骨肉腫治療のための断脚ができない場合の治療法研究
犬の骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍で、骨格系に発生する悪性腫瘍の85%を占めています。大型犬〜超大型犬に多く、四肢の骨での発生が特に多く見られます。
四肢に発生した場合には、手術による断脚と化学療法が第一の選択になります。しかし超大型犬の場合には、体重の重さから断脚が適切でない場合があります。
アメリカのメディカルバイオテクノロジー企業であるエライアス・アニマルヘルス社とミズーリ大学獣医腫瘍学の研究チームは、骨肉腫の主要な治療法である断脚が不適切な犬のための、新たな治療法の研究に取りかかることを発表しました。
2つの免疫療法の組み合わせの効果と安全性を研究
この研究は、チェックポイント阻害薬(ガン細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する薬剤)とT細胞導入療法という、2つの免疫療法の組み合わせの安全性と有効性を評価することを目的としています。
T細胞の役割のひとつには、ウイルス感染やガン細胞を特定して直接攻撃するというものがあります。このT細胞を活性化させるT細胞導入療法とは、以下のような流れになります。
外科的に切除されたガン組織を分析して個別のワクチンを作ります。このワクチンを免疫系T細胞を刺激するために投与、その後ワクチンによって生じたガン特異的T細胞を採取し、特殊な処理を行なって活性化したT細胞を再度体内に戻します。
T細胞導入療法はエライアス・アニマルヘルス社が開発したもので、免疫系を刺激してガン性骨肉腫細胞をやっつけるよう設計されています。
超大型犬種以外の骨肉腫患者にもメリットの可能性
この研究は骨肉腫の治療として、一般的な断脚が難しい超大型犬種を対象にして行われる予定ですが、脚を温存する骨肉腫治療が確立できれば、超大型犬種以外にも治療の選択肢が広がります。
犬の命を救うためとは言え、脚を切断する手術が飼い主さんにとって治療の障壁となっている場合もあります。免疫治療によって脚の温存が可能になるかもしれないことは、骨肉腫が多い犬種の飼い主さんにとって大きな希望となりそうです。
研究チームはこの研究の後に、米国農務省の動物用製剤の管理部署に免疫療法の申請をするためのデータを作成する予定だそうです。
まとめ
アメリカの獣医療バイオテクノロジー企業と獣医腫瘍学の研究者が、超大型犬の骨肉腫を断脚なしで治療するための免疫療法研究をスタートしたという話題をご紹介しました。
この研究がうまく行けば、近い将来、脚を温存する骨肉腫治療の恩恵を受ける犬が増えるかもしれません。最終的には骨肉腫と診断されたすべての犬の予後を改善する上で重要な発展となると研究者は述べています。
愛犬がこのような治療を必要とせずにいてくれることが一番なのですが、骨肉腫が多いとされる犬種の飼い主さんにとっては明るいニュースと言えそうですね。
《参考URL》
https://www.morrisanimalfoundation.org/article/new-study-aims-revolutionize-osteosarcoma-treatment-giant-dog-breeds
https://eliasanimalhealth.com