問題行動は人間の方?犬から奪えば攻撃される
まず知っておいてもらいたいのは、犬がその時所有しているものはその犬の物だということです。たとえそれがあなたの私物であったとしてもそんなことは犬には関係ありません。
ここで犬に人間の物とそうでないものを弁別してもらおうというのは、犬を擬人化して過度な期待をしているに過ぎないのです。
それよりももっとシンプルに物事を捉えて考えてほしいので、次のような場面をイメージしてください。
その辺に転がっていた物を見つけて自分の所有物にすることにした。それは楽しいおもちゃかもしれないし、生きるために必要な資源かもしれませんが、とにかく私のものにしようと決めたものです。
しかし後から現れた人間に「それは私のものだ!」と奪われそうになった。さて、あなたはどうしますか?
恐らく「いやいや、いきなり現れて何を勝手なことを!」と所有している物を守ろうとするのではないでしょうか。
最初は声を出して制止しようとしたり、体を使って盾のようにして守ったり、それでも駄目ならあっちいけ!と言わんばかりに奪おうとする手を払い除けたり攻撃をすると思います。
こうした一連の流れが犬と人間の間でなされているわけですが、果たして問題行動をしているのはどちらでしょう?
自分の物を必死に守ろうとする犬と不躾に奪おうとする人間。自分が奪われる立場になれば、決して犬が問題行動をしているとは言えないと思います。
犬から奪うのではなく魅力的な物との交換を提案しよう
しかし奪おうとするからにはそれなりの理由もあるでしょう。壊されたら困る、飲み込まれたら困る、など放っておいてはいけない理由ですよね。
ですが、だからといって奪っていい理由にはなりません。犬からしてみればただの強奪で、どんな思いで奪う側が来ているかなどは関係ないのです。そこで提案したい方法が犬に与えるというものです。
犬から奪うのではなく、今所有している物よりももっと魅力的な物との交換を犬に提案するのです。
すでに犬が所有したものを取ろうとする行為は、犬にとって今所有している物を奪われようとしていると受け取るわけですから、逆にもっといいものがもらえると認識してもらうことができれば犬が自ら所有物を手放してくれます。
こうすれば犬との関係を壊すことも無駄に争うこともなく平和的に解決することができるため、ぜひ犬にとって魅力的な提案をしてみてください。
犬に取られたくないものは片付けよう
とはいえ根本的なことを申し上げますと、取られたくないものを犬の手が届くところに置いておくのをやめてちゃんと片付けるようにしましょう。
犬のしつけというふうに考えると、どんな状況であれ犬がそれを勝手に取るなどしないようにするべきだ!という考えになる人も少なくありません。
確かにトレーニングによって落ちている物を拾うよりも飼い主を見る、といったような行動をとるようにすることはできなくもありません。
しかし、それをするよりももっと前の段階に環境を整えるという責務が管理者である飼い主にはあります。
また、片付けをすればトレーニングをしなくても済む話ですし、片付けをしなかった自分の落ち度を犬のせいにするのはあまりにも無責任です。
もとより犬はさまざまなことが人間よりも制限され自由が少ない中で人間社会で生きています。それなのに人間が気をつければ済むことを犬にもっと制限を設けてあれをするなこれをするなというのは、私なら窮屈に感じますし犬にとっても生きづらいのではないかと私は考えます。
制限があるからこそ可能な限りの選択肢と自由を増やし尊重することを考え、そのために危険を排除し環境を整えることができれば、飼い主としても愛犬としても幸福度が大きくなるはずです。
そのなかのひとつとして、取られたくないものは片付けるという簡単なことを人間ならできるのですから、ぜひそうしてあげてほしいと思います。
まとめ
犬にとってこれは誰の物で使ってもいい物悪いものという感覚はなく、単純にその時誰も所有していなければ所有してもいいというだけに過ぎません。
当然、所有したそれはその犬の所有物になるためそれを奪おうとすることは非常に無礼な行為であり、犬が所有物を守るための行動として攻撃をしてくるのも当たり前です。
この当たり前の思考と行動を悪いことだ、問題行動だ、と犬を悪者にし躾ができていない犬だとレッテルを貼るのは人間側の無責任さの現れだと思います。人間は犬よりも知能が高い動物です。
犬とは違いこれは他人の物だから勝手に触ってはいけない、これは許可をもらったら借りることができる、という弁別ができるのは人間だからです。
であれば、そうした弁別を持ち合わせていない犬のために取られたくないものは片付けをして、犬も人も困らないように環境を整理してあげましょう。
犬は確かに賢くて素晴らしい動物ですが、それに甘えてなんでも犬に責任を押し付けるのは違うのだということをぜひ忘れないようにしてください。