米国での調査〜フィラリア予防薬の使用率と関連する因子とは?

米国での調査〜フィラリア予防薬の使用率と関連する因子とは?

アメリカではフィラリア予防薬の使用率の低さが問題視されることが多いのですが、どんな因子がフィラリア予防をしないことと関連しているのかを調査した結果が発表されました。日本と重なる部分もあるので知っておきたい報告です。

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アメリカでの犬のフィラリア予防の実態調査

フィラリアに感染した犬のイラスト

蚊の多い日本と違い、アメリカでは蚊に刺されることは非常に稀という地域もあります。そのためアメリカ全土でのフィラリア予防薬の使用率が低く、一説には50%程度だとも言われています。

しかし、気候変動の影響で蚊の活動期間や活動範囲が広がり、予防をしない飼い主が多いためにフィラリアの有病率が高くなることが問題視されています。

フィラリアも含め、犬の予防薬に使用率を調査した研究は非常に少ないのですが、このたびアメリカのリンカーン・メモリアル大学の研究チームがフィラリア予防薬の使用状況と、フィラリア予防の実施に関連する重要な因子を調査し、その結果が発表されました。

ゴールデンレトリーバーの研究プロジェクトからデータを分析

受診中のゴールデンレトリーバー

この研究では、モリス動物財団が実施しているゴールデンレトリーバーの生涯研究のデータが用いられました。同財団は世界最大規模の非営利動物健康研究組織で、2012年よりゴールデンレトリーバー に多い病気の研究のために、この犬種に特化した研究プロジェクトを実施しています。

プロジェクトに参加している犬は、毎年アンケートへの回答と臨床検査を行なっており、分析にはこれらのうち2,998頭のデータが用いられました。

アンケートや検査の結果から、ワクチン接種の有無、健康状態、投薬の履歴、サプリメントの摂取、生活環境やライフスタイルなどの因子と、フィラリア予防薬の使用との関連が検証されました。

どんな犬が予防薬を服用している率が高いのか?

チュアブルタイプのフィラリア予防薬とプードル

プロジェクトに参加した時点で、フィラリア予防薬を使用していた犬は39.5%でした。これは過去にペンシルバニア大学が調査した数値79.8%よりも、はるかに低い数字でした。

前者はアメリカ全土の数値であるのに対し、後者は蚊の多いペンシルバニア州の数値であることも影響していると考えられます。しかしこの研究では、最も蚊が多くフィラリア罹患率が高い米国南部においてさえ、予防薬の使用率は50%を切っていました。

そのような中でフィラリア予防薬の使用率が高かった因子のひとつに、「各種ワクチン接種を受けている」というものがありました。これは獣医師の推奨に対する信頼度の高さから来ていると考えられます。

感染症系や耳鼻咽喉系疾患と診断されている犬でも使用率が高くなっていました。感染症系には消化管寄生虫が含まれるため、これらの駆除のための投薬とフィラリア予防薬が同時に処方されるためと考えられます。

耳鼻咽喉系疾患との関連の理由はフィラリアの症状に咳があるため、鼻や喉の診察を受けた時にフィラリア予防薬が処方されたのではないかと推測されます。

反対に、フィラリア予防薬の使用率が低い因子にはどんなものがあったのでしょうか。

サプリメントを摂取している犬では、予防薬の使用率が低い傾向が見られました。サプリメントを使用する飼い主は、予防薬よりも自然療法的アプローチを好む可能性があることが指摘されています。

また不妊化手術を受けていない犬も、予防薬の使用率が低くなっていました。不妊化手術の有無は、飼い主による獣医学的ケアへの投資を反映しているからではないかと考えられます。

体高が高い犬もフィラリア予防薬の使用率が低い傾向がありました。この研究に使われたデータは全てゴールデンレトリーバーであるため、体高の高さは体重の重さと比例し予防薬の投与量の多さ=費用の高さにつながるからではないかと推測されていますが、正確な理由は不明です。

研究チームは今後さらに、多様な犬種、コストが予防に与える影響、サプリメントを与えられている犬への対応などに研究範囲を広げていくと述べています。

まとめ

顔に蚊がとまっているゴールデンレトリーバー

ゴールデンレトリーバーの生涯研究のデータから、アメリカ全国のフィラリア予防薬の使用率についての分析を行なったところ、ワクチン接種や感染症治療を受けた犬では使用率が高く、サプリメントを摂取していたり不妊化手術を受けていない犬では、使用率が低かったという結果が出たことをご紹介しました。

フィラリアは命に関わる病気ですが、予防することが可能です。罹ってしまった場合に治療はできますが、治療期間は長期に渡り犬の体への負担も小さくありません。

治療にかかる費用は予防薬よりもずっと高額ですので、毎月の予防薬の使用は身体的にも経済的にも最も負担が少ないものと言えます。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2023.1208804
https://www.morrisanimalfoundation.org/article/the-golden-age-project

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