飼い主の悩み事上位に入る「ムダ吠え」
犬専門のサイトや雑誌などで行われている飼い主さん向けのアンケートで、よく悩み事の上位にランキング入りする項目のひとつが「ムダ吠え」です。鳴いたり吠えたりし続ける犬もつらいでしょうし、聞いている飼い主さんもつらくなってきます。
またいつも犬の鳴き声が聞こえてくることで、近隣から「うるさい」とクレームを受けることも多いでしょう。意味もなく鳴き、吠え続けているように見えることから、私たちは「ムダ吠え」と呼んでいますが、犬は理由があって鳴いています。
犬がいつまでも鳴いたり吠えたりし続ける理由を解明できれば、原因を取り除いて鳴く頻度を減らせるでしょう。正しく対処できれば、鳴かないように教えることもできるでしょう。
犬が鳴き続けてしまうときに解明すべき理由
まずは、犬が鳴き続けてしまう理由を解明していきましょう。理由が分かれば、正しく対処できるはずです。
不安
犬は不安を感じると鳴くことがあります。その場合、不安が払拭されるまでは鳴き続けるでしょう。
最初はせつなそうな小さな声で鳴き始めるかもしれませんが、不安が大きくなればなるほど声も大きくなり、やがて吠えるようになることもあります。
鳴き続ける行為は、初めて目にしたり触れたりするものに不安を抱いた子犬によく見られます。成犬になってからも、聞き慣れない大きな物音やいつもと異なる状況に出くわした場合に、不安から鳴いたり吠えたりし始めることがあります。
警戒
犬は仲間と群れを作り、縄張りを守りながら暮らす動物です。現代の犬たちの仲間は飼い主さんご家族、縄張りは家の敷地内です。見知らぬ人や犬が敷地内に入ってきたり、自分や飼い主さんに近寄ってくるような状況を、非常に警戒します。
玄関チャイムが鳴ると鳴き出したり、来客やすれ違った人や犬に向かって吠え続けたり、夜間の外の気配に反応して鳴いたりするのは、この警戒心が原因です。
ストレス
ストレスが溜まってどうにもならなくなると、鳴いたり吠えたりし続ける犬も多いです。犬に多いストレスに、運動不足や長時間に亘る退屈などの欲求不満が挙げられます。
また、あまりの嬉しさに興奮してしまって鳴き続ける犬も多いです。飼い主さんの帰宅時に、ちぎれんばかりにしっぽを振り、飛びついて鳴き続けているようなケースです。嬉しい場合でも、激しい興奮状態はストレスになると考えましょう。
要求
お腹が空いた、散歩に行きたい、一緒に遊びたい、かまってほしいなどの要求を伝えたくて鳴いていたら、飼い主さんが応じてくれたという経験を持つ犬は、要求が叶うまで鳴き続けるようになります。
かまってほしくて鳴いた時に「静かに!」と叱られたことを「かまってもらえた」と勘違いしてしまうこともあります。このように、飼い主さんの思わぬ対処が要求吠えの原因となることもあるため、注意が必要です。
体の不調や認知障害
病気やケガによる体の違和感や痛みが原因の場合もあります。本来犬は辛抱強いため、鳴き続けているのならかなりつらいのかもしれません。高齢の犬が夜鳴きや遠吠えをする場合は、認知症の可能性も考えられます。
犬が鳴き続けてしまうのを止めるために飼い主にできること
ここからは、犬が鳴き続けてしまうのを止めるために飼い主にできることを、鳴いてしまう原因ごとに解説します。
1.不安を感じさせない環境づくり
不安が原因で鳴き続けてしまう場合は、その不安の原因を突き止め、不安を感じさせない環境づくりを行いましょう。
例えばケージに入ると鳴き出す子犬の場合、大きな布でケージを覆ったり、飼い主さんがケージのそばで寝たりすると鳴かない場合が多いです。
ただし、子犬が鳴き始めてからケージのそばで寝るのはNGです。「鳴けばそばで寝てくれる」と学習し、頻繁に鳴くようになってしまうでしょう。
2.警戒する必要がないことを教える
警戒しているために泣き続けてしまう場合は、警戒しなくても良い環境を作ったり、警戒する必要がないことを教えたりしましょう。
例えば夜間に外の気配に反応して鳴く場合は、雨戸やカーテンを閉めて外の気配を遮断したり、寝床の場所を静かで落ち着ける場所に移動させると良いでしょう。
3.ストレスを感じない生活に変える
ストレスが原因で鳴き続けている場合は、そのストレス要因を排除し、ストレスを感じないような生活に変えてあげましょう。
ケージに入る前に充分な散歩や遊びで満足させる、留守番中も知育玩具などで退屈させないといった工夫は効果があるでしょう。
また、帰宅時に興奮しすぎる場合は、静かになるまで「無視」し続け、静かになったら褒めてあげましょう。
4.静かになるまで無視する
犬の鳴き続ける原因でとくに厄介なのが「要求吠え」の場合です。感情的になって叱りつけたり根負けして反応してしまうと、犬は「要求が通った」と勘違いし、要求がある度に吠えるようになってしまうからです。
鳴いても要求は通らないことを理解してもらうために、静かになるまで無視します。注意を引こうとしている犬にとって無視は「罰」に該当します。目を合わさず声をかけず体に触らないといった態度を徹底することが成功の秘訣です。
その代わり、落ち着いて静かになったらすぐに褒めましょう。これを繰り返せば、静かにした方が要求が叶うと理解できるでしょう。
またそれと同時に、要求を感じさせない工夫も大切です。食事や散歩の時間は厳密にせず、愛犬の欲求が高じる前に食事や散歩をするのも良いでしょう。
5.こまめな体調管理、必要なら病院へ
病気やケガのつらさや痛みのために鳴き続けることもあります。全身を触って痛がる箇所がないか、病気を示すような症状があらわれていないかをよくチェックし、必要に応じて動物病院で診てもらいましょう。
認知症で昼夜逆転している場合は、散歩や遊びなどの刺激を与えて昼間は寝かせないようにします。自然と疲れて夜眠るようになり、夜鳴きや夜中の遠吠えが改善されることが多いです。
まとめ
犬が鳴き続けることは、犬にとっては自分の感情を伝えようとするごく自然で意味のある行動です。
しかし、鳴き続けることで人間社会では周囲に迷惑をかけてしまうこともあるため、できるだけ鳴かないような環境を作り、鳴かないように教える必要があります。
ただしこのとき、対応を間違えると状況を悪化させかねません。
愛犬への対応が自分だけでは難しい場合には、手に負えなくなる前に、行動診療に詳しい獣医師や最新の動物行動学を学んでいるドッグトレーナーなどの手を借りることも検討しましょう。