてください。

《参考URL》
https://www.unh.edu/unhtoday/2023/11/unh-researchers-provide-major-clue-mysterious-dog-illness-case

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