犬にとっての「人間の赤ちゃん」
動物は本能的に相手が自分より経験値も豊富なおとななのか、自分より幼く弱い生き物なのかを観察して見抜いています。
そのため、人間の赤ちゃんを犬に見せると、においを嗅いだり声を聞いたり、動きを見たりなど観察して「この生き物は自分より幼い」と判断するのです。
産まれたばかりの子犬や子猫を見たことがある方は思い出してみてください。鳴き声や動きは犬も猫も大差ありません。
その点は人間の赤ちゃんの場合も同じで、赤ちゃんの高い声やもぞもぞとした動きは、犬にとって子犬として認識できる要素なんですね。
犬は「赤ちゃん」にどんな感情を抱いているのか
飼い主さんとしっかりとした信頼関係が築けている犬の場合、家族に新しい赤ちゃんが加わると、犬も一緒になって赤ちゃんをかわいがろう、守ろうという行動を見せます。これは赤ちゃんを家族の一員、群れの仲間と認めているということです。
また、一番小さくて弱い個体であるということも犬は理解しています。飼い主が赤ちゃんを大切に扱うことを見ていたり、赤ちゃんが子犬のように幼い行動をしたりすることから本能的に理解しているのでしょう。そのため子犬を世話するのと同じように、積極的にお世話をしようとする犬もいます。
特に、母性本能が強めの雌犬の場合、自分の赤ちゃんのように顔や手足を舐めて綺麗にしてあげようとしたり、赤ちゃんのそばから頑として離れなかったりすることがあります。赤ちゃんが手足を振り回して犬の顔に当たってもじっと我慢する様子からも、子どものやることだと理解しているのでしょう。
また、このような行動は、雌犬だけでなく雄犬にも良くみられるものなのです。雄の場合は群れ全体を守ろうという気持ちが強いため、自分より小さな個体の面倒を積極的に見てくれます。小さな子供のそばを離れず歩いてくれたり、飼い主がいなくても子どもと添い寝をしてくれたりするのです。
しかし、注意が必要なこともあります。
説明したように、犬は赤ちゃんに友好的な態度をとる事が多いです。しかし、そのような行動が初めからできるわけではありません。やんちゃ気味な子や飼い主さんとの信頼関係がまだ築けていない犬の場合、赤ちゃんに近づける際には注意する必要があります。
まず犬自身が若すぎたりやんちゃすぎたりする子の場合、自分の遊びたい欲求を我慢することができずに、その場では新顔である赤ちゃんをおもちゃにしようとすることがあります。においを嗅いで興奮し、前足がでたはずみで赤ちゃんに怪我をさせてしまう危険もあるでしょう。
また、信頼関係がうまく築けていない子の場合、新しく飼い主が連れてきて自分より大切にされている赤ちゃんに対してやきもちを焼いてしまうこともあります。悪戯をしたり、飼い主が見ていないところで赤ちゃんに怪我を負わせてしまうこともあるようです。
このような場合は、赤ちゃんと犬を触れ合わせるまでにもっと準備が必要なので、スキンシップやしつけ、遊びや運動の欲求をしっかり満たしてあげて、様子を見ながらゆっくりと赤ちゃんに会わせてあげてくださいね。
また、犬と赤ちゃんを触れ合わせる際には、感染症のリスクも考える必要があります。
赤ちゃんは抵抗力が低いため、犬から何かしらの病原体をもらってしまい、病気を発症してしまうことがあります。赤ちゃんと触れ合わせる前に、犬が清潔であるか、病気の危険はないかなどしっかりチェックをしてあげましょう。
まとめ
実際に赤ちゃんが産まれたときには、当然「人間の赤ちゃん」の方を優先する生活になってしまうことも多いでしょう。
犬は赤ちゃんに対して友好的であることが多く、自分より小さな個体と理解してお世話をしてくれようとすることもあります。
しかし大切なのは、そのような犬の優しい気持ちは、犬と飼い主の間にしっかりとした信頼関係が出来ているから、ということを忘れてはいけません。犬の気持ちに安心して、犬へのケアを怠ってはいけないのです。
赤ちゃんを友好的に迎えてくれた犬にも、飼い主として愛情表現を欠かさずにしてあげたいものですね。