犬と猫を主人公にした人気連載4コマMutts
アメリカで長年にわたって人気を博している『Mutts(マッツ)』という連載4コママンガがあります。
Muttとは雑種犬という意味ですが、このマンガの主人公は犬のアールと猫のムーチです。2匹は近所の別々の家で飼われているのですが、アールがムーチの家を訪ねていく仲良しです。
Muttsは1995年に誕生し、新聞やウェブなどさまざまなメディアで連載されてきました。長年の間にアールとムーチ以外にもたくさんのキャラクターが登場し、多くの人に愛されています。
そのキャラクターたちの1匹にガードドッグ(番犬)と呼ばれる犬がいます。彼はいつも庭に鎖でつながれているのですが、2023年11月ガードドッグに変化が起こりました。
マンガに登場する、鎖でつながれた孤独なガードドッグ
Muttsの作者であるパトリック・マクドネル氏は、ガードドッグを鎖から解放することを決断したのです。
マクドネル氏は18年間にわたってアメリカ動物保護協会の理事を務め、現在は動物保護基金の理事を務めています。また、Muttsは保護犬や保護猫の声を代弁する場となって来ました。Muttsとは別に、実在の保護犬や保護猫のストーリーをマンガにして発表もしています。
そんなマクドネル氏がなぜ鎖につながれた犬を描き続けて来たのでしょうか。
ガードドッグのキャラクターは、Mutts連載開始から1年後に初登場しました。マクドネル氏はキャラクター案を作っている時、主人公たちに対する悪役としてトゲトゲの付いたカラーを着け不機嫌な顔をした大型犬をスケッチブックに描いたそうです。
そしてその絵に鎖を描き加えた時、「違う。この犬は悪役じゃなくて被害者だ。」と気づいたといいます。マクドネル氏はガードドッグを孤独な寂しい犬として描くことで、犬を鎖でつないで飼うことの非人道性を訴えて来ました。
手入れのされていない庭で鎖につながれて過ごすガードドッグは、1日の大半をただ寝そべって孤独に過ごしています。しかしそんな彼にも友だちがいます。
近所に住む女の子ドゥージーが登下校の時に傘やおやつを持って来て、ガードドッグに優しい言葉をかけるのです。寒い夜には震えるガードドッグに毛布も持って来てくれました。
ガードドッグのファンである読者からは「彼を鎖から解放してやって」とたびたび声が届いていたのですが、「犬を鎖でつなぐことの問題に注目してもらうため、ガードドッグはそのままにしておいて欲しい」という動物保護団体からの働きかけもあったそうです。
しかしマクドネル氏はガードドッグを助けるためのストーリーを考え、満足のいくものができたとして、彼を鎖から解放することを決めました。
マンガのキャラクターが教えてくれること
ストーリーの中でガードドッグが鎖から解放されるきっかけは、飼い主家族が彼を置き去りにして引っ越していったことでした。当初悪役として作り出されるところだったガードドッグですが、本当の悪役は飼い主家族だったようですね。
庭につながれたままだったガードドッグは、アールの飼い主さんやドゥージー、アールとムーチと仲間の動物たちの活躍によって助けられ、動物虐待の被害者として保護施設に収容されて新しい家族が募集されることになりました。
そして、新しい家族として名乗り出たのは、もちろんドゥージーでした。
現在アメリカでは23の州および多くの市や郡が、犬をつないで飼うことについて禁止や時間制限を定めた法律を制定しています。しかし規制のない地域ではもちろんのこと、法律のある地域でも外につながれたままの犬がたくさんいます。
社会的な動物である犬が人間の家族とも他の犬とも関わり合うことがなく、自由に動き回ることさえできず暑さや寒さにさらされているという状態が、残酷で非人道的であるということは広く周知されなくてはなりません。
連載マンガという媒体は、大人から子どもまで多くの人に知ってもらうためにとても良い場だと言えます。
毎日少しずつ目にすることで、特に犬好きというわけではない人にも意識が浸透していき、「犬をつないで飼うのは良くない」ということが社会にとっての当たり前になる土壌を作るからです。
まとめ
アメリカで人気の連載マンガのキャラクター犬が、鎖から解放されることになったいきさつをご紹介しました。
作者のマクドネル氏は、作品の中ではガードドッグに鎖を付けていましたが、講演などで彼を描く時には鎖のない自由の姿を描いていたそうです。
ガードドッグの鎖を描き続けるのは作者にとっても辛いことだったようですが、「マンガに描くことで、たとえひとつの家族でも犬を家の中に入れてやろうと思ってくれるなら意味がある」と考えてのことでした。
Muttsは下記のサイトで見られますので、興味のある方はご覧になってみてください。キュートなアールやムーチたちに会えますよ。