犬の報酬として食べ物とおもちゃはどちらが有効?
ある動物がAとBどちらの報酬を好むかという評価は、トレーニングなどの際に効果的に機能する刺激を知るためにしばしば行われます。
しかし今までのところ、犬がおもちゃと食べ物どちらのために行動するかを調査した研究はなかったそうです。少し驚きですね。
このたびアメリカのフロリダ大学の心理学の研究チームが家庭犬の強化刺激として、食べ物と遊び(おもちゃ)の有効性を比較するための実験を行ない、その結果が発表されました。
食べ物またはおもちゃの報酬で行動実験
この研究に参加したのは、ソーシャルメディアや口コミで募集された10頭の家庭犬たちでした。飼い主は実験の4時間前から犬に食べ物を与えないよう指示されていました。
実験に使用された食べ物は、ソーセージ、ニンジン、チーズ、ドライフード、固いドッグトリーツ、柔らかいドッグトリーツの6種類、おもちゃはボール、綱引きロープ、ピーピー鳴るおもちゃ、プラスチック製の骨型おもちゃ、ぬいぐるみ、空のペットボトルの6種類です。
犬たちはあらかじめ6種類の食べ物とおもちゃを与えられて、それぞれの犬がどれを好むのかがチェックされ、実験の際には犬が一番好む食べ物とおもちゃが使用されます。
実験に先立って犬たちは、それぞれが3番目に好んだ食べ物を報酬として、人間が差し出したこぶしにマズルでタッチするという行動を学習するトレーニングを受けました。
実験本番では1メートル離れた場所から実験者が犬の名前を呼び、こぶしを犬のマズルの高さに差し出してタッチすることができると、食べ物またはおもちゃの報酬が与えられるという手順で、食べ物とおもちゃそれぞれ3回のセッションが行われました。
ほとんどの犬が食べ物の報酬に強く反応
食べ物またはおもちゃの報酬が与えられるセッションの様子をビデオ録画し、犬の行動率を分析した結果、10頭中9頭の犬がおもちゃよりも食べ物に強く反応し、マズルをタッチさせるという課題に意欲的に取り組むことが示されました。
トレーニングの段階では食べ物とおもちゃの報酬を同じように楽しんでいた犬も、実験本番の短い時間で結果を求められる状況では、おもちゃよりも食べ物の方がより強い動機づけとなることもわかりました。
この実験の結果は、犬にとって食べ物はおもちゃよりも強化子(行動の頻度を高めるような刺激のこと、報酬)として機能しやすいことを示しています。
しかし、観察された犬の行動からは食べ物よりは弱いとは言え、おもちゃが強化子として機能していることも確認されました。
犬の健康状態やドッグトレーナーの方針によっては、報酬の食べ物で過剰なカロリーを摂ることを避けるために、おもちゃを使うことが勧められる場合もあります。その際に重要なのは、報酬としてのおもちゃを食べ物と競合させないことだと研究者は述べています。
また食べ物やおもちゃではなく、犬を笑顔で褒めること=犬へのアテンションを報酬とするという方法を勧めるトレーナーもいます。次の研究では、食べ物、おもちゃ、アテンションの3つについて、トレーニングの際に犬が好むものはどれかを調べるべきだと研究者は考えているそうです。
まとめ
犬が好む食べ物またはおもちゃを報酬として犬にある行動を要求した際の結果を比較したところ、ほとんどの場合犬はおもちゃよりも食べ物を強く好み、食べ物が強化子として機能しやすいことがわかったという研究結果をご紹介しました。
犬が好む報酬を理解することは、犬の行動を効果的に形成するためにとても重要です。また目標とする行動の種類、個々の犬によって有効な報酬が異なる可能性もあるため、詳しい点はさらに研究が必要だとのことです。
私たち飼い主も、一般的には食べ物が最も有効な報酬であるという知識を持った上で、愛犬の好みやニーズをよく観察することが大切だと言えます。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/ani13193073