犬は喜び庭駆け回る?
童謡の歌詞にあるように、世間一般では「猫は寒さに弱く、犬は寒さに強い」というイメージが定着しているようです。映画などで知られる南極物語や、テレビのドキュメンタリー番組などで見た、そりを引くエスキモー犬やハスキー犬たちの印象が強いのかもしれません。
しかし、生まれてからずっと寒さを感じない環境で暮らしていると、寒冷地原産の犬種でも、寒さへの耐性が弱まってきます。幼い頃から犬や猫と暮らしたり、自然の中で遊んでいた子どもの方が、都会育ちの子どもよりも丈夫に育つことが多いのと同じような理由です。
長く室内で暮らしてきた犬は、外で繋ぎ飼いされている犬たちよりも、寒さに弱い傾向があると考えて良いでしょう。
犬の健康状態にもよりますが、冬の寒さは犬に下記のような影響を与えます。
- 体温や代謝機能の低下
- 免疫力の低下
- 血流悪化や筋肉のこわばりなどによる関節痛発症または悪化のリスク増加
- 空気乾燥による皮膚のバリア機能低下および呼吸器疾患発症リスクの増加
上記のような影響は、軽ければ健康被害にまでは及びませんが、ひどい場合は命を脅かしかねません。愛犬への冬の対策は、とても大切なことだといえます。
愛犬が冬を快適に過ごすための対策とNG行為
ではここからは、愛犬が冬を快適に過ごすための対策とNG行為について解説します。ぜひ今のうちに確認しておきましょう。
1.犬目線の温度管理
犬は、気温が15℃未満になると体温維持が難しくなるといわれています。
犬にとって快適な環境は、気温が20〜26℃、湿度が40〜60%の範囲だといわれていますので、常に犬が暮らしている室内の温湿度がこの範囲に収まるように管理するのが理想です。
また、『室温の1割近くが床から逃げていく』といわれています。断熱効果の低いフローリングなどの床面には、絨毯などの高い断熱効果を持つ敷物を敷くと良いでしょう。
犬目線の温度管理をする際のNG行為も確認しておきましょう。
まずは、室内の温度計を飼い主さんの目線の高さに設置するのはやめましょう。暖かい空気は上の方へ集まりますので、愛犬が暮らしている床付近の温度を計測することが大切です。
さらに、室温だけの管理はやめましょう。暖房器具で室温をあげると、湿度が下がるためです。加湿器や室内に濡れたタオルを干すなどで、湿度の管理も同時に考えましょう。
また、暖かければ大丈夫だと安心しないでください。室温が高くなりすぎて、暖房中に熱中症を発症することもあるからです。温度の高い場所と同時に、低い場所(暖房が効かない場所)も作っておき、愛犬が自分の意思で移動できるようにしておきましょう。
2.留守番時の保温対策
愛犬が冬を快適に過ごすためには、飼い主さんが不在の時の保温対策は欠かせません。
火事などへの安全対策も考慮した上で、継続的に温湿度を管理することが必要です。
なお、室温管理をエアコンなどの電気製品のみに頼るのはやめましょう。停電時のリスクも考慮して、非電化製品との併用なら安心です。
また、45℃程度の温度に長時間触れさせるのはやめましょう。低温火傷を起こしてしまうためです。湯たんぽを利用する場合は、カバーをかけたり湯温を35℃程度にする等の配慮をしましょう。
3.外出時の保温対策
急激な温度変化は、犬の体への負担が大きいですよね。特に心疾患がある犬は、急に寒い場所に行くと心臓発作を起こしてしまう可能性があります。
散歩などで外に出る時は、少しずつ寒さに慣らすように工夫しましょう。
逆に、寒いからと散歩をさせないのはNGです。防寒対策をしっかりと行った上で、散歩はしっかりと行いましょう。
また、外出時の防寒対策で服を着せた場合、帰宅後も着せたままにしてはいけません。蒸れて皮膚のトラブルを引き起こしたり、ますます寒さに対する耐性を弱めてしまう可能性があります。
4.豪雪地域特有の注意事項
豪雪地域の場合、路面凍結防止のために融雪剤が撒かれます。融雪剤に含まれる塩化カルシウムは、皮膚炎や下痢、嘔吐、腹痛などを引き起こすことがあります。
豪雪地域の冬の散歩では、愛犬に雪用のウェアや犬用ブーツを着用させ、散歩中や帰宅後に雪で濡れた足や体を舐めさせないようにしましょう。
寒さを感じやすい犬の特徴
室内飼い以外の、寒さを感じやすい犬の特徴もご紹介します。愛犬があてはまるかどうか確認してみてください。
- シングルコートで短毛種の犬
- 密で柔らかい下毛を持たないシングルコートの犬は、ダブルコートの犬よりも寒さに弱い傾向があります。具体的には、ブルテリア、ミニチュアピンシャー、トイ・プードル、ヨークシャー・テリアなどが該当します。
- 被毛の色が白い犬
- 白や薄い色の被毛は、太陽光からの熱を吸収しづらいため、黒や茶などの濃い色の被毛を持つ犬よりも寒さに弱いと考えられます。
- 小型犬
- 小型犬は、中大型犬と比べると、体積(体重)に対する体表面の比率が高いため、寒さに弱いです。皮膚から奪われた体温を補充するため、中大型犬よりも高い負荷が細胞に掛かるためです。
- 痩せている犬
- 痩せている犬は、肥満気味の犬よりも体脂肪の比率が少ないため、体温が奪われやすく寒さに弱いと考えられます。
- 幼齢・高齢・持病を持っている犬
- 幼齢や高齢の犬、持病を持っている犬も、体温調整機能が未熟、または低下しているため、寒さには弱いと考えられます。
まとめ
愛犬が震えたり、体を丸めて寝ていたりした場合、寒さを感じているサインかもしれません。
愛犬のために寒さ対策を行う場合、対策の目的や理由を知り、理解するように心がけましょう。今愛犬に最も必要な対策が何かを見極めることができます。
きちんとその内容や必要性を理解していれば、うっかりが原因のNG行為もなくなるはずです。